text : ayako nakamura
いまや世界中に熱心なファンを持つウェス・アンダーソン監督。最新作『ムーンライズ・キングダム』は、第65回カンヌ国際映画祭のオープニングを飾り、全米で公開されると、1館あたりの平均興業収入が全米歴代ナンバー1という大ヒットを記録。一作ごとに拡がりを見せながら、インディペンデント映画のムードは崩さず、独自の“ウェス・ワールド”とも言える世界観を築いている。ここでは『ムーンライズ・キングダム』で初めてウェス・アンダーソン監督作品に触れる人にも“ウェス・ワールド”をもっと楽しんでもらえるように、7つのキーワードを挙げてこれまでの作品を交えて紹介したい。
最初に、おさらい
これまでの作品について
日本で最初に劇場公開された作品は、3作目の『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』('01)。それ以前には2作目の『天才マックスの世界』('98) が2000年にビデオリリースされている。カルチャー誌やファッション誌で紹介され、カルト映画として一部の人には絶大な人気があった作品。以前、町山智浩さんもウェス・アンダーソン作品の中で『天才マックスの世界』が一番だとツイートしたことがあり、ファンの多い作品だ。
後にデビュー作『アンソニーのハッピー・モーテル』('96) を含めてすべての作品がDVDリリースされており、作品数も多くないため、『ムーンライズ・キングダム』が気に入った人は是非他の作品も観てほしい。
Filmography
『アンソニーのハッピー・モーテル』1996年
デビュー作品。1992年にオーウェン・ウィルソン、ルーク・ウィルソンと撮った同名のショートフィルムが土台になっている。原題は『Bottle Rocket』、ロケット花火とか打ち上げ花火といった意味。この邦題は、もう少しどうにかならなかったのだろうかと疑問に思う。DVDパッケージのデザインも雑な印象。ウェス・アンダーソンは、この作品でMTVムービー・アワードの新人監督賞を受賞した。
『天才マックスの世界』1998年
名門私立のRushmoreという学校に通い、19ものクラブを掛け持ちして落第を繰り返している風変わりな少年、マックス・フィッシャーのスクール・ライフを描いた作品。この作品から、ビル・マーレイが出演している。「ひと言で言えば、我々映画評論家が手放しで褒めざるを得ない映画である」(江戸木純「週刊プレイボーイ」36=9/6号)「面白すぎる。『はずし』の天才、ウェス・アンダーソン監督のオフビートな話術に抱腹絶倒だ」(佐藤睦雄「ブルータス」9/1号)など、玄人受けしまくった作品 (詳しくはこちらの記事)。
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』2001年
日本で劇場公開された最初の作品。テネンバウム家の3人の子供たちは、10代で成功した“元”天才。バラバラに暮らしていた一家が再びひとつ屋根の下で暮らすことになる。家族再生の物語。
『ライフ・アクアティック』2004年
落ち目の世界的有名海洋冒険家兼ドキュメンタリー監督、スティーブ・ズィズーとチームズィズーの冒険(?)物語。ストップモーション・アニメーションで描かれている架空の海洋生物たちにも注目。
『ダージリン急行』2007年
3兄弟がインドの秘境を列車で旅しながら、家族の絆を再生する物語。
本編上映の前にプロローグ的作品として、短編映画『ホテル・シュヴァリエ』が上映された。ナタリー・ポートマンがヌードを披露して話題に。
『ファンタスティック Mr.FOX』2009年
ロアルド・ダールの児童文学『父さんギツネバンザイ』を原作とした、ウェス・アンダーソン監督初のストップモーション・アニメーション映画。

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