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Interview

第86回ベルリン国際映画祭正式出品作
『家路』久保田直 監督
3月1日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

interview & text : yuki takeuchi / photo : tomohiro masuyama

主演の松山ケンイチをはじめ、内野聖陽、田中裕子、安藤サクラといった実力派が結集して生まれた『家路』。第86回ベルリン国際映画祭の正式出品作にもなった本作は、震災後の福島を舞台に、故郷を失われたある家族の再生を描く。これまでにドキュメンタリー中心に活躍し数々の賞に輝き、そして本作が劇映画デビュー作となる久保田直監督に、ドキュメンタリーではなくフィクションだからこそ描きたかったことや錚々たる出演陣による名シーンの誕生秘話などを訊いた。

STORY
震災の影響によって、故郷が“帰れない場所”になってしまった。先祖代々受け継いできた土地を失い、鬱々と過ごす兄、胸の奥に諦めと深い悲しみを抱えた母。生きてきた土地を離れ、先の見えない日々を過ごす彼らの元へ、20年近く前に故郷を出たまま、音信不通だった弟が突然帰郷した。たった一人で苗を育て、今はもう誰もいなくなってしまった田圃に苗を植える弟。過去の葛藤を抱えながらも、故郷で生きることを決めた弟が、バラバラになってしまった家族の心を結びつけていく。

ドキュメタリーでは撮れないものがあることも実感している

― 長年、ドキュメンタリーの分野で活躍を続け、数々の賞も受賞されている久保田監督ですが、もともとドキュメンタリーの世界に入ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

僕は、全然ドキュメタリーをやりたかったわけではなくて、萩原健一さんの『傷だらけの天使』というドラマがすごく好きで、そういうものをやりたいなという思いがあって、そういうのもやっている制作プロダクションを受けて入りました。そして、アシスタントについたのがたまたまドキュメタリーだったんです。

― もともとは、フィクションの方を作りたいと思っておられていたのですね。

そうですね。と言うか、違う言い方をするとドキュメタリーは全く見てなかったんです。興味もなかったし、極端に言うと新聞も読まないような、とにかく、遊ぶ世代だったので(笑)

― 監督は、これまでに、実に様々な題材のドキュメンタリー作品を生み出されて来たわけですが、その過程で監督のなかに、テーマやポリシーのようなものは生まれていったのでしょうか。

基本的に、僕は、人間にしか興味がないんですね。ほぼ、ヒューマンドキュメタリーです。もちろん美術番組みたいなものも作っていますけども、結局、それも“ヒューマン”の方に流れて、「こんな美術番組作っても良いのか?」みたいな事をやっちゃっているんですけど(笑)。そのなかでも、特に“家族”というものを、こだわってテーマにしていましたね。

― それが、本作『家路』にも繋がっているんですね。では、その『家路』を制作することになったきっかけをお伺いできますでしょうか。

震災の直後に、脚本家の青木研次と…、友達なのでよくお茶飲んだりするんですけど、いろいろな話をしているなかで、「震災と原発のことって問題が違うよね」「別のこととして考えないとまずいよね」という話をしていて、そのなかで、閉ざされた空間ができてしまったことってもの凄いことだな、と話をしながら、でも、「きっとこれは風化していくよ」と言っていました。それを本当に風化させていいのかな、とそのような話をうだうだうだうだ、お茶を飲みながらしていくなかで、「もしかすると、東京に住んでいるホームレスのような状態になってしまった福島出身の人で、自分のふるさとが誰もいなくなったというのを見て、“だったら、帰れるかも”と思う人間が、もしかすると、いるかもね」というなかで、人間の物語を作れたら面白いかも…、面白いと言うと語弊があるけど、なんかいいんじゃないというところからスタートしました。

— そこで、なぜ監督がこれまでたずさわってきた分野であるドキュメンタリーではなく、映画というフィクションだったのでしょうか。

もともとが、そういうスタートだったので、ドキュメタリーではまずあり得ない、というのがありました。そういうふうに思っている人はいるかもしれないけど、実際に福島の警戒区域に入る人を撮るわけにいかない。そんな人を見つけるのはまず無理だろうというのが、まずひとつです。もうひとつは、ドキュメタリーをずっとやってきたので、今回もドキュメタリーで、ということを普通に考えると思うのでしょうけど、ドキュメタリーだから撮れることや面白いこともあると思うのですけども、やっぱりドキュメタリーでは撮れないというものがあることも、自分で撮ってきているなかで実感している。それぞれ理由はあるのですけども、何故撮れないかというのは、いろいろなパターンがあって、一概には言えないのですけど、ドキュメタリーで僕が撮りたいような状況を作ることまではできても、世に出すことはできないだろうなと、自分のなかで思ったので、ドキュメタリーではなく、フィクションで撮ろうと思ったわけです。

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© 2014『家路』製作委員会

『家路』

2014年3月1日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

出演:松山ケンイチ、田中裕子、安藤サクラ、山中崇、田中要次、光石研、石橋蓮司 内野聖陽
監督:久保田直
脚本:青木研次
企画協力:是枝裕和、諏訪敦彦

主題歌:Salyu「アイニユケル」(作詞・作曲・編曲:小林武史/TOY’S FACTORY)
音楽:加古隆

製作:『家路』製作委員会
企画・制作プロダクション:ソリッドジャム
配給:ビターズ・エンド
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