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Interview

『ふがいない僕は空を見た』
タナダユキ監督インタビュー

interview & photo : yuki takeuchi

—原作ではなかった映画ならではといったシーンが、とてもストーリーを引き立てて素晴らしかったと思いますが、脚本の段階や撮影の段階で追加されていくのでしょうか?

現場で変わったということはないですね。脚本の段階で、自分が良いと思えない限りは、やっぱり決定項には出来ないので、その段階で十分で充分考えて作りました。とにかく、脚本を越えるにはどうしたら良いだろうと思いました。他の方と組んでもそうなのですが、脚本家は、わたしにとっては非常に頼りになる存在でありつつ、まず一番に越えたいと思います。まず、脚本家によかったと言われたいというのもあります。

—できあがってきた脚本を見て、まずこれを映像で越えていきたいと?

そうですね。どうしたらそうなるか、どうしたらそうできるかというのは、全然ないので、現場で探りながらですけど。「これは自分が想像していたものと全然ちがう」と脚本家に言われたいなと思います。

—とても印象に残ったのが、原作にはなかった親友の福田とあくつが校庭でチラシをまくシーンでした。原作にないシーンということもありますし、言葉もないなかで、ふたりの動きと表情だけなのですが、そこから様々な感情が溢れ出しているような気がしました。

その子たちが生まれ育った環境が厳しかったり、本人たちが望んだかたちではない場所に生まれたりとか、だからといって本人たちも全然悪い子というわけではない。自分たち自身でも感情を持て余していて、ああいうえぐい行為をしている。でも、なにか楽しそうにしているその姿が、いろいろな想像をこっちに与えてくれているのだと思います。あのシーンを撮るときも、ふたりに細かく指示を与えたわけではなく、導線くらいしか伝えてないですでれども、あれは、自分でもああいう光がきているとは思ってなくて…。

—美しすぎて、逆に残酷にも思えてしまうという…

そうなんですよね。あれが自分のなかでも非常に手応えのあるシーンですね。想像の及ばないところで、どうなるかなと思っていたのですけど、それを軽く超えるものをふたりがやってくれたなと思いました。

—最後に、これから観る方にメッセージなどありましたら、お願いできますか?

そうでね、どうぞ観てくださいというくらいしかないですけど(笑)。是非、このシーンを観てくださいというのも、自分のなかで違和感があって、映画は観てもらった人のものになるのと思うので。トロントで上映したときにすごく感じたのは(※)、トロントのお客さんたちは、おそらく批評家の意見も関係ないし、レビューの星も興味もなく、興味があれば足を運んで、自分がこれを好きかどうか、自分がきらいなら途中でも劇場を出ちゃうし、気に入れば最後まで観る。自分の指針をしっかりと持っているのだと思います。これから、たくさんいい批評があったり、悪い批評があったりすると思うのですけど、それを信用しないでほしいです。いいものも、悪いものも。それではなく、「自分はどう思うのだろう」と観ていただけると、そのことで、本当にその人自身に最終的に映画として仕上げてもらえるという気がします。

—それは、映画にとっていちばん幸せなカタチかもしれないですね。

そうですね。幸せなことですね。

※ 第37回トロント国際映画祭に正式出品


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© 2012「ふがいない僕は空を見た」製作委員会

『ふがいない僕は空を見た』

11月17日(土)テアトル新宿他全国ロードショー

(2012年 / 141分 / 日本 / color / 1:1.85 / DIGITAL / R-18)

監督:タナダユキ
原作:窪美澄『ふがいない僕は空を見た』(新潮社刊)
脚本:向井康介
音楽:かみむら周平
出演:永山絢斗、田畑智子、窪田正孝、小篠恵奈、田中美晴、三浦貴大、銀粉蝶、梶原阿貴、吉田羊、藤原よしこ、山中崇、山本浩司、原田美枝子

オフィシャル・サイト

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