モノクロームで、幾何学的な映像が、ジム・ジャームシュや、小津安二郎へのオマージュに充ちているということや、アレハンドロ・ロッソの音楽、ジョアン・ジルベルトの「ガチョウ(アヒル)のサンバ」を、スペイン語でカヴァーしたオープニング曲。バザーで売られていた画家オクタビオ・ランデータの湖畔のカモの飛び立ちの絵画などなど……、この作品のモチーフを際立たせ、彩るセンシティヴな感性のちりばめ方も確かに、秀逸だ。
しかし、ある一日の出来事、監督言うところの「時間の継ぎ目のない物語」を、派手なキャストやロケ撮影で演出するのではなく、アパートの一室の密室劇に完結させたその発想と構成力が、この作品の意味をしっかりと支えていたところが、すばらしい。
主人公4人に対し、深く感情移入するでもなく、過剰にいじくりまわすでもなく、かといって突き放すでもなく、それぞれの登場人物の人となりとありのままに対面し、対話して、僕らに出合わせてくれたその感受性がいいではないか。
フェルナンド・エインビッケの感受性こそは、メキシコというフィールドや映画というジャンルに留まらず、僕らの今後の音楽や映像のつくりかたに、一見小さくてささやかだが、さりげなくて貴重な指針をなげかけてくれている。
Text:あがた森魚
【あがた森魚 PROFILE】
1948年北海道・留萌市生。1972年「赤色エレジー」にてデビュー。20世紀の大衆文化を彷彿とさせる幻想的で架空感に満ちた作品世界を音楽、映画を中心に展開。函館港イルミナシオン映画祭の ディレクターを第一回より務める。2004年アルバムCD『ギネオベルデ(青いバナナ)』リリース。全国各地でライヴ展開中。
official HP: www.morioagata.com
●2006年度5月15日開校の「美学校」であがた森魚がクラスを担当しています。
途中からの参加も歓迎デス! 毎週月曜日 18:30-21:30
ART ACTクラス「GLOB WORK」(世界幻灯蓄音製造)
問・お申込:美学校へ
電話(phone:03-3262-2529)、ファクシミリ(facsimile:03-3262-6708)、メールにて受付。
HP:美学校(順次更新予定)
●2006年6月20日(火)「MARBLING night vol.6」
出演:あがた森魚(Vo., A.G., Key.)+something marbling else
Guest:駒沢裕城(pedal steel)矢野誠(Key.)
at 神楽坂・DIMENSION
open19:30 start20:00 charge adv.3000円 door.3500円 (+1drink)
問:神楽坂・DIMENSION(phone:03-3267-8785)
(地下鉄東西線神楽坂駅下車 出口1すぐ/東京都新宿区矢来町112 第2松下ビルB1F)
◆2006年7月5日(水)発売
ヴァージンVS「GOLDEN☆BEST」シリーズ企画でリリース決定!
(UPCY-6151)1,980円(税込)
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