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HOLY MOTORS

a film by Leos Carax

レオス・カラックス監督
『ホーリー・モーターズ』

特別先行上映トークイベント
& 来日記者会見

text & photo : yuki takeuchi

ルイ・フイヤード、ジョルジュ・フランジュ、そしてジャン・コクトー。

またテーマひとつとしてある肉体的・精神的な疲労ということに関しては、「オスカーの疲労は」「肉体的疲労でもあり、自分自身あることからくる疲労でもあるわけです。こうして撮影をしていますけども、私は最初からつねに、自分自身でいることの疲労を撮影し続けたような気がします。ドニ・ラヴァンと若いときに、第一作を撮ったときからしてそうでした。そして、さまざまな年齢を、人は移りゆくことができると思うのです」「あらゆる方向に向かって、人生の段階を移りゆくことができると考えるのです。たしかに、この映画のなかで、私は存在しない職業を作り出しています」「あらゆる人生から別の人生へ、人生のある段階から別の段階へということを、1日の間で示そうとしたのです。今日、生きているという経験が、どれほど広がりのあるものかということを、1日の物語として描きました。少なくともそれは現在、生をえて生きている、その私の経験を語っています。これが、今の質問に関して、私が言えることです。」と言う。また、冒頭で監督自身が登場する劇場のシーンを挙げ、監督が観客をどのように捉えているかという問いについては、映画を作るときに観客のことは全く考えてない、むしろ私のことを考えていると言う。「最初のショットですが、今私がここで観ているのと同じような光景です。2〜3人眠っている方がいらっしゃいますけども」と冗談めかしながらも、映画館で全員が眠っているのか死んでいるのか分からない状態を正面から見るという、普段は絶対に見ることができないようなイメージ、もうひとつは、監督がパリで何年も前からよくすれ違っていた物乞いの老女だと言う。また「観客について言えば、私は観客がなんなのか、よく分かりません」「間もなく全員が死んでいくだろうということしか、私は分かっていません。」と説明した。

主人公オスカーを導く役割であるセリーヌについては、「このプロジェクトに、セリーヌがどのようにして到来したのかは自分でもよく分かりません」としつつも、最初にリムジンを思いついたと言い、監督がすむパリの中華街の近くで中国人の結婚式で長いストレッチリムジンをよく見かけていたこと、そしてそれに驚かされたと述べた。「なぜならば、そういった結婚式の乗り物というよりも、大きな棺桶のように見えて、不吉であると同時にエロティックなところのあるものだと思っていました。人の目を惹くためのことを全てしているのに、決して中が見えることがない。これで少しヴァーチャルな世界と繋がるような感じもあります。リムジンをフィクションの中心に置いたとき、私は中にいる人々を想像しました。普通リムジンは自家用車として買うものではなく、時間決めでレンタルをするものです。ですから、その中で人々は、リムジンをレンタルし借りている時間だけ、なんらかの役を演じています。すなわち、自分を普通よりお金持ちに見せるとか、あるいはより有名人に見せるとか、あるいは自分を隠すため、自分を見せびらかすためといったカタチでリムジンは使われています。そこで思いついたのは、ある程度の時間だけではなく、リムジンに乗っていて、さまざまな実存を絶えず変えていく役。人生を通じてさまざまな役を演じている人物というのを、思いついたわけなのです。そうすると今度は誰がそのリムジンを運転するのかという問題になってきます。」「映画化に至ったときに」「私はフランスの古い幻想的な映画を思い出しました。」と言い、ルイ・フイヤードとジョルジュ・フランジュの名前を挙げた。「とくにジョルジュ・フランジュの『顔のない眼』という作品があります。その中で、エディット・スコブは20歳で、主演をしていました。実はエディット・スコブは『ポンヌフの恋人』のときに、出演をしてもらい撮影をしていました。けれども、編集の段階でそのショットが切られてしまって、『ポンヌフの恋人』のなかでのエディット・スコブは僅かに髪の毛が見えるだけです。ですから、いずれにせよ彼女を使ってもう1本映画を撮らないと行けないと思っていたのです。そこで彼女を運転手に起用することを考えたのです。こうして運転手は年配ではあるけれど、とても美しい女性ということになりました。私にとってもセリーヌの役割がなんなのかは、私にとっても謎です。運転手であるけれども、秘書のようでもある、そして、物語が展開するにつれて、彼女がだんだんと権威を持つ存在になってきます。彼女がキーを持っていて、そしてお金も彼女が持っています。どうしてそういうふうになっていたのかは、自分でも説明がつきません。」と過去作品のエピソードも併せて披露しつつ、また本作のアイデアのもととなった作品も明かした。

ふたりのカメラマン。ジャン=イヴ・エスコフィエとキャロリーヌ・シャンプティエ。

『TOKTO!』に引き続き、カメラマンを担当したキャロリーヌ・シャンプティエについては「映画を作り始めたときドニ・ラヴァンと出会い、当時そうした早い時期に、2〜3人の自分に映画を作ることを可能にしてくれた重要な人物に、同じ頃に出会いました。その中のひとりが、ジャン=イヴ・エスコフィエでした。彼は私の撮影監督として、最初の作品を作り、自分の兄のような存在になって彼とともに80年代に3本の作品を作ることができました。その後、ジャン=イヴ・エスコフィエとは仲違いをしてしまし、彼はハリウッドに行き、そしてハリウッドで若くして亡くなりました。おそらく彼が亡くなったことが、私がフィルムからデジタルへと移行することの助けになったのだと思うのです。私はフィルムが大好きですけれども、私にとってフィルムで撮影することは、彼と強い私との関係と結びついています」と前置きをし、「こうしてデジタルに移行することになって、キャロリーヌ・シャンプティエと出会いました。キャロリーヌ・シャンプティエはデジタルでの撮影の経験を多く持っている人でした。そして『TOKYO!』で既にキャロリーヌ・シャンプティエと仕事をしたわけですが、その際、カメラを借りることもせず、彼女が自分の家に持っていた小さなカメラで、HDですらないカメラで撮影を行いました。こうしたキャロリーヌ・シャンプティエと2本仕事をしましたけども、彼女は、撮影期間を短くするために私がラッシュを見ないということを承知していました。トンネルのように前に向かって進む撮影だということが分かっていました。そして、私はデジタルが嫌いであって、限界があるとは思っているけども、デジタルと使う努力をするということを彼女も充分に承知していました。そのために、撮影の前にテストをするとか、さまざまな多大な努力をすることを自分の方からやってくれました。いずれにせよ、キャロリーヌ・シャンプティエは映画作りの実際の撮影以前・以降にその映画に付き添うと努めてくれる人です。すなわち、資金調達の段階から協力をしてくれますし、また、映画が出来上がった後も協力を続けてくれます。ひとつのプロジェクトが好きだと思うと、その映画が存在するように、最初から最後まで努力をしてくれるのが、キャロリーヌ・シャンプティエです。」と彼女の仕事を讃えた。


© Pierre Grise Productions

『ホーリー・モーターズ』
(原題:HOLY MOTORS)

4月、ユーロスペースほかにて公開 全国順次ロードショー

スタッフ:監督・脚本:レオス・カラックス(Leos Carax)、撮影:キャロリーヌ・シャンプティエ、イヴ・カープ

キャスト:ドニ・ラヴァン、エディット・スコブ、エヴァ・メンデス、カイリー・ミノーグ、ミッシェル・ピコリ

提供:ユーロスペース、キングレコード
製作:2012年/フランス・ドイツ/フランス語/115分/DCP/カラー
配給:ユーロスペース

オフィシャル・サイト

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