『映像ワールド2002』

早いもので2002年もそろそろ終わろうとしている。雑誌などでは「2002年映画ベストテン」といった企画がいろいろなところでみることができるようになってきていた。映画も面白いが「映像=モーションイメージ」も今年になって確実に面白くなってきているのでそのあたりについて今回は書いてみる。(前にも書いたと思うが、個人的には映像というか、「モーションイメージ」という呼び方がすごく好きで。「モーショングラフィック」でもなく「ショートムービー」とも違う、イメージという言葉のほうが広がりを感じさせてくれるではないか)。


ショートムービーやモーショングラフィックス、またはPV(プロモーションビデオ)といったように映画とは異なる映像を一度にみることができるイベントが今年もいくつか開催された。なかでも1996年アメリカ・サンフランシスコにてスタートした「レスフェスト」(開催当時は「Low Res festiva」(ロウレズ フェスティバル)というビデオ映画祭)は日本では今年で4回目を迎え、様々な作品がみることができた。そして同じく1996年に始まったロンドン発の映像イベント「ワンドットゼロ」もことしは日本においても「ワンドットゼロニッポン」として9月に開催された。このふたつの映像イベントはほぼ同じ時期にスタートしたのであるが、どちらも映像をいち早く紹介するイベントとしては当時としては画期的であり、そしていまではどちらのイベントも規模が拡大され、そしてワールドワイドに展開されている。とはいえ、やはりそのセレクションにはアメリカ、イギリスという特色が見ることができて興味深い。

今年の春にロンドンのICAギャラリーで開催された「ONEDOTZERO」を見ることができた。すぐ目の前が公園というすばらしい立地条件のICAギャラリーには常にチケット待ちの人々が並んでおり、会場のすぐ横にはバー/レストランもあり、映像アーティストや、ワンドットゼロの主催者シェーンなどが軽く談話していたり、ラフというか、カジュアルな感じで映像を愉しむための空間が心地よかった。日本ももちろん徐々によくはなってきているのだとおもうが、やはりイギリスやパリにいくと、改めてギャラリーやイベント会場などにおける空間で心地よさが違う。パリではパレドトキヨというパリ万博のときの「日本館」がギャラリーになっているが。その付近は個人的に好きな空間でもある。もちろんルーブルとかポンピドゥだってすばらしい。がそことはまた違うすばらしさがある。映像というのは、視角と聴覚とで楽しむものだと思うが、その映像をみるまでの空間の演出次第によっては同じ映像であっても感じるものがどこか違うのではないだろうか。

話を映像に戻そう。この二つの映像イベントは他ではなかなか見ることができない貴重な映像、すばらしい映像がまとめてひとつの場所でみることができるというだけでもかなり貴重な瞬間である。毎年開催されているので今年見損ねたひとでもぜひ来年もまた開催されるはずなのでぜひ見てもらいたい。レスフェストの「レスミックス」というプログラムは日本人のアーティスト作品をセレクションしたものなのだが、会場には様々な参加アーティストがまぎれていて、上映が終わったあと、最後に舞台上に並んでコメントを語ってくれたのであるが、そういった楽しさは、映像イベントだからでもある。PVであっても、この場所での語り手はミュージシャンではなく、映像アーティストなのである。

レスフェストについていえば日本では購入できないのが残念なのだが、「RES」マガジンも発行している。11月にラフォーレミュージアムで配付された「RES」マガジンはアートディレクターが変わって表紙にはなんと、クリスカニンガムが白い紙に薄い白で印刷されているのであるが、これはぱっとみると誰だか人の顔が印刷されているという程度なのだが、誰だろうと思ってよくよく見るとこれが「クリス・カニンガム」なのである。普通の雑誌であればおもいっきり目立つようにするのだろうが、あえてわからりくにくいのがかなりかっこいい。

またまた映像の話とずれてしまったが、ここで私がいいたいことは映像だけでは語れない「映像の世界」というものがあるのではないだろうかということである。映像アーティストだけではない、映像を見せるイベント、雰囲気、映像を伝えるメディア。そして様々な映像に関わる人たち。映画のように莫大な予算を使って楽しませてくれるものもある。それはそれで大好きだ。来年の『マトリックス』なんていまからすごく楽しみでしかたがない。
res magazine最新号
「この白い部分にクリスの顔が薄く印刷されています。見えないのが残念ですが」

とはいえ、それが映像の全てではないし、映像のおもしろさってまだまだ様々な可能性があると思うのである。クリス・カニンガムのつくりだす映像のおもしろさ、すばらしさって映画とは違う世界感なのは間違いないだろう。でも一方では学生時代の低予算の実験映画がきっかけで映画監督になる人だっているのである。「視角」と「聴覚」という二つの感覚を研ぎすまさせて感じさせてくれる映像の世界にはままだま様々な可能性があるのではないだろうか。来年にはもっと面白い映像作品をみることができるのではないだろうか。

またメディアとしては、DVDも「NOWONMEDIA」「GAS」「アスミック」といったレーベルからアーティストシリーズが複数タイトルが発売されてきている。映像をとりまく人々、メディア、イベント、そして空間と映像アーティストとの関係性が今後どうなっていくのか。

映像の世界は常に変化してきている。そこが面白い。そしてその映像世界はみんなでつくっていくものなのではないだろうか。

Text:蜂賀亨



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RESFEST Digital Film Festival
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RESFEST Japan Homepage
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onedotzero
www.onedotzero.com

onedotzero nippon
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クリス・カニンガム
Bjorkの『All is Full of Love』のPVなどで有名な映像作家。
director-file.com/cunningham


「The BEST of RESFEST RESFEST Shorts Vol.1」(発売中)
価格:3900円(税別)
収録時間:108分
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「onedotzero_select dvd1」
価格:3300 円(税別)
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