UNZIP

Interview

『カラカラ』
クロード・ガニオン監督 インタビュー

interview & photo : yuki takeuchi

—この映画はピエールと純子が出会うことから、物語が始まります。人と人、人と社会、人と文化という「対比」が描かれはじめますが、ピエールはそれら、もしくは自身の心の声と対話することで次第に「調和」変わっていきます。

そのアイデアはありましたが、ふたりだけなので心配はありました。ポスターを見て、だいだいの内容がわかるような映画は好きじゃありません。ふたりが主人公だけど、ラブストーリーではない。僕は一番心配していたのは、次のシーンで何をするか、それが分かってしまうこと。それでは、つまらない映画になってしまう。だから僕の仕事は、今度はどこ行くか、そのときに、みんなが向こうに行くと思うなら別の方向を選ぶ、そういうこと。そして、ユーモアも非常に大切でした。ユーモアを入れたかったのは、まじめなトピックになってしまうから。哲学とか文化とか真面目すぎると、つまらなくなってくる。そういう映画は撮りたくない。それは自分が映画人として一番大事にしていることかもしれない。

—沖縄の自然が描写されますが、わたしたちがよく知るような華やかなリゾート地のような風景ではなく、とても静かで、穏やかな風景が多くでてきます。

ピエールだったら、どんなところに行きたいかを考えました。地図を見ていて、伊是名島(いぜな)や伊平屋(いへや)島は田舎で、だれもいないところだとは分かっていました。僕の場合、シナリオを書くときは、キャラクターもそうだけれども、ロケーションを見つけないと映画になりません。このシーンはこういう場所だからこうなるとか、こっちから撮れるといった具合に、僕の映画でロケーションは非常に大切です。ロケーションを見つけないとシナリオが書けない。20ページくらい書いたら、すぐにロケハンに出かけました。地図でいろいろ検討をつけて、もちろんグーグルマップでも探して、だれもいないことがすぐ分かるので(笑)、すぐにひとりで探しにいきました。

自然は非常に人生のなかで大切なものです。東京に住んでいたら、たまにはそういうところに行かないとだめだと思います。そんなに時間かからないですし。静かな自然のなかへ。これは”ライフ・シークレット”だと思います。忘れてはいけないものだと思うから、見せたかった。普通のリゾートは興味ないし、たぶんピエールもそうだったと思う。素敵な場所を見せたいとかではなく、彼からはじまる、こんなところにいるとこうなるといったことを…。

—途中で登場する、明美のおばあちゃんはとても素敵な雰囲気の方でした。プロではなく、素人の方とのことですが特別な演出などはされるのですか。

『ケニー』のときからそうですが、僕は以前からプロと素人の方を両方使ってきました。もちろん、あのシーンは工藤さんの素晴らしい演技がなかったら出来なかったと思います。それでも工藤さんの背後から助監督がスケッチブックでサインを出したりはしましたが、ほんとうにおばあちゃんは素晴らしい演技をしてくれました。もちろん編集でちょっと手伝いましたが、とても自然体でした。

—印象的だったがピエールが芭蕉布工房を訪ねていくシーンです。音楽が鳴り始め、登場人物の動き、工房や自然の音、ピエールの心の声といったものが次第にひとつの調和をみせるシークエンスはとても美しかったです。

そこは、僕も好きなシーンです。平良敏子さんと会ったときに、出来れば敏子さんを撮りたいと思いました。ただ、これはドキュメンタリーではないので、フィクションをどう入れたらいいか考えました。もちろん、平良敏子さんのやってきたことなどは本当に素晴らしい。85歳でもまだ仕事があるということは素晴らしいことです。社会のなかで問題だと思うことに、歳を取るとだんだん自分の場所がなくなってしまうということがあります。65や70で、人生の意味がなくなってしまう、と思ってしまうこと。なぜか社会のなかで場所がない。でも、沖縄ではみんないつも年上の人に相談し、敬います。これは非常に大切なことです。敏子さんはそのシンボルになってくる。若い人と歳を取った人との間で、ピエールは新しいことを見つけます。

スタッフはなかなか分かりづらいところもあったみたいですけどね(笑)。撮り方から何をしたいのかなど。しかし、1ヶ月前に試写を観てもらったときに分かったみたいですけど、僕の中では、はじめからはっきり見えていました。

自分の映画のなかで何か決めたくないし、自分の思いを映画の中では言いたくはありません。僕の映画は鏡みたいものです。見てきたことを見せたいだけです。どこに行ってもいい部分も悪い部分もあります。

—監督の映画はつよいメッセージがあるわけではないけども、小さいつぼみのようなものが、たくさんあるように思えます。

そうです。自分で観て、考えてもらえたらと思います。


© KARAKARA PARTNERS & ZUNO FILMS

『カラカラ』

1月19日(土)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー!

監督・脚本:クロード・ガニオン
出演:ガブリエル・アルカン、工藤夕貴、富田めぐみ、あったゆういち
製作:『カラカラ』製作委員会
配給:ククルビジョン、ビターズ・エンド
日本・カナダ合作/104分

オフィシャル・サイト

レビューを読む

Related Items

クロード・ガニオン 監督作品

窯焚 KAMATAKI
Revival Blues
Keiko