Feature

在来作物と「しあわせの交換」が育む農業と地域社会の未来
『よみがえりのレシピ』特集

column by さいのね畑

きっとそこにあるのは野菜や農地、自然と人間との強い「つながり」

山の木を切り倒し、焼き払い、急な斜面に残った切り株の間に種を播いて育てる。
映画中、焼畑農法で山肌に在来種のカブを栽培する農家さんの姿は、 条件の厳しい中山間地で循環型の小規模有機農業を営む私達が見ても驚くほどの気が遠くなるような手間のかかる作業をいきいきとこなされる、印象的なものでした。

守り続ける「種」と「農法」。
効率や現金収入の利益だけを考えたら決して続けることはないであろう方法。
なぜ、こんなやり方を守り続けようとするのでしょうか。

きっとそこにあるのは野菜や農地、自然と人間との強い「つながり」です。
人が野菜の種を守り、育てた野菜に人が守られる。
人と自然がお互いに支えあう「命」の関係。
野菜や自然に対する敬意の気持ち。

スーパーで売られているカットされた形の揃った野菜を購入して食べる、どこで、誰が、作ったものなのか、想像をめぐらすこともない。そんな関係の中では、そうした「つながり」が希薄になっているのだと思います。

種から芽を出し、雑草や虫と競り合い、太陽や雨の恩恵を受け、厳しい状況の中で時に萎れ、また立ち直り、やがて収穫されて人の糧となり、残ったものは花を咲かせて種をつけ、次の世代へと命を繋ぐ。そうした様子を肌で知った上で食べることは、きっと大事なことです。

そうした自然と人の「つながり」を大切にしたいという思いが、消えゆく在来作物や焼畑農法を守ろうという取り組みに繋がっているのだと思います。

こうした思いは私達自身の農業への思いに重なります。
畑、作り手、調理する方、召し上がる方、「農」「食」「命」。
そうした「つながり」を楽しく再現させたい。厳しさもお伝えしたい。
そんな思いで営農しています。
おたよりで畑の様子をお伝えし、実際に皆さまに畑に足を運んでいただき、野菜が強く生き抜く姿を知っていただいて、その野菜を直接お届けします。

「野菜をつくる」こと「食べる」ことの意味が関係性の中で変化します。 強い「つながり」の中で、それは、きっと深遠なものになります。

この映画に登場する方々の姿は、私達にとってさながら「同志」のようなもので、たくさんの元気と勇気とヒントをいただきました。

さいのね畑も「つながり」を大切にして、頑張ります。

「食」のチカラは大きい。当たり前のことのようだけど、一般的に「食」にそれほどこまらない今の社会では、そのなかにある“本当に大切なこと”になかなか気づきにくかったりする。しかし『よみがえりのレシピ』や、さいのね畑からは、"本当に大切なこと"を「つながり」を介してとてもつよく感じる。

彼らが綴るブログ<さいのね日記>は、いまの農業の一部、そしてこれからを担う彼らのドキュメントでもあるし、そのなかで紹介されるとても食欲を誘う美味しそうな“レシピ”の数々を見ているだけでも、豊かさや、楽しさ、わくわくする感じがこみあげてくる。そしてお腹がすく。「食」はわたしたちにしあわせな気持ちを与えてくれる。

さいのね畑は、東京都内や大阪のレストランなどに新鮮で安心な作物を卸すほかにも、畑から直送で自宅まで届けてくれる定期宅配も行っている。また、オープンな農園という姿勢から、農業体験や見学、援農ということも行っている。多くの人が集い野菜に接する場所を提供したり、若い人びとに食してもらう機会も積極的に提供し続けている。

詳しくは、下記のホームページから。

さいのね畑

住所 :〒321-3547 栃木県芳賀郡茂木町大字千本2022
TEL :090-9108-3903
メール:info@sainone.com

さいのね畑のホームページ

さいのね日記


10月20日(土)より渋谷・ユーロスペースでロードショー、全国順次公開

『よみがえりのレシピ』

(2011年 / 日本 / HD / 95分 / 5.1ch / カラー) 制作・配給:映画「よみがえりのレシピ」制作委員会

出演:江頭 宏昌、奥田 政行、在来作物を守り継ぐ人々 プロデューサー:高橋 卓也 / 監督・編集:渡辺 智史 / 撮影:堀田 泰寛 / 音楽:鈴木 治行 / 整音:石寺 健一

オフィシャル・サイト

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