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Interview

『夏の終り』
熊切和嘉 監督 インタビュー

interview & photo : yuki takeuchi

型染めは、会話のやり取り以上に物語れるのではないか

— その満島さんと共演された、小林薫さん、綾野剛さんも本当に素晴らしく、原作を読み返してみると、あのふたりの顔しか浮かばないくらいに役柄にぴったりだったと思います。お二人とはどのようなお話をされましたか?

小林薫さんは二回目なので、「それをもうちょっと中途半端な体勢でやってくれませんか」「立ち止まる位置を中途半端にしてもらえますか」など、そういう細かな具体を言うと結構ねらいが伝わり、「監督。そういう情けないの、好きだねえ」とわりと喜んでやってくれました。

— 確かに『海炭市叙景』でも、似たような少し情けないような役柄でしたね。

2回目なので「ホント情けない男、好きだねえ」言いつつ呆れながらもやってくれるみたいな(笑)綾野君は初めてで、前のめりなぐらいなアツい人なので、この役に合っていたと思います。知子と慎吾のふたりの関係が出来ているなかに入り込んでいく役なので、「もっとこう出来ますよ」「こうにも出来ますよ」というのを見せてもらって、その中から選んだ感じですね。

— デビュ—作の『鬼畜大宴会』のころから観させていただいているのですが、ちょうど10年くらい前の『揮発性の女』や『ノン子36歳』ではじめて女性をメインに据えて描いたことや、『海炭市叙景』で派手さを抑えて静謐とも思える方法で物語を捉えようとしたことは、監督自身のターニングポイントでもあり、その影響はこの作品にも引き継がれているかと思うのですが、監督にとって女性を描きはじめたきっかけは?

どちらかと言うとそれまで自主映画も含めて僕は自分に近いというか、まあ、そういうものじゃないですか(笑)だいだい鬱屈した男ばかり描いていて、どこかでやっぱり女は描けないのではないかというコンプレックスがありました。『揮発性の女』のときは、“ラブコレクション”という企画で、女が主役でエロスがあってというものだったのですけど、なんと言うか、あの頃は若い女性は信用できなかったんです(笑)若い女の人とか、いわゆるヒロイン的なひとに馬鹿にされている感じがするというか(笑)

— 同年代の女性に…(笑)。

ヤバいですよね(笑)。影でバカにされてるんじゃないかって気がしちゃって。そういう感じがあったんです(笑)

— ちょっと女性不信な感じですか(笑)

でも、未亡人だったら全面的に信用できちゃうというのがあったので、ああいうキャラクターが出来たのですけどね。『ノン子』もだいぶ近くて、その延長線です。だんだん年齢がさがってますよね(笑)

— (笑)。

幅が広がってきたというか(笑)

— 実際、知子という人物を作り出していくなかで、その女性観が変わっていくみたいなことなどありましたか。

たぶん、いろいろ信用できるところも、信用できないところもひっくるめて受け入れられる感じは、なんとなくあるというか…。その実際にいたら、大変で仕事にならないですけど、でも、そういうことを全て取っ払って良いのであれば、全て自分の我を捨てて、こういうひとに振り回されてずっと優しくするというのをやってみたいというのはありますね。

— まさしく慎吾のような…。

狡いですけどね、慎吾は(笑)。ずっと、このひとに美味しい料理を食べさせてあげたいとか、そういうものだけでいく喜びもあるのだろうな、というのは最近思いますね。知子に関しては、分からないところもひっくるめて、つかめたのかな、いう感じですかね。

— また、知子にとって型染めというのは、単なる生活のための仕事だけではないように感じましたが…。

仕事ではあるけど、自己表現ですよね。酔っぱらって慎吾に心情を吐露するシーンがありますけど、自分で作りたいのに巧くいかないという。映画のうえでは会話でやり取りしている以上に、知子が作っているものが無意識に彼女の心情を表していたら面白いだろうなという気はしましたね。ある種のアクションになればいいなと思いました。

— 確かにアクションということで言えば、作業する手元のショットも丁寧に撮られていて「作る」ということにも焦点が当てられていたなという気がします。

そうですね。実は原作ではそんなに細かくは書かれていないのですが、知子を描くうえで、あそこをちゃんと見せないと、ただのだらしない女性に見えてしまうという懸念もあったし、単純に型染めというもの調べてみるといろいろ面白かったのです。作業工程も面白かったし、会話のやり取り以上に物語れるのではないかなと。

— 知子の表現者としての部分に監督自身も感じるところはありましたか?

それはありましたね。なんというか、どんなに私生活がだらしなくなっても、仕事の机だけはきれいにするみたいな(笑)


©2012年映画『夏の終り』製作委員会

『夏の終り』

8月31日(土)有楽町スバル座 ほか全国ロードショー

出演: 満島ひかり  綾野剛 /小林薫
監督:熊切和嘉 
脚本:宇治田隆史 
原作:「夏の終り」瀬戸内寂聴(新潮文庫刊)
上映時間:114分
配給:クロックワークス

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