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○月○日
数年前に来日公演をしたオーストラリアのタップ・ダンス・カンパニーの「タップ・ドッグス」が映画化されたと聞き、いそいそと見に行く。その名も『タップ・ドッグス』(4月上旬よりシャンテシネにて公開)。ステージの作者デイン・ペリー自らがメガホンをとった映画監督デビュー作でもある。「デイン・ペリー、それ誰?」という人も多いかと思うけれど、去年のシドニー・オリンピックの開会式での、タップ・パフォーマンスを思い出していただきたい。その部分の演出をしたのが誰あろう、ペリーなのです。

映画はタップ・ダンスを題材にした青春映画。主演のアダム・ガルシアがこれまた知る人ぞ知る今が旬の注目株。ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」のロンドン公演で主役を演じたダンサーにして、映画『コヨーテ・アグリー』でヒロインに恋する若者を初々しく演じた若手俳優なのだ。彼が演じるショーンはタップ・ダンスでスターになることを夢見る若者で、物語はそのサクセス・ストーリー。父親や兄との確執あり、恋ありの、いわばストーリーだけを見れば青春映画のパターンどおり。けれどなんたってこの映画はタップ・ダンスがウリなのだ。

ただしフレッド・アステアやジーン・ケリーといった、シルクハットに燕尾服で踊る、いわゆる伝統的なそれとは大違い。ダンス・チームのタップ・ドッグスの面 々はワークブーツの底にすべり止めの鉄を打ち付けたシューズを履いている。聞くところによるとダンサーの足近くにマイクを仕込んで生音を拾ったとかで、そのライブ感には迫力がある。加えて鉄工所の労働者というキャラクターが閉鎖される工場の救援というストーリーに効果 的に組み込まれ、つまり工場の大型機械の上で踊ったり等々、エネルギッシュにしてアクロバティック!? 大地を揺るがすような躍動感に満ちている。

ところで公開中の『102/ワン・オー・ツー』に、『ドッグ・ショウ!』(3月下旬より、シネマライズにて公開)。そして犬が演じているわけではないが『タップ・ドッグス』。今年の春は動物にしろ人間にしろ、ちょっとした犬ブームのようではある。


○月○日
ハリウッド映画界は昔から外国の才能や頭脳を積極的に取り込んでビジネス展開をしてきた。古くはマレーネ・ディートリッヒにイングリッド・バーグマンにグレタ・ガルボ等々の女優たち。あるいはフリッツ・ラングやエルンスト・ルビッチといったフィルムメーカーたち。それこそ数え上げればきりがないので、いきなり現代に飛んで、ここ数年の傾向を見てみると『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデスや、『私の愛情の対象』のニコラス・ハイトナーといった、イギリスの舞台演出家の活躍が目立つ。

そしてジェニファー・ロペスに惹かれて見た『ザ・セル』(3月24から丸の内プラゼールで公開)で、私はごく最近のもうひとつの 傾向を発見した! そこでヒント。この映画の 監督ターセムと『シックス・センス』のM・ ナイト・シャマランと『エリザペス』のシュ カール・カプールの共通項は? 答えはイン ド出身ということ。シャマランは新作『アン ブレイカブル』が日本でも大ヒットしているし、CMとミュージック・ビデオを注目されていたターセムは連続殺人鬼と心理学者と FBIの捜査官を主人公に、とてもビジュアル に凝ったスリラー『ザ・セル』で劇映画監督 の仲間入り。シャマランにカプールにターセ ム。インドはIT関連の技術者ばかりがもて はやされているが、ハリウッド映画界でインド出身の3人がどんな活躍をするかが楽しみ だ。



○月○日
映画界でいちばん華やか、かつ有名なイベントの、アカデミー賞のノミネートが発表された。主要6部門の候補は以下のとおり。

作品賞
『ショコラ』
『グリーン・デスティニー』
『エリン・ブロコビッチ』
『グラディエーター』
『トラフィック』

監督賞
アン・リー『グリーン・デスティニー』
リドリー・スコット『グラディエーター』
スティーブン・ダルドリー『リトル・ダンサー』
スティーヴン・ソダーバーグ『エリン・ブロコビッチ』
スティーヴン・ソダーバーグ『トラフィック』


主演男優賞
ハビエル・バルデム『Before Night Falls』
ラッセル・クロウ『グラディエーター』
トム・ハンクス『キャスト・アウェイ』
エド・ハリス『Pollock』
ジェフリー・ラッシュ『クイルズ』


主演女優賞
ジョアン・アレン『The Contender』
エレン・バンステイン『レクイエム・フォー・ドリーム』
ジュリウット・ビノシュ『ショコラ』
ローラ・リニー『You Can Count on Me』
ジュリア・ロバーツ『エリン・ブロコビッチ』


助演男優賞
ジェフ・ブリッジス『The Contender』
ウィレム・デフォー『Shadow of the Vampire』
デニチオ・デル・トロ『トラフィック』
アルバート・フィニー『エリン・ブロコビッチ』
ホアキン・フェニックス『グラディエーター』


助演女優賞
デュディ・デンチ『ショコラ』
マーシャ・ゲイ・ハーデン『Pollock』
ケイト・ハドソン『あの頃ペニー・レインと』
フランシス・マクドーマンド『あの頃ペニー・レインと』
ジュリー・ウォルターズ『リトル・ダンサー』


予想どおりとはいえ『グラディエーター』が最多の12部門にノミネートとは、ちょっと平凡すぎるのではないかしら。もしかしたら監督のリドリー・スコットが一番ビックリしているかも。ビックリといえば『エリン・ブロコビッチ』『トラフィック』(ゴールデンウィークに丸の内ピカデリー1他、全国 松竹・東急系で公開)の2作品で最優秀監督賞になっているスティーヴン・ソダーバーグも目を白黒させているかもしれない(本人に会う機会があれば、どっちで受賞したいか訊いてみたい)。

演技部門で注目したいのはジュリエット・ビノシュが『イングリッシュ・ペイシェント』で助演女優賞を受賞したジュリエット・ビノシュが主演女優賞に輝くか。『ショコラ』で助演女優賞候補になっているジュディ・デンチが『恋におちたシェイクスピア』に続いて再び助演女優賞を獲るか、あるいは『ファーゴ』で主演女優賞に輝いたフランシス・マクドーマンドが『あの頃ペニー・レイント』で助演女優賞を手にするか。ライバルは同じ作品の助演女優ケイト・ハドソンというのが面 白い。

男優部門では『グラディエーター』のラッセル・クロウとホアキン・フェニックスか主演男優賞、助演男優賞を獲って完勝するか。ああでもない、こうでもないと授賞式の日まではこの話題で楽しむことができる。映画ファンってシアワセ。



俳優やクルーのことを詳しく知りたい方は、Miss Marpleの「Movie data base」をご覧ください。


Text:Nao Kisaragi
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