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Moonrise Kingdom

Directed by Wes Anderson

キーワード “1”
常連俳優

ウェス・アンダーソン作品の常連と言えば、なんと言ってもビル・マーレイ。ウェス・アンダーソン作品にビル・マーレイが出演しないことは考えにくいぐらいで、監督本人も認めている。『ダージリン急行』では「あの人なんだったんだろう?」と思うほどのチョイ役で驚いたが、それでも、ウェス・アンダーソンの作品を通じて、ビル・マーレイが定点のような役割を果たしているような気さえして、妙に納得してしまうのだ。

オーウェン・ウィルソンとルーク・ウィルソンの兄弟、ジェイソン・シュワルツマンも「ウェス・アンダーソン組」と言われる常連俳優。中でもオーウェン・ウィルソンは、学生時代にウェス・アンダーソンと出会い、共同執筆した脚本が『アンソニーのハッピー・モーテル』として映画化されたという仲。その後も『天才マックスの世界』や『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』の脚本を共同執筆している。『アダムス・ファミリー』のお母さん役アンジェリカ・ヒューストンもまた、常連のひとり。このように同じ俳優が別の作品に繰り返し出演するのと同様、“繰り返し”もまたウェス・アンダーソン作品のキーワードのひとつだ。

キーワード “2”
ちょっとダメで愛すべきキャラクター

アメリカの若手監督の中でも異彩を放つ存在として注目を集めるウェス・アンダーソンの作品は、ハリウッドの大物俳優がこぞって出演を熱望することでも知られている。『ムーンライズ・キングダム』に世界を救うアクションスターのブルース・ウィルスが主演することは大きな驚きだったが、『ムーンライズ・キングダム』を観るのが楽しみな理由のひとつでもあった。実際、本作でのブルース・ウィルスは、これまでに観た事がないほど良い。エドワード・ノートンもまた、生真面目でちょっと間の抜けたボーイ・スカウトの隊長を好演している。

これまでの作品でも『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』で、幅広い役柄をこなすタフガイ、ジーン・ハックマンがなんとも憎みきれないダメな一家の主を演じたり、『恋におちたシェイクスピア』でオスカー女優となったグゥイネス・パルトロウが、目の周りを真っ黒にしたアイメイクに無表情というダウナーな役柄でそれまでの品の良いお嬢様的な印象を破り、新たな魅力を見せている。

ウェス・アンダーソンは、自分の作品を “My films point out the beauty in flaws and the flaws in beauty” と語っているが、欠けてるものの方が完璧なものより美しい、ということだろう。“ウェス・ワールド”のキャラクターは、皆揃って、ちょっとダメな愛すべき人たちで、この「ちょっとダメ」な感じが大物スターの新たな魅力を引き出すのではないかと思う。

次の作品、『ザ・グランド・ブダペスト・ホテル』には、ジョニー・デップとジュード・ロウの出演が決まっている。“ウェス・ワールド”のマジックで彼らがどんな顔を見せてくれるのか、非常に楽しみだ。