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Moonrise Kingdom

Directed by Wes Anderson

キーワード “3”
カメラワーク

ウェス・アンダーソン監督の撮る映像には独自のスタイルがある。少しノスタルジックな色合いや構図など、1シーンのスチール写真を観ただけで、彼の作品だとわかるほどだ。広い世界を撮っていても、ミニチュアを見ているような感覚があるのも面白い。ハリウッド大作の迫力ある映像とは真逆と言ってよいだろう。真横からの左右対称のショットは特徴のひとつだが、どのシーンもグラフィカルで作り込まれていて、劇を観ているような感覚がある。また、俯瞰(真上)からのショットもウェス・アンダーソンらしい映像のひとつだ。

youtubeにウェス・アンダーソン作品の俯瞰ショットとクエンティン・タランティーノ作品の煽りショットをまとめた動画が上がっているのだが、これを見るとスタイルの違いがよくわかってとても面白い。

キーワード “4”
サウンドトラック

ウェス・アンダーソン監督の作品はサウンドトラックが良いことで知られている。60〜70年代の懐かしい雰囲気を感じる映像にぴったりの選曲はいつも素晴らしい。『ムーンライズ・キングダム』では、『ファンタスティック Mr.Fox』に続いて、フランスの映画音楽作曲家アレクサンドル・デスプラが音楽を担当している。それ以前、デビュー作の『アンソニーのハッピー・モーテル』から『ライフ・アクアティック』までは、ニューウェーブバンド「DEVO」のメンバー、マーク・マザーズボウが、4作続けて音楽を担当していた。

ウェス・アンダーソン作品には、60〜70年代のロック、中でも初期のブリティッシュロックがよく使われている。ウェスが選ぶのは、よほどのファンでないと知らないようなマイナーな名曲が多く、こういった曲に出会えるのはウェス・アンダーソン作品を観る楽しみのひとつと言える。中でも『ダージリン急行』で使われている、the KINKSの「Strangers」と「This Time Tomorrow」は最高だし、『天才マックスの世界』では、R&Bを基調にしていた頃の初期ローリング・ストーンズの「I Am Waiting」を、これまた良いタイミングで聴かせてくれた。『ライフ・アクアティック』では、「Ziggy Stardust」の頃のDavid Bowieのカヴァーをブラジリアン・ソウルのカリスマ、Seu Jorgeがアコースティック・ギター1本で聴かせてくれるのだが、こういったカヴァーもウェス・アンダーソン監督の好みのようだ。ちなみに、彼の弾き語りだけをまとめたアルバム「Life Aquatic Studio Sessions」はベスト・アルバムの1枚だと思う。