UNZIP

Report

「映画『鉄くず拾いの物語』を通して考える
「人権」とは」 監督来日記念 シンポジウム

ダニス・タノヴィッチ監督、
根本かおるさん、片柳真理さん
12月1日 / シネマート六本木

text & photo : yuki takeuchi

世界をよく見て、よく考え、そして理解し、どういうふうにしていきたいのかということを考えることが、まず大切

作中で主人公のナジフが戦争に行ったにも関わらず恩給をもらえてないという状況に関して、「ロマの人びとは高等教育を受けている人が多くないので、たとえそういう権利を持っていたとしても、その権利の行使をどうやって行政に求めたら良いのか知らない人が多い」とタノヴィッチ監督。また「恩給という問題については、個人的に強い思いがあります。たとえば、自分は戦争にも行きました。けれども恩給を受給する申請をしていません。自分も体も強く、まだ国のために働けるというふうに思っているからです」と語り、これから国を復興させることができる人びとに、国が恩給をどんどん出してしまったせいで彼らが働く意欲を失い、結果それが復興が遅れさせ、経済が復活しないひとつの理由になっているではないかと言う。そして「実際に戦争で傷ついた人以外には、5〜10年にわたって恩給を出すのではなく、もっと小額にして彼らが働けるようなシステムを導入すれば良かったのではないか」と述べる。また、このような内容はボスニアでは複雑さゆえに、すぐに口論になってしまい「母国で話すのには微妙な題材だったりするんです」と加えた。

ボスニアでも、コソボでも、紛争が終わって年月が過ぎていくうちに、次第に国際的なNGOや資金面での支援も減っていってしまう現状があり、社会の末端まで支援が届きづらくなる状況があるため、なかなか根気のいる活動だと片柳さんと根本さんは口を揃える。また、日本も含め貧困層の拡大ということについて「アメリカでもリーマンショック後に家を追い出されてトレーラーハウスのような場所で住まなくてはいけない。そんななかで子供が学校にも行けないというような問題がクローズアップされています。格差社会は日本に限ったことだけではなくて、アメリカやその他、ヨーロッパの国々でも深刻になっていることではないかと思います」と片柳さん。

鉄くず拾いの物語タノヴィッチ監督は日本に対して「システムがうまく機能していないと思えば、それを変えていける国だという印象を受けています。民主主義国家ですし、選挙権もあって、4年ごとに自分がそうおもえば世界を変えていくことだってできる。我々は世界をよく見て、よく考え、そして理解し、どういうふうにしていきたいのかということを考えることが、まず大切だと思います。ボスニアや日本、どの国でもいいのですが、それぞれに政府があり、その他のシステムや政府の方が良いのではと思えば、それを叶えてくれる政党に1票投じるなりと、人というのは、やはり市民としての、国民としての責任をきっちりと果たすべきだと思っています」と言う。監督自身が育った80年代は未来が明るくなるような気配があったものの「ある日起きたら手に手榴弾という戦争、紛争ということが起きたりした訳です。そのなかで思うのが、両親が持っていた価値観といったもの、それは我々は違う戦い方で守っていかなくてはいけないのではないかなということ」とも述べる。そして「憲法、権利というは定まっているというだけではなく、変えなくてはいけない。変えた方が良いと思えば、変えればいいのです」「自分もそういう思いで生きています。そのなかで世界をより良いところにしたいのであれば、テレビとかばっかり見ているのではなく、実際の現実、社会、そういうったものに目を向けて、そして、考えていくべきなのではないか。本当に大きな問題が起き前に、我々がやるべきことをできればいいなと心から思います」と語る。

「社会というはマイノリティの立場から見たときに、急に全然違う風景に見える」と根本さん。そして「一見、豊かに見える社会も全然違って見える。あるいは、そのマジョリティのために作られた制度というものがマイノリティを救うようなかたちには、必ずしも設計されていない。その綻びがいっぺんに見えてくるところがある訳です。この映画が指し示してくれたものは、マイノリティに優しい社会にどうしてならないのかということ」「私たち自身の社会のなかのマイノリティの置かれている立場に目を向ける良いきっかけのではないかなと思います」と語る。

片柳さんはボスニアの問題も翻ってみれば日本も同じ問題も抱えていると言い「お金が価値基準になる社会を、私たちが変えていかなければならないというメッセージを監督が送っているのだろうと思います」と述べる。そして「この映画のメッセージを、この日本の社会を考えるうえでも活かしていければと思います」また、「この映画でボスニア・ヘルツェコビナにも興味を持っていただける人が増えたらいいなと思います」と語る。

最後に、タノヴィッチ監督は「この映画にインスピレーションを受けて、また映画を作り続けたいと思っています」「この映画が、根本さん片柳さんのお二人が話してくださったように、なにか日本になぞらえて、みなさまがいろいろ考えるきっかけになってくれれば、それが私にとっても最上の褒め言葉です」と締めくくった。

『鉄くず拾いの物語』は、2014年1月11日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開ロードショー!

オフィシャル・サイトはこちら


『鉄くず拾いの物語』
(原題:An Episode in the Life of an Iron Picker)

2014年1月11日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開ロードショー! 

監督・脚本:ダニス・タノヴィッチ
出演:セナダ・アリマノヴィッチ、ナジフ・ムジチ

(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ=フランス=スロベニア/2013年/74分/カラー/ビスタサイズ)

配給:ビターズ・エンド

オフィシャル・サイト

レビューを読む

Related Items