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Interview

『箱入り息子の恋』
市井昌秀監督インタビュー

interview & photo : yuki takeuchi

市井昌秀監督は、06年に初の長編作品『隼(はやぶさ)』が第28回ぴあフィルムフェスティバルで準グランプリと技術賞を受賞、08年の長編第2作の『無防備』では第30回ぴあフィルムフェスティバルでグランプリと技術賞、GYAO賞を受賞。同年の釜山国際映画祭のコンペティション部門でもグランプリを受賞し、翌年のベルリン国際映画祭のフォーラム部門にも正式出品され、国内外から高い支持を得ている。市井監督の最新作『箱入り息子の恋』の公開を前に、ご本人にインタビューをさせていただきました。豪華なキャストの方々のお話から、作品への思い、あるシーンに隠された逸話などを伺うことができたので、ここに紹介します。

STORY
いままで異性とつきあうこともなく35年間すごしてきた天雫健太郎(星野源)。人付き合いもほとんどない彼は、市役所勤めで自宅と勤務先を往復するだけの毎日。そんな彼を見兼ねた両親が「代理見合い」で見つけてきた今井奈穂子(夏帆)との偶然の出会いを通して、正式にお見合いをすることになるのだが、そこで奈穂子は目が不自由だということを初めて知る。真っすぐで、不器用で、滑稽な、健太郎の初めての恋がはじまる—

— いままでインディーズを主体に作品を作られてきましたが、本作はいままでと違って、大きな作品になりました。そういう意味で作品づくりに違いや変化などはありましたか?

規模が大きくなるというよりは、キャストもそうですが、スタッフが今まで全くと違うので、交流していかないと、という感じでしたね。ただ準備段階でスタッフの方ともかなり打ち解けられていたので、あまり、いままで撮ってきたスタイルを変えようという意識はなかったです。ただ、撮影を始めると百戦錬磨のスタッフなので、自分が悩んでいるシーンなども、いろいろ相談していこうと思い、スタッフやキャストの方々の意見を全て吸収したうえで、自分が選択するというスタイルに変えました。いままで自主映画を撮っていたときは、ある種、自分の頭の中を、みんなが読み取って具現化してくれるという感じだったのですが、僕だけの脳じゃなく、大勢のスタッフのアイデアを盛り込んだ感じがしますね。

— 市井監督のいままでの作品というと、どちらかというとダメな男性としっかりした女性いう印象が強かったのですが、星野源さんが演ずる「健太郎」は、ダメはダメなのですけど、どこか割り切れているというか、芯の通った、清々しさがあり、観ていて気持ちいいほどでした。いままでの男性の描き方/捉え方とどこか変わったところはありますか?

カラに閉じこもっているという人は、僕の中でスポットを当てる人として、わりと共通していると思います。今作の代理お見合いをするという設定にしても同じです。ただ、よく言われるパラサイトやニートという人たちは、すごく自分をもっている。僕も引きこもってしまいそうなときも経験しましたけど、自分の世界をもっているからこそ閉じこもっている。だから、健太郎は、あくまで自分の世界を大切にしすぎて、社会とつながれない男なので、そう言う意味では、いままでの、ただダメという登場人物とは違っていると思います。

— 星野源さんとは、その健太郎という役についてどのようなお話をされましたか?

今いったようなことは一通り話しました。また、星野さんが、お知り合いで健太郎に近いモデルの方がいて、色々参考にしたと仰っていました。キャラクター造形の部分は、事前に入念な準備ができましたが、あと大きかったのは、星野さんが初日に持ってきた眼鏡ですね。衣装合わせで決まっていたものとは、別のものを持ってきてこっちでどうでしょう、と。そっちのほうが健太郎らしいということで採用させてもらいました。

— 自ら選んで持参されたということですか?

星野さんご自身で購入されてですね。健太郎ならこんなメガネを選ぶだろうと。本人にはかっこよくても他の人からダサく見える絶妙なラインで、この眼鏡は、大きかったです。

— 実際に“度”も入っていましたよね?

そうですね。度が入っているので、視野もすこし狭くなったり、目が小さく見えたりして、そのへんのリアルさも出たかなと思います。

— いっぽう、夏帆さんは目が不自由という難しい役でしたが、本当に素晴らしい演技をされていたと思います。目が不自由であることがネガティブなものとして描かれていないところも、とても良かったと思います。夏帆さんとは、どのようなお話をされましたか?

盲目であることに対して悲観的ではなく、まず受け入れている人として描きましょうと話しました。盲目であることにとらわれていることを焦点にはしたくなかったので…。過保護になってしまうのは、盲目ということだけが理由ではないですし、盲目だから大人しいのかと言ったらそういう訳でもない。先ほどもお話いただいたように、僕の作品では女性の方が引っぱっていくパワーを持っていて、恋愛の行動をするにあたっても主導権は、最初は奈穂子の方が持っています。

— とくに目の演技が素晴らしかったと思います。

いろいろな作品を観ていただいたり、一緒に盲学校にいったり、お話を聞いたりしたのですが、夏帆さんはご自身で、個人的にも盲目の方とお会いしたと仰ってました。いざ、演出のところで何かしたかと言うと、そんなにはありませんでした。そこはすごく重要なデリケートなことだし、ちっちゃい嘘はつきたくないので、絶対的にちゃんといきましょうとは言いましたが、いざ撮影に入ると夏帆さんは問題なくできていました。唯一、言ったことは、瞬きをしないでというくらいですね。そのくらいのことしか言いませんでした。

— —演出される際、仕草や表情などこまかく指示されましたか? 健太郎のこまかい素振りがとても面白かったのですが、例えば目を剥くような素振りなど…

人にもよりますね。

— 健太郎のこまかい素振りがとても面白かったのですが、例えば目を剥くような素振りなど…

たぶん寿司屋のシーンだと思いますが、あそこはちょっとやり過ぎちゃったかなと思ったのですが(笑)どうでしょう。

— ひとつひとつの素振りがとてもキャラクターにとって自然で印象に残るようなものが多くありました。


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© 2013「箱入り息子の恋」制作委員会

『箱入り息子の恋』

6/8(土)、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!

(2013年 / アメリンヴィスタ / 5.1ch / 117分)

星野源/夏帆/平泉 成/森山良子/大杉漣/黒木瞳ほか
監督・脚本:市井昌秀
配給:キノフィルムズ

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