香港に「idN」というデザイン雑誌がある。やっとで昨年あたりから日本でもディストリビューションされるようになり日本の書店にも並ぶようになったので、みたことがある人もいることだろう。「idN」のgeneral managerであるSKという人物はすごくパワフルで、日本やロンドン、アメリカと世界各地を飛びまわり、あるいはメールを送りまくり、そのネットワークで実に様々なクリエイティブプロダクトをプロデュースしている。雑誌、作品集、ショップ、ギャラリー、イベント、コンファレンスなど「デザイン」という切り口で次々と様々なものをプロデュースしていて、ある意味恐ろしいほどパワフルな会社であり、人でもある。彼こそまさにデザイン界におけるスピルバーグのような存在になりつつあるのではないだろうか。実際に彼にあったことある人がいたら、きっといろいろ思うことだろうけど。でもやっていることはまさにそれに近い。なんでも次々とつくり出すというパワーが彼にはある。

そんな「idN」が今年になって映像メディアであるDVDをプロデュースした。タイトルは「IdN Video 1.0」。彼らの視点で選ばれた世界で注目する4人または4組のクリエイターにスポットをしぼりこみ、IdNが香港で昨年主催したコンファレンス映像やインタビュー、そして作品紹介を香港という街を舞台にして紹介されている。まさに香港ならではのかなりストーリー展開のある内容にしあがっているといってもいい。


セレクトされているアーティスト達も有名な人が多い。そしてそのセレクションがかなり微妙で香港らしくて面白いのでもあるが。さすがSKという感じでもある。フィギュアなどで人気のある「マイケル・ラウ」(香港)。日本からは「デビルロボッツ」。イギリスからはサイラスのイラストなどで有名な「ジェームス・ジャーヴィス」。そしてパリから「M/M Paris」。

なかで最も興味深いのは「M/M Paris」である。彼らはヨウジヤマモトのカタログデザインやマルティーヌ・シットボンのアートディレクションなどを手掛ける他、最近ではビョークのPVやスリーブデザイン、フランス「VOUGUE」のクリエイティブディレクションを手掛け、なんと来月に発売されるマドンナのスリーブデザイン(※1)など、ますますパワフルに活動の域を広げてきているユニットでもある。そのM/M Parisは、あまりメディアなどに出てくる機会も少なく、彼等の貴重な会話や映像が収録されているのが興味深い。(ちなみにかれらは今週末には初来日をし、ロケットで展覧会をする(※2)ほか、東京タイポディレクターズクラブにおけるイベントに招待されるので興味ある人はぜひ見てほしい)

MMのファンは実はたくさんいるし、私自身も彼等のパートが一番興味深く見たのだが、デザイナーの個性が様々あって、そしてセレクトされている人たちも渾沌としているのはいかにも「香港」という感じがする。字幕が入らないのが少し残念だが日本でもニューズベースより発売されるので、ぜひ興味ある人は見てみてほしい。個人的に65分ずっしり入っているわりには金額も妥当だとおもうのだが…。とはいえDVDについては中を見てみるまでそのおもしろさ、あるいはつまらなさがわからず、そしてかつ個人差があり説明しづらいのが申し訳ない。でもMMファンであればぜひ一枚。SKあるいはidNについてはまたなにか別の機会があれば紹介したいと思う。

Text:蜂賀亨


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「IdN VIDEO 1.0」
(2003年 3月28日発売)
価格:3000円(税別)
全編約100分




idN
www.idnworld.com

デビルロボッツ
www.devilrobots.com

M/M Paris
www.mmparis.com



※1)マドンナの次作「American Life」。マドンナの公式サイトでみることができる。
www.madonna.com

※2)4/5からロケットで開催されるM/Mの展示会「M/M goes to TOKYO」。詳細はロケットのウェブをチェック。
www.rocket-jp.com