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『100,000年後の安全』
マドセン監督×西尾漠トーク付き上映会

text&photo : yuki takeuchi

世界が日本を注視している
日本は世界中に大きなインスピレーションを与えることができる

12月21日にオーディトリウム渋谷にて、『100,000年後の安全』のDVD発売記念トークイベントが行われた。監督であるマイケル・マドセンとNPO法人原子力資料情報室共同代表の西尾漠氏が登壇した。

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マドセン監督は、この作品を作るうえで、「ひとりの作家としていかなる政治的な意図もなければ、オンカロの取材をすることで何かを暴露、告発するという意図もない、放射性廃棄物処理施設として事業の意義も認識しているうえで、現実をそのまま捉えた作品を目指した」と話す。

映画館での上映以外にも、様々な場所で上映がなされ、ニューヨークの国連でも上映会が催されたと言う。また、どちらかに偏った考えのあるものや、政治的な背景があるものに対して大変慎重になる国連が今回のように上映をすることはとても珍しいことであり、いかに本作が中立的な立場であるものかと語った。また、監督は本作を制作するにあたって、このような意思決定機関にいるような人々にも是非観てもらいたかったと述べる。

マドセン監督は、オンカロのような地層処理できない国はあるかという疑問を科学者に尋ねたところ、唯一できない国は日本だと答えられたエピソードも話した。地震、火山国であり、フィンランドのように古く固い地層のないこの国では地層処理は難しいのではないか、そして、日本は「地上のオンカロ」を作らなくてはいけなくなるのではないかと懸念した。

「成熟した社会ではあらゆる情報がオープンであるべきであり、そうしてはじめて物事を決定できるはずなのであるが、ここ日本ではこと原発に関して、それがなされておらず、またこの状況に対して人々はあまり疑問に思わずに受け入れてしまっている状況が何年も前から始まっていたのではないか。これは人々の意識的なメルトダウン=メンタル・メルトダウンなのではないか。今回の人災は数年前から既に始まっていたのではないか」と私たちに対しても警鐘を鳴らした。

「原子力エネルギーを使うことに賛成であろうと反対であろうと関係なく、私たちは既に放射性廃棄物を生み出してしまっているという現実がある。そうである以上、それに対する責任があり、その責任を未来に先送りにするのではなく、いまその責任に取り組まなくてはいけない」「ドイツは、今回の日本での事故の惨状を受け、完全に原子力エネルギーからの撤退を表明した。いまその責任に対して日本がどう対処していくのか世界中が注視している。逆に言えば、この責任に日本だどう対処するかで、世界中に大きなインスピレーションを与えることもできるのだ」と締めくくった。

監督は、今回のトークイベントでも自分は終始一貫して、つねに中立的な立場であることを主張した。もちろん作品を見ていただければ、意図的かそうでないかは別として、映像や音響の端々に監督の個人的な”思い”のようなものを感じることが出来るかもしれない。しかし、表向きはつねに中立的な立場を示すことで、先の国連での上映の例にもあるように、どちらかの考えもった人だけではなく多くの人の目に触れる機会、考える機会を作ることに成功している。話す言葉ひとつひとつにはとても落ち着きと深い考えが感じられ原子力関係の識者としてだけではなく、映像作家としての思慮深さも感じることが出来た。


『100,000年後の安全』
(原題:INTO ETERNITY)

(2009年 / 79分 / デンマーク、フィンランド、スウェーデン、イタリア / 英語 / カラー / 16:9 / ビデオ / 配給・宣伝:アップリンク)

監督・脚本:マイケル・マドセン

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