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Jacques TATI

ジャック・タチ映画祭

text : yuki takeuchi

ピエール・エテックスという男

ぼくの伯父さん ポスター『ぼくの伯父さん』のポスターって、とても素敵ですよね。これはピエール・エテックスという人物によるもの。とっても映画に詳しい人なら聞いたことがあるかもしれません。最近ではオタール・イオセリアー二の『汽車はふたたび故郷へ』(10)やアキ・カウリスマキの『ル・アーヴルの靴みがき』(11)に出演している俳優とも知られています。ピエール・エテックスは道化師などをしながら職を転々としてしましたが、『ぼくの伯父さんの休暇』を観て感銘を受け、タチの元に飛び込みました。『ぼくの伯父さん』では助監督を務め、タチ作品のポスターやノヴェライズのイラストなども担当した才人です。ピエール・エテックスは、のちにいくつかの映画にも出演し、また監督デビューも果たしたが、いま日本ではその作品はあまり観ることが出来る機会がありません…。

ジャック・タチの影響、そして…

タチが創り上げた世界はある意味ではあまりにも強烈なインパクトを残しました。タチの亡き後、その存在感にとって変わるような、彼の喜劇を刷新するような新しい流れはあまり生まれてこなかったかもしれません。しかし、彼を愛し、彼に影響を受けた映画監督はたくさんいます。当時からタチの良き理解者でもあったフランソワ・トリュフォーは自身の作品『家庭』(70)で、オマージュを捧げています。また、そこでは“ユロ氏”風の男まで登場し、公開当時本人なのかとの問い合わせもあったそうです。他にもタチ作品を思い起こさせるようなシーンがある映画はいくつもありますので、是非探してみて下さい。

数年前には『ムーンライズ・キングダム』などのウェス・アンダーソンが、日本の携帯会社のCMでジャック・タチにオマージュを捧げました。ユロ氏を思わせる帽子を被ったブラット・ピットが『ぼくの伯父さんの休暇』を思わせる浜辺で動き回り、また『のんき大将』で自転車の集団が登場するシーンも登場します。

イリュージョニスト2010年には、ジャック・タチが娘ソフィーのために残した幻のシナリオを、『ベルヴィル・ランデブー』のシルヴァン・ショメがアニメーションで蘇らせた『イリュージョニスト』が2010年の公開されました。タチに似た老年の手品師がある言葉が通じない少女との出会い、心を通わせる物語。タチらしい美しくちょっぴり寂しいフィナーレは文字通り魔法にかかたったような味わいを残します。また、日本ではまだあまり名が知られていませんが、イスラエル・ナザレ出身のエリア・スレイマンはタチと並べて語られることのある映画監督でもあります。と言っても、ユロ氏のような人物が出てくるわけでもなく、エスプリのきいたユーモアがある訳でもありません。しかし、監督自ら主演を果たし、もの言わぬその人物が不条理な社会状況で、紙一重のようなナンセンスでシュールな笑いを繰り広げます。そういう意味でタチのよう、キートンンのようだとも言えます。2002年の『D.I.』では世界から驚きをもって迎えられました。そして、12年のオムニバス映画『セブン・デイズ・イン・ハバナ』では、そんな評判を受けてか、これまで以上にタチ作品を思わせる、独特な一編を作り上げています。

ジャック・タチの世界はとても奥が深い。簡単には語り尽くせないほど、見所や裏話など探し出せばキリがないほどです。世界中から愛されるゆえ、書籍やネットなどたくさんの場所で語られているので、詳しく知りたくなったら是非当たってみてください。また、タチ作品を見返せば、新しい発見が見つかるかも…。とは言ってもなにも難しいことを考えなくても、とても楽しめます。観ているあいだは、楽しい気持ちになって、クスクス笑いがたえません。ユロ氏が巻き起こす調子外れなドタバタに、ときにのんびり進んでいく時間に、焦らず、イライラせずに観て下さい、きっと幸せな気持ちにさせてくれるはずです。

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© Les Films de Mon Oncle - Specta Films C.E.P.E.C.

『ジャック・タチ映画祭』

4月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

配給:日本コロムビア/配給・宣伝協力:Playtime/提供:メダリオンメディア
後援:フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本/協力:ユニフランス・フィルムズ

オフィシャル・サイト

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