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HOLY MOTORS

a film by Leos Carax

レオス・カラックス監督
『ホーリー・モーターズ』

特別先行上映トークイベント
& 来日記者会見

text & photo : yuki takeuchi

ホーリー・モーターズは映画の神聖な原動力

また、冒頭のシーンに監督自ら出演したことについては、「この映画について私の頭の中に最初にあった映像は、観客を正面から観ているところです。闇の中に観客たちがいて、その人たちを正面から見る。しかし、観客たちは眠っているのか死んでいるのか分かりません。そこで、眠っていた人が目覚めて、そのような観客たちを発見するというシーンを思いついたのです。そして、シナリオを書かなければなりません。仮のその役の名前としてレオス・カラックスと書きました。後になって、また検討すればいいと思って、そういうふうに仮の名前をつけたのです。この映画を作っていた際に、ミシェル・ピコリが演じている人物を自分が演じてもいいのではないかと考えたこともあります。けれども、そうするとミシェル・ピコリが演じている人物が、誰だか分からなくなってしまうと思ったのです。あの人物は明らかに映画作家ではなりません。プロデューサーなのか、マフィアなのか、それとも内務省の人間で監視カメラの責任者なのかもしれません。そこで、ミシェル・ピコリが演じていた人物ではなく、第1部、最初に出てくる登場人物を、自分が実際に飼っている犬と一緒に演じました。」と語り、「ドニ・ラヴァンについては、彼と出会ったのは20歳のころで、彼が20歳から50歳に至るまで私は彼を撮影してきました。彼は20歳の時よりも、はるかに偉大な俳優になっています。特殊な体を彼は作り出してきました。それは素晴らしい体で、いつも私はそれを撮影したいと思います。だから、この映画の冒頭に19世紀のモノクロのマレーが撮った連続写真を入れたのです。『ホーリー・モーターズ』は、実は人間の身体とも関係があります。すなわち映画作家は、画家と同じように、人間の身体や顔を見ることを好みます。もちろん風景や建物、人間が作り出したもの、タバコやピストルやその他いろいろなものを見るのは好きですが、なによりも人間の身体を見るのが好きです。走っている人間の体、泣いている体、セックスをしている体などです。そこで冒頭で19世紀の映画の祖先とも言える連続写真を出したのです。あれは、男と子供がいて、ふたりが走っていき、ボールを投げて、地面に近い何かを壊すのです。これこそがホーリー・モーターズ、映画の神聖な原動力です。」と続けた。

カラックス監督は、「撮影をするとき何かの思想があって、映画を作り出すのではなく、ある種の映像とある種の感情があって、その相互関係を見つけていくもとで映画が出来上がっていきます。当初その感情は漠然としてものであって、編集しているときにそれにはっきりと気づくこともあります。この映画に関しては、ふたつの感情が基盤にありました。そのふたつの感情、互いに相反する感情と言ってもいいのですが、この映画なかでも観られるのは、自分であることの疲労という感情です。すなわち人生でみなさんもご存知でしょう、自分自身を抜け出すことができない、いつも自分でしかあり得ない、そのことからくる疲労。そして自分を抜け出すことができない、自分であり続けるために狂ってしまうような、そのような疲労感があります。もうひとつの感情は、それはひとつの必然、夢でもありうるのですが、自分自身をあらたに作り出す必要。自分自身を新たに作り出したいという気持ちです。この映画の中で、Revivreという歌が挿入されています。こうやってふたたび生きるという必要が、ふたつ目の感情なのです。しかし、自分を新しく作り出すことは、なかなか出来ません。かなりのチカラと幸運がないと、そうしたことは出来ないわけです。このような感情、もちろん俳優の方たちは反響を感じるでしょうけど、私はさきほど申し上げたように俳優には興味がありません。私が関心をもっているのは、我々自身です。」と話す。


© Pierre Grise Productions

『ホーリー・モーターズ』
(原題:HOLY MOTORS)

4月、ユーロスペースほかにて公開 全国順次ロードショー

スタッフ:監督・脚本:レオス・カラックス(Leos Carax)、撮影:キャロリーヌ・シャンプティエ、イヴ・カープ

キャスト:ドニ・ラヴァン、エディット・スコブ、エヴァ・メンデス、カイリー・ミノーグ、ミッシェル・ピコリ

提供:ユーロスペース、キングレコード
製作:2012年/フランス・ドイツ/フランス語/115分/DCP/カラー
配給:ユーロスペース

オフィシャル・サイト

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