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HOLY MOTORS

a film by Leos Carax

レオス・カラックス監督
『ホーリー・モーターズ』

特別先行上映トークイベント
& 来日記者会見

text & photo : yuki takeuchi

芸術のなかで映画だけが人間の手によって発明された。映画という島とそこに眠る死者。

映画史に向き合うことや映画に対する責任が、ご自身にとって重荷になるようなことはないかという質問には、「幸運なことに17歳の頃に映画と出会うことができました。また、映画が発明されたことは奇跡のようだと思っています。なぜなら、芸術のなかで映画だけが人間の手によって発明された、発明されなければならなかった芸術であって、他の芸術はすべて人間の発明ではありません。地上にある場所があって、それを私は”島”と呼んでいるのですけれども、その島を出発点として、生きること、人生や死を別の角度から見ることができる。そこで私はその島に住みたいと思いました。私は少ししか作品を作っていませんが、自分ではその映画という島に住んでいる気持ちでいます。確かにその島は、大きな美しい墓場でもあるでしょう。ですから、責任があるとすれば、そこに眠る死者たちに対して、ときどき名誉を返してやることではないかと思います。けども大変美しい墓場です。たしかに映画の中には不吉な部分があり、それが重々しい部分もあるでしょう。たしか(ジャン・)コクトーだったと思いますが、”映画とは働いている死者を撮影することだ”と言っていたように思います。ですから、死はつねに映画の中に存在しています。また、同時に私はその島なしで自分が生きることが想像できません。」と語る。

オスカーは監督自身なのか、また、もしオスカーのように何かになりかわるとしたら何になりたいかという質問には、「もう多くの役を演じ続けています。例えば、13歳のときに、映画に興味を持つはるか前に、自分の名前を変えました。その後、人生でいろいろな役を演じ続けていて、それはとても疲れることだと思います。若いときに映画を作り始めましたけれども、私は映画の勉強をしたわけでもありませんでしたし、1作目を作ったとき、それ以前に一度も撮影現場に入ったことはありませんでした。そのような状態で映画を作ることでは、何かごまかしをしているのではないか、インチキをしているのではないかという気持ち持ってしまいます。そこで、外に向かっては、いわばハッタリを言ったり、嘘をついたりしなければなりませんでした。20歳で自分がこの映画を作りたい、これができるというとき、それは絶対に嘘になってしまいます。このようにして役を演じ続けているわけですけども、そうやってさまざまな役を人生で演じるということは、前に進むためでもあり、また自分守るためでもあるでしょう。また、その他にも私的な生活な部分でさまざまな役を演じてきています。それは恋愛や子供にも関わる役なのですが、むしろそれらの役を演じることを私は好きだと思います。それは人生の演技の一部だと思います。しかし、そうした演技をやめたときに一番疲労感と持つのではないかと思うのです。けれども映画なのか、恋愛なのかは分かりませんが、どこかそこに行けば、自分自身が何なのかを見つけることができるとされている場所があるはずです。ですから、全ての人々がこのように演技をしている時とそして自分自身が誰なのか知ろうと努力をしている時との間で旅を続けているのではないでしょうか」と自身の人生経験も踏まえ語った。

全ての人々がこのように演技をしている時とそして自分自身が誰なのか知ろうと努力をしている時との間で旅を続けている

最後に、オスカーのそれぞれのキャラクターついて「たしかに人は映画作家、父親、ジャーナリストなどになるために生まれてくるのでしょう。けれども、インタビューを受けるために生まれてくるのだとは思いません。とても不自然だと思います。」と先日のトークイベントに引き続き、監督らしいジョークを挟み、次のように続けた。「自分をジャーナリストとして、父親として、映画作家として、子供をもつ存在として作りかえるということをするのであれば、それを真剣に行わなければなりません。他の真似をするだけでは充分ではありません。もちろん、周りを見回します。自分を父、ジャーナリス、あるいは映画作家として発明をしなければならない。その際には子供があって、映画があって、または記事があってその自分を発明していくわけなのです」「ひとつの人生から抜け出して別の人生へと移っていくとき、傷つかずに抜け出すことはできません。そして、映画館の観客にしても同じなのだと思いますけれども、映画は普通、生きることと生きるこの表象の境界をはっきりとさせようとする傾向があるかと思うのです。けれども、この『ホーリー・モーターズ』においては、その境界が曖昧になっています。例えば、彼が父親で車の中で自分の娘に話し掛けているとき、たとえカツラをかぶっていてもそんなことは忘れてしまって、これが本当のオスカーなのではないかと思うこともあるはずです。しかし、オスカーが本当に誰なのかということを何度も質問されましたけども、私には分かりませんし、そうした疑問が提起されるべきではないと思うのです。この世界は作られた世界であって、おそらく自分がだれなのか探している人間を描いている。その際にオスカーが誰なのかという疑問に対して答えはないわけです。自分の方に答えがない。なぜならば、この映画は短い時間で空想をし、短い時間で撮影をし、ラッシュも見ませんでした。だから、映画を自分がはじめて発見をしたのは、編集の瞬間だと言ってもいいでしょう」述べ、その瞬間にはじめて観客のことを頭に浮かべ、最初の20分間は難しいものに見えるかもしれないと考えたと言う。しかし「セリーヌとの間に起きていることを通じて、また若い女の子や子供、年老いた女性などさまざまな女性が登場しますけども、その女性との出会いを通じて、これはひとつの長い人生、さまざまな実存を1日の凝縮したものであるといことが、分かっていくのではないかと思うのです。それこそ、現在生きている経験として、私が提供できる唯一のものだからです」と締めくくった。

トークイベント、記者会見、それぞれ約1時間ずつ行われた。濃密のようでいて、あっという間の時間でもあった。レオス・カラックス監督は、旅の疲れもあったと思うが、ひとことずつ丁寧に監督らしく言葉を交わしていた。その言葉の端々からは、幻想的でもあり、さまざまな解釈を生むと思われる本作への監督からのヒントが散りばめられたいたように思える。


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© Pierre Grise Productions

『ホーリー・モーターズ』
(原題:HOLY MOTORS)

4月、ユーロスペースほかにて公開 全国順次ロードショー

スタッフ:監督・脚本:レオス・カラックス(Leos Carax)、撮影:キャロリーヌ・シャンプティエ、イヴ・カープ

キャスト:ドニ・ラヴァン、エディット・スコブ、エヴァ・メンデス、カイリー・ミノーグ、ミッシェル・ピコリ

提供:ユーロスペース、キングレコード
製作:2012年/フランス・ドイツ/フランス語/115分/DCP/カラー
配給:ユーロスペース

オフィシャル・サイト

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