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ジャン=リュック・ゴダール監督最新作
『さらば、愛の言葉よ』公開記念
菊地成孔トークショー
~ジャン=リュック・ゴダールが3Dで描く最大の野心作~

text & photo : yuki takeuchi

83歳にしてなおも映画を革新し続ける巨匠ジャン=リュック・ゴダールの初の3D長編『さらば、愛の言葉よ』が1月31日に公開された。第67回カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞した本作は、観る者の期待に応えながらも予想を裏切る野心作。さまざまな反響を巻き起こしながら公開を迎えた2月3日、都内の代官山蔦屋にて公開記念トークショーが行われ、音楽家の菊地成孔さんが本作について語った。

『さらば、愛の言葉よ』ストーリー
人妻と独身の男。
ふたりは愛し合い、喧嘩し、一匹の犬が町と田舎を彷徨う。
言葉をめぐり季節は過ぎ去り、男と女は再び出逢う。
前夫が全てを台無しにし、第二のフィルムが始まる───

一分も寝る隙のない作品で最初からやられまくり。1時間があっという間

菊地さんは、本作の感想について、21世紀に入ってからの4作品(『愛の世紀』『アワーミュージック』『ゴダール・ソシアリスム』そして本作)のなかで最もオススメできる作品だと言う。そして、「『アワーミュージック』はかなり面白く、ハリウッド映画好きな方でも観ることができるような映画だったので、オススメしましたが、あれには欠点があって長かったのです(笑)。どうしてもゴダール・タイムと言うような途中で眠たくなってしまう時間があるんですが、今作は69分なので、あっという間に終わってしまいます」と続け、「久しぶりに“寝ないゴダール”。一分も寝る隙のない作品で、最初からやられまくり。1時間があっという間」「映画やゴダールに興味がないけど、モダン・アートなどに興味があって映像作品のようなものは好きですという方がご覧になっても、充分に楽しめるし、価値のある作品」と評し、劇場に足を運び、3Dで観てほしいと述べた。

ポップさを取り戻したゴダール、3Dはゴダールにとって当然の帰着

さらば、愛の言葉よゴダール作品は時代ごとにポップであったり難解だったりしてきたが、本作は「どれくらいポップかと言うと、『気狂いピエロ』くらいにはポップ」と菊地さん。「観ててまずカッコいい。画面のデザイン構築が、例えば北欧家具が素敵だとか、あのテレビCMがカッコいいというようなレベルの通俗的なポップさに満ちていて、ゴダールがお得意のアバンタイトルから開始10分というつかみでの3Dの在り方は驚異的」「端的に言って、映画史上初の3Dのアート映画」と語り、本作を「高尚に、ポップに3Dをやったという印象」とも述べた。

また、これまでゴダールは、映画史のなかで重要な転換点である“ヌーヴェルヴァーグ”、また音と映像を対等に扱うという“ソニマージュ”を生み出したということが大きく語られることが多かったが、地道にメディア的、テクノロジー的な実験を繰り返してもいたのだと述べる。ただ作品そもそもの難解さが先立ってしまい、そのことへ目を向けられることが少なかっただけで、「3Dというは、ゴダールからしてみれば自然」、演奏や作曲ということと別に機材の発達によって音楽が発達することを例に挙げ、「ゴダールは他の巨匠と比べると、機材の発達によって映画を発達させようとすることに、一番意欲的に行動した人で、そこから見たら3Dというのは、当然の帰着だったのかもしれない」と言う。そして、「(テーマパークの)アトラクションのようなものに近づいていると思います。いわゆる視聴覚の体験、スペクタクルを味わわせるのだというカタチにだんだん近づいていて、次の作品が30分だったとしても驚きませんし、そういうような境地にありますよね」と述べた。

録音技師フランソワ・ミュジーから撮影監督ファブリス・アラーニョへ

本作の実質的なスタッフは、監督のゴダールと撮影のファブリス・アラーニョのふたりだけである。本作では3D映像と音響が「マリアージュ」するよう、音に対して模擬的な3Dとして定位・音量・分離といった処理がかなり暴力的に施されいるが、それはファブリス・アラーニョによる影響であると菊地さんは言う。これまでゴダール作品の音響を生み出してきた録音技師フランソワ・ミュジーが、本作ではスタッフとして参加いない。それはデジタルによって、撮影と同時に録音が可能になったことも要因であり、これまではゴダールがやってきたことをフランソワ・ミュジーが継承するようなことをしていた。そして、さらに本作ではファブリス・アラーニョがそれを継承しているのだと言い、「だんだん戯画的に、様式的になっている」と述べる。劇中で流れる楽曲も比較的誰でも知っているようなクラシックが多く、ゴダール作品の特徴でもある突然音楽が途切れる効果は「ミュジー時代よりも、ちょっとしつこめ」。また、「(ミュジーとアラーニョによる戯画化によって)どんどん刺激が強くなっているので、ある意味、ゴダール・マンガという言い方もできるくらい戯画化されていると思えます。音的にも映像的にもものすごく忙しい、よくジェットコースタームービーと言うけども、違った意味でジェットコースタームービーと言える。60分間、音は忙しくて多いし、画質は変わるし、しかも3Dだしという濃厚さ」と語った。

ゴダールのこれから…

さらば、愛の言葉よ毎度「これが最後」と言われているゴダール作品であるが、このことに関して菊地さんは、「もう、ゴダールがいなくてもゴダール映画は撮れるので、、、それはミュジーが証明したし、今回の撮影監督も証明したわけです」と、撮影現場にゴダール自身がいないときでも、ミュジーやアラーニョの手によって制作が進められていることを挙げ、「ゴダールが、マルシー(コピーライトの意)さえ解放すれば、世界中の若い人がゴダールの映画を撮るという状況が起こりうるのではないかなというSF的な想像力すら掻き立てられる」と述べる。また、ゴダールと比較して語られることもある韓国の映画監督ホン・サンスは、それをある意味で実現しているのだと言い、韓国国内であるのにゴダール映画の世界のように見えたりするのだと説明。そして「ゴダールが韓国で撮ったら面白いなと思ったりするんですよ」とのユニークな感想も述べた。

最後に会場から、ゴダールがこれまでに捨ててきた“資本主義(商業主義)”と“主演女優”と”音楽”を、本作で取り戻そうとしていたのかという質問があがると、「ゴダールは商業映画に戻ると言っては、戻りきれずにいることを繰り返している。今回は3Dということで、図らずも、観る側にすごい商業性、ポップさを与えていることは確か」と言う。また、主演女優という要素も徐々に取り返していくかもしれない、音楽については「最終的には、“音楽・ミシェル・ルグラン”だと思うんですよ(※ゴダールはある作品でルグランと決別している)」と冗談めかしながらも、「そうすると(全てを取り戻して)完全に一周するという、、、音楽がミッシェル・ルグランで、主演女優が自分の愛人で、ハリウッドでTOP10以内に入ったら、最初に戻ることになりますから。そこまで行くのかどうかというのを刮目して見守ろうと思いますけどね」と締めくくった。

1月31日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!
『さらば、愛の言葉よ』
http://godard3d.com/


© 2014 Alain Sarde - Wild Bunch

『さらば、愛の言葉よ』
(原題:Adieu au Langage 3D)

1月31日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!

監督・編集・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:ファブリス・アラーニョ
出演:エロイーズ・ゴデ、カメル・アブデリ、リシャール・シュヴァリエ、ゾエ・ブリュノー、ジェシカ・エリクソン、クリスチャン・グレゴーリ、withロクシー・ミエヴィル(アンヌ=マリー&ゴダールの愛犬)

2014年/フランス映画/フランス語他/69分/原題:Adieu au Langage 3D/英題:Goodbye to Language 3D

配給:コムストック・グループ / 配給協力:クロックワークス

オフィシャル・サイト

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