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『スチュアート・リトル2』は、なんだか朝のシーンがやたらと多い印象があった。この「起きる」ってのが、映画を清々しくするのに大事なのかなぁ……いやホントの話、なんだか「♪新しい朝が来た」って感じの日常のすがすがしさが、この映画に充満しているのだ。で、ちょっと立ち入った話をしておこう。オマケだ。あんまり誰も言わないけれど、『スチュアート・リトル2』はNYの8日間のお話である。で、その8日間を観た人には思い出せるようにメモってみた。観てない人にもうっすらストーリーがわかるかもしれないけど、そこは勘弁を。

[1]土曜日、NYの朝。目覚まし各種。妹、オートミール落とす。スノーベルはあくまでペット。サッカーの試合。ジョージ活躍。いじめっ子ウォレス顔面シュート、スチュアート特攻?……ママの心配、ちょっと落ち込むスチュアート。
[2]日曜日、ジョージはスチュアートをほったらかしてウィルとPS2でサッカーゲーム、スチュアートひとりでミニ複葉飛行機の組み立てをするハメに、んで期せずして試験飛行。セントラル・パークへ。「空に浮かぶ雲の“銀の裏地”」についての話。
[3]月曜日、「カナダ人は孤独を愛するので北アメリカは二つに分かれている」なんて授業。友人さがし難航。鷹ファルコンに襲われて落ちてきたマーガロ救出。手当。大切なピンが壊れてる。
[4]火曜日、朝食、学校はさぼっちゃダメ。鷹の登場。「あるのはママの安物の指輪と、家族の絆くらいね」、食事、ミニ・スケボー、ミニ・マシュマロ、ナイター観戦、満月に吸い込まれるホームラン、ミニ・ドライブイン・シアターごっこ。大切なピン、「元通りよりもっと素敵」
[5]水曜日、マーガロ行水中に鷹が……。皿洗いかオムツを替えるか? 排水溝への潜入プロジェクト、レスキュー隊員スチュアートの活躍? パールのネックレスによる間一髪の救出。
[6]木曜日、マーガロ失踪の朝。あのピン。夜、スチュアートの冒険、スノーベルつき。
[7]金曜日、朝食、初めてウソつくジョージのドキドキ。エンスト。学校から帰宅するジョージ。ウィルん家に、アリバイ工作。中華料理店の裏でモンティによるファルコン情報。
[8]土曜日、テラス・カフェのメニュー。電話。ウィル来ちゃう。共犯だ。ピシュキン・ビルの鷹の屋根飾り、アイスカップと風船の気球、弓矢で対決、あらら。ゴミ処理車、窓拭きゴンドラ、ママはウィルん家に……「カナダってどっち?」。ゴミ運搬船、タクシー、ペンキ缶アクロバット、「“銀の裏地”なんて……」、廃物利用。空中戦クライマックス、モンティ飯にありつく、スノーの晩飯もツナ缶に、そして夕焼け……。「しゃべった!」END

と言うワケで、きっちり一週間+一日、4日目のメニューが盛りだくさんなのがちょっと気になるが、なかなかカッチリ作られているのである。朝のシーンが多いのもこの日にちの経過をきっちりさせたいが為かもしれない。今回の脚本は上の方にも書いたけど、ブルース・ジョエル・ルービン(『ゴースト/ニューヨークの幻』『ジェコブズ・ラダー』『ディープ・インパクト』など)。シャマランの前作と比べてスピーディにキッチリ起承転結のある展開で、特にたたみかけるような後半の演出の素晴らしさったら一級の娯楽映画の王道を行っている。この同時に起こっている複数の出来事の絡み合いを描くテクニックは図抜けていて、もう「リル・ハイ、リル・ホー!」なのだ(意味不明?)。子供のための映画ってナメてかかるとビックリするゾ。こんな風にファミリーで観られて、しかも親も無難に愉しめて、ちょとしたギワクも軽やかな映画って、簡単そうで難しいもの。前作はちょっと緩急を変えた話術の妙で傑作なんだけど、本作は王道を行きながら、きっちり丁寧に作りこんだ、これまたちょっとした傑作なんである。

んで余談、ファルコンが根城にしているピシュキン・ビルの石でできた鷹の屋根飾りについて。この屋根飾りが出てきた時、「あれ、これNYを舞台にした映画によく出てくるよなぁ」ってふと思ったのだ。で、「アール・デコ建築」とか「NY」とか検索キイワードを打ち込んで探してみた。よく見るのはクライスラー・ビルの鷹の屋根飾りだった。こっちのはスチール製で、屋上近くに8つある。有名なのはLIFE誌の表紙になったヤツで、写真家マーガレット・バーグ・ホワイトの作品らしい。これが大友克洋『AKIRA』の連載時の扉になったり、『スパイダーマン』にも出てきた(確かかわからん、見間違いかも)りしたわけだ。ま、NYの象徴のひとつ、なんだろうね(筆頭は自由の女神かWTCか)。『ダーク・エンジェル』でシアトル名所、スペース・ニードル・タワー(『オースティン・パワーズ』第1作でもスタバ発祥の地ネタと一緒にフューチャーされてた)が象徴的に使われるのと同様だ。ところがピシュキン・ビルの方は、アチコチ探したけど見つかんない。そこで推測なんだけど、NYには鷹をファザードにしたアール・デコ建築が幾つかあって、今回は鷹が住めるスペースがありそうなビルをチョイスした----説、ってのはいかがなものか。この「鷹の屋根飾り」については妙に気になるので、誰か知ってる人、教えて〜。

Text:梶浦秀麿


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