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Jacques TATI

ジャック・タチ映画祭

text : yuki takeuchi

いつの時代も愛されるジャック・タチ。タチを研究した書籍もたくさん出ている程。もっともっと詳しく知りたい人は是非そちらも当たってみて下さい。ここからはその触りとなるような簡単なお話をいくつか…

飽くなき創作意欲、最新技術やサントラ、音響へのこだわり

ジャック・タチの作品は、ユロ氏の寡黙なキャラクターからサイレント期の喜劇のような懐かしさを感じさせ、また、“おしゃれ”、“エスプリ”といった親しみやすい雰囲気も感じさせます。しかし、タチは、チャップリン、キートンなど偉大な喜劇役者・監督が築いた道筋に、新たな歴史を刻むべく、飽くなき挑戦を続けていました。それはユロ氏の爆発的な人気からくる周囲の期待を受けてなお、それに媚びることなく『プレイタイム』で“喜劇の民主主義”といった野心的な試みをしたことでも明らかです(それは当時広く受け入れられることはありませんでしたが)。タチ作品にはリマスターなどではなく、タチ自身の手による別ヴァージョンが存在するものがあります。それはタチが完成した作品にも納得せずシーンの追加、音響の差し替えなどを行ったためです。タチは、晩年の77年、セザール賞の授与の場で、短編の制作支援を訴えるといった意欲を見せていました。

「ぼくの伯父さん」~ジャック・タチ作品集トラフィック オリジナル・サウンドトラックまた、劇中の音響やサントラに対しても、タチは強いこだわり持っていました。『のんき大将』の郵便配達人が乗る自転車のカウベルの音、『ぼくの伯父さんの休暇』のユロ氏の車のエンジン音やホテルの扉が開閉する音、『プレイタイム』のモダンなソファから空気が漏れる音、『トラフィック』の車の騒音などたくさんの印象的な音が欠かせない要素して物語を特徴づけていました。音響の技術も当時の最新のものが用いられていたという話もあります。サントラもリラクシンなジャス、トイピアノ、ミゼットなど、一度聴いたら忘れられないような、素晴しい楽曲がたくさんあります。音楽を担当していたのは、どの作品も決して有名とは言えない音楽家だったのにも関わらず、一貫してタチらしさを感じさせるのは、彼の明確なビジョンがあったことにもよるのだと思います。

ジャック・タチが観た映画

ウディ・アレンのバナナハロルドとモード/少年は虹を渡るつねに新しい表現を模索していたタチだけあってか、あまり他の監督の作品に対しての言及することは少なかったようです。そのなかで、いくつかのインタビューではお気に入りの映画の名を挙げて言葉少なに語っています。喜劇俳優・監督のバスター・キートンはもちろんですが(タチは、チャップリンではなくキートンの系譜に並んでいます)、ジャン・ルノワールの『ピクニック』(36)にも影響を受けていると語っています。また、気に入った作品として『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』(71)のハル・アシュビーの諸作品を挙げ、ウディ・アレンの『バナナ』(71)に関しては、映画を観て珍しく笑ったと語っています。スタンリー・キューブリックの名前も挙げていますが、それはどちらかと言うと音響なども含めた常に新しい手法を模索していた作家としての共感だったのかもしれません。どれもタチ作品とは異なったテイストで、タチ作品の確固たるスタイルに明確な影響があったというほどのものではなかったかもしれませんが、彼が気に入った映画としてみると、タチ作品も見え方が変わってくるかもしれません。

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© Les Films de Mon Oncle - Specta Films C.E.P.E.C.

『ジャック・タチ映画祭』

4月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

配給:日本コロムビア/配給・宣伝協力:Playtime/提供:メダリオンメディア
後援:フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本/協力:ユニフランス・フィルムズ

オフィシャル・サイト

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