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『もらとりあむタマ子』公開記念トークイベント
「タマ子の魅力を語る!」
濱野智史 × 向井康介 × 山下敦弘(MC:森直人)
11月15日 / 新宿・Naked Loft

text & photo : yuki takeuchi

主演・前田敦子、監督・山下敦弘、主題歌・星野源のコラボレーションによって生まれた『もらとりあむタマ子』。11月16日(土)本作の公開を記念してトークイベントが行われ、AKB48とそのセンターに位置した前田敦子を分析し読み解いた「前田敦子はキリストを超えた」の著者であり批評家である濱野智史さん、山下敦弘監督、監督と長年コンビを組む脚本家の向井康介さん、そしてイベントMCに映画評論家・森直人さんが登壇した。『もらとりあむタマ子』の誕生から撮影秘話、AKB48時代とその後の“アイドル・前田敦子”、そして、これからの“女優・前田敦子”を語り合いながらも、笑いの絶えない内容に会場は多いに盛上がった。

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STORY
東京の大学を卒業したものの就職もせず、父がひとり暮らしをする甲府の実家に帰省してきたタマ子、23才。寝て、起きて、マンガを読む。食事の支度も自分の洗濯物もすべて父親まかせ。近所の中学生には同情され、地元に帰省してきた同級生ともうまく交流できない。「就職活動くらいしろ」と父親にさとされれば、逆ギレして口論がはじまる。テレビにむけて悪態をつく…。そんなぐうたらダメ女子全開、絶賛モラトリアム期間中のタマ子が父親とすごす1年間を秋から夏にかけて描く。果たしてタマ子は自立できるのか??

すごく稀な才能というか、そういう気はしてる

はじめに、山下監督は本作のきっかけを「最初はあっちゃんと子供たちみたい感じのテーマで考えたんですよ。僕ら(監督と向井さん)は『グーニーズ』とか大好きなので途中から冒険ものに切り替えれないかなと考えていた(笑)」と説明。タマ子というキャラクターに関しては、『苦役列車』撮影時の前田(敦子)さんの現場でのたたずまいが「何を考えているかわからない猫みたいな子だなと思って。その延長で、タマ子と言うか、不機嫌な、媚びない感じは生まれたんだと思います」。また本作は、山下・向井コンビで生まれた初期のダメ男三部作(『どんてん生活』『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』)に通じるところがあると森さんが言うと、山下監督は「久しぶりのオリジナルということもあると思うのだけども、資質的には変わってないのかもしれない」「10数年、変わろうと言いながらやって来たんですけどね(笑)」と言い、向井さんは「これを書いているときは面白かったですしね。久しぶりに2人で脚本を直していたときも笑っていた気がしますね。『マイ・バック・ページ』とか笑いとかないですからね(笑)」。また、『なまいきシャルロット』をベースにしているということに対しては「そもそも向井と知り合ったとき、シャルロット・ゲンズブールで盛り上がったクチなんですよ、10代の頃。オレの方がシャルロットのこと好きや、いやいやオレの方が。オレはSCREENの付録も持っているぜみたいな(笑)」「そいうことがあってからスタートしていたので、話をしていくと市川準監督の『BU・SU』だったり『つぐみ』だったり、相米(慎二)さんの『お引越し』だったり。いわゆるはぐれ女子というか、メインのグループからちょっと距離を置いている女の子みたいな子が好きなんだろうなみたいな方向性になる」と山下監督が語ると、向井さんは「映画的に思っていたんでしょうね、そういうキャラクターがね。」と補足。「それを僕ら的に作るとこうなる」と山下監督。

濱野さんは、試写でも笑いが起こっていたことを述べ「作っていて楽しかっただろうなということが、すごく伝わってきた。映画でこんなにハッピーになることはあまりないので、すごく印象に残った」。また「あっちゃんらしい魅力を引き出してくれている。大卒で実家に帰省して、まさにモラトリアムという設定と、現実にグループを卒業して以降のあっちゃんを投影して観てしまう」と実際にグループ在籍時代の過酷さを知っているだけに、リラックスしている前田敦子がとても新鮮なのだと言う。「ある種、全然女の子らしくないという状況で、それが実際、好意を持って言っているのですけど(笑)あっちゃんがインタビューで、“もしAKB48に入っていなかったら何もしていなかった”、もしくは“大学も行っていないと思います”と言っていたんです。あの子はいい意味で“なにもない”って感じの子なんですよ、いい意味で(笑)」と語ると、山下監督も同意し「あっちゃんを語ろうとすると、ヘタすると貶しているようになってしまうんです(笑)」「向井も、彼女はからっぽなかんじとか、入れ物に例えたりするんですけど、それはいい意味なんですよ」と述べる。濱野さんは「普通はいい意味に聞こえないけど、ぽかんとしているような魅力がすごく引き出せている。こういう映画じゃないと引き出せない訳です」「いきなりAKB論を全開にしちゃうと話が明後日の方向にいっちゃうんですけど(笑)スーパーアイドルグループのセンターという、まさに空っぽの入れ物じゃなきゃいけない場所におかれていた子だからこそ、撮れた映画だとも思う」と言う。

山下監督は、先日観たAKBのドキュメンタリー(『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』)にとても心が打たれと言うと、登壇者たちもこぞって名作だと同意。そして、そのドキュメンタリーの監督である高橋栄樹さんが前田敦子さんの印象を「自我が薄い」と言っていたと述べ、実際にドキュメンタリー映像のなかでも前田さんは探さないと見つけられない程の存在感なのだと説明。「たぶん、タマ子の魅力もそこなんしょうね。自我が薄いというか、自己主張がないんですよ。(タマ子は)すごくグータラなところを切り取っていますけど、本人としては無意識というか、自我が薄い感じに見えちゃう。それが、すごく稀な才能というか、そういう気はしてる」と述べた。


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© 2013『もらとりあむタマ子』製作委員会

『もらとりあむタマ子』

11/23(土・祝)より、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー!

MUSIC ON! TV + KING RECORDS Presents
出演:前田敦子、康すおん、伊東清矢、鈴木慶一、中村久美、富田靖子
監督:山下敦弘 脚本:向井康介
主題歌:星野 源 「季節」(SPEEDSTAR RECORDS)

配給:ビターズ・エンド
(2013/日本/78分/カラー/1:1.85/5.1ch)

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