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『嘆きのピエタ』

松江哲明さん トークショー

text & photo : yuki takeuchi

2013年6月29日(土)にキム・ギドク監督『嘆きのピエタ』の大ヒットを記念して、渋谷Bunkamura ル・シネマにて最新作『フラッシュバックメモリーズ3D』や『ライブテープ』で注目される映画監督の松江哲明さんを迎えてトークエベントが行われた。上映前のトークだったこともあり、作品の細かい内容にふれることはなかったが、キム・キドクの監督としての素晴らしさや、一連の作品の見所や映画に対しての思いなど、熱い内容となり会場を沸かせた。

『嘆きのピエタ』レビューはこちら

松江さんは、キム・ギドク監督の全作品を観ており、初めてキム・ギドク作品を観たときの衝撃を述べるともに、前作『アリラン』(※レビューはこちら)から一転、本作『嘆きのピエタ』でキム・ギドクは復活したと語る。そして、キム・ギドク作品を「泥臭い感じの韓国映画」だと表わし、『シュリ』の大ヒット以降のハリウッド映画にも負けない、日本映画を凌駕している世界レベルの韓国映画のなかにあって、「そういういった洗練されたものではなかったために、当時韓国で人気がなかったというのがすごく分かる」とも言い、『悪い男』やその前の海外で賞をとっていない頃の作品も是非観てほしいと薦める。また、キム・ギドク作品を「韓国らしいというより、韓国人らしい」とも表わし「ものすごく血にこだわる」「常に死を意識している登場人物」「暴力でなにかを解決する」「水辺の生活」などという作品に共通するキーワードも挙げて、過去作品も含めて最も「惹かれる、好きなところは、唖然とするようなラスト」だと言い、「ラストシーンの説得力がすごい、と同時に呆れ返るような、そういう部分もある」「ときには笑ってしまうようなときもある。そこが堪らない」のだと述べた。

映像で説得させるというチカラに関しては「すごくセリフが少ないので、観る側を試す。説明過多なハリウッド映画や日本映画と違って、本当に登場人物が何を考えているかわからない。そこに対して、観ている側の人たちも、気持ちが分かるか分からないか強要してくる映画」ではあるが、「それが最後まで観たときに、“ああ、なるほど、そういうことか”と伝わる人には、ガツン!と来てしまう」と述べる。

本作が韓国で大ヒットしたことに話が及ぶと「監督の作品を観ていると、映画は<ヒットする、ヒットしない><成功作、失敗作>というところで観てしまうとことをつまらないなと思わせる」と言い、キム・ギドクの作品は「ヘンな映画だけど、すごく印象に残る」「また、この作品は好きだということ(豊かさ)もあるので、キム・ギドク作品を観続ける面白さがある。というと『アリラン』さえも愛おしい。実にヘンな映画なので観てほしい」と笑みをもらす。また、キム・ギドク監督の作品を見続けることは、映画を観る面白さなのだとも述べる。

また、本作では照明、撮影のスタッフに学生を起用し、最近は若い人を育てていることにも注目し賞賛する。松江さん自身が昨年公開の韓国映画でベストだと挙げる『高地戦』や同じく昨年公開の『豊山犬(ぷさんけ)』もキム・ギドク監督のお弟子さんの映画であると説明し、キム・ギドクとは違うフィールドでも娯楽作品や大作映画を作っていくことができるように育てていることが素晴らしいと言う。また、本作は「(今までと)表現のコアな部分は変わっていない」にも関わらず、若手の起用によって「見え方がかわってくる」とし、それはデジタルビデオでの撮影や編集のリズム感の良さにも表れており「風通しがいい」と述べた。『嘆きピエタ』がヒットした理由はそこにあるのではとも語る。同時に今村昌平監督の『復讐するは我にあり』を思い返したとも言い、本作と同じように、劇映画を離れドキュメンタリーの制作が続いた今村監督が『復讐〜』を制作した際に編集を担当した浦岡敬一さんからのアドバイスを採用したというエピソードを披露した。つづけて、本作に限らず全作品と通して撮影期間がとても短く、本作ではたった11日間であったことを挙げ「ドキュメンタリー的に、なかいる人のテンションを捕まえている撮り方」だと言い「役者が、その気持ちになっているかという方が、大きい」「だから早い、長い必要がない。そこは面白い」とも述べる。

再び、ラストシーンについて話が及ぶと「今回の映画も皆さんどう見られるのか、どんな雰囲気になるのか気になる」と話しつつも「ただ口は開きますよ、唖然としますよ」「でも、これがキム・ギドク作品の気持ちいいところ。是非そこは楽しみに観てください」と力強く述べる。

最後に、劇場用パンフレットの記載されている岩井志麻子さんの文章を「パンフレットだから書ける文章。映画を観たお客さんだから、この言葉の意味が分かると思い、書き手が明らかに気持ちを込めて書いている文章」と絶賛し、観賞後には是非読んでほしいと加えた。そして「良い映画は、つまるところそこだと思うのです。観た人が自分のことを語りたくなるというか、あそこが良かった、これが良かったではなくて、観た人が自分の人生と重ねて、なんかこんなところまで話しちゃったという…」「デートで映画観るってつまりそこで、好きな人と見て、自分のことを知ってもらうという。それがいま(映画は)面白い、つまらないとか時間つぶしになっちゃっている」と言い、「『嘆きのピエタ』はえげつないし、きつい場面もあるけれども、これはデートなどで観るとすごくお互いを確認できる。それが良い映画」と締めくくった。

『嘆きのピエタ』
6月15日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開
公式サイト:http://nagekinopieta.com/

『嘆きのピエタ』のレビューはこちら


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『嘆きのピエタ』
(原題:Pieta)

6月15日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開

(韓国 / 2012 年 / 104分 / カラー / 原題:피에타 / 英題:Pieta)

監督:キム・ギドク
出演:チョ・ミンス、イ・ジョンジン

提供:キングレコード、クレストインターナショナル
配給:クレストインターナショナル

オフィシャル・サイト

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