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『共喰い』公開記念
青山真治監督 × 劇作家・宮沢章夫 トークショー
9月2日 / 代官山 蔦屋

text & photo : yuki takeuchi

2013年9月2日(月)、『共喰い』の公開を記念して、青山真治監督と、監督と親交の深い劇作家・宮沢章夫さんによるトークショーが行われた。劇作家である宮沢さんが観た本作の素晴らしさから、青山監督のこれまでの作品と『共喰い』の関わり、そしてどのような意図をもって本作を生み出したかなど、劇場公開を前にとても参考になる、内容の濃いトークが繰り広げられた。

INTRODUCTION
第146回芥川賞受賞作・田中慎弥の同名小説を、日本を代表する監督・青山真治(『EUREKA ユリイカ』『東京公園』)が映画化した『共喰い』。本作は、昭和最後の夏の山口県下関市を舞台にした、暴力的な性癖がある父をもった17歳の男子高校生の濃密な血と性の物語。人間の欲をあぶりだし、心の奥底に潜む闇を映す濃厚で豊穣な物語に、映画版オリジナルのエンディングが用意されており、原作者の田中慎弥は完成品を観て「ああ、やられた」とコメント。いわゆる「原作ものの映画化」とは一線を画す、奇跡のコラボレーションが実現し、先日行われたロカルノ国際映画祭にて、「YOUTH JURY AWARD最優秀作品賞」と、「ボッカリーノ賞最優秀監督賞」をW受賞した。

アートフィルムではなく、ジャンル映画、そしてエンターテイメントへ。

宮沢さんは、はじめに『共喰い』を観てとても感銘を受けたと言い、インサートされる情景描写、川の景色によって内的なものも含めた「その土地に住む人たちの様々なものが流れ込んでくる。それが映像化されたときにとても美しく見える。本当はそうではないのかもしれないけども、極めてきれいに見えるということが一番印象に残った」と語る。


青山真治監督

青山監督は、昭和の川にはゴミや生き物がともに存在していたと言い、また映画ではそいうい描写になっていることを説明すると「汚いものとして映し出すのではなく、ある種の郷愁をもって眺めてしまっているのかもしれないので、それが実は宮沢さんの言う美しさに繋がっているのかもしれないなと思う」と答える。また、『共喰い』の中で重要な要素となるこの川については、「川底が見えるくらい水が引いているときは、本当に川底も見えてゴミも曝け出しているけど、満潮になると橋のぎりぎりまで水が上がってきて、なにもかも飲み込んじゃう感じがある」と干満の激しさにその川の面白さがあると言う。宮沢さんが「それは人物にもはっきり影響している」と加えると、「それが目に見えて出てくるというのが、すごくする場所だった」「それが映画の中にくっきり刻まれているのではないか」と青山監督は述べる。

宮沢さんが、青山監督作品は『Helpless』や『サッドヴァケイション』など「北九州サーガ」と呼ばれる、中上健次や田中慎弥に通じる土着的な系譜をもつ作品がある一方で、『東京公園』などに見られる都市性を感じる作品もあることを説明し、その違いついて伺うと、「はじめから、不可逆的に進行している時間の中で作ってきている気がする」「やはり“昭和を知っている自分がこの映画を作っている”といことがはっきり刻印されている気がする」と述べるとともに、「『東京公園』『レイクサイド・マーダーケース』などと「北九州サーガ」などに区分けはほとんどなく、時間の進行とともに変わっていくもの。興味のもっていくところが変わっていっている。僕のなかでは『サッドヴァケーション』『東京公園』『共喰い』が一番近いです(似ている)」と言い、「自分の身体と映画の内容が共振していく。そのときどきの自分のリアルみたいなものを反映させている。そのことが一番映画を色分けしていくときにはっきりしている」と説明する。また先日訪れたロカルノ映画祭で批評家に自身の作品を「アートハウスフィルム」だと評された際のエピソードと語り「作っているものは、アートハウスフィルムだと思われがちだが、決してそうではなくて、ジャンル映画に違いないはずだ、少なくともそう考えながら作っているし、そうでありたいと思っている」と言う。また本作の脚本家である荒井晴彦とは「日活ロマンポルノ」という言葉を、合い言葉にしてきたと言い、それは明からにジャンル映画、プログラムピクチャーを目指していた証しなのだと述べた。


宮沢章夫さん

宮沢さんは、小説や文学が映画化されると「文芸作品」などと名づけられるが、この『共喰い』は「文芸作品」なのではなく「ロマンポルノ」とだ言ったことがとても映画的だと言い、「小説を映画に置き換えたり、なぞったりというものではなく、極めて映画的なことをしようとしていると思うし、僕が観た感想では、極めて映画的な映画であると思った」と述べた。

青山監督は「映画的という言葉を使うとしたら、それはジャンルという言葉に置き換えることができると思うし、エンターテイメントになりうるということなんだと思う」と言い、ハリウッド映画などのような作品が存在するその一方で、「『共喰い』のような映画も、映画というエンターテイメントの一翼を担っているのだと考えてもらいたい」とも語る。そして最後に青山監督は、本作について「2012年の9月に菅田将暉という男の子が必至こいて生きたという、その身体がまざまざと写っているものになっていると観てもらえるのが一番嬉しい見られ方なんですよね」と締めくくった。

『共喰い』は、9月7日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー!

『共喰い』公式サイトはこちら


©田中慎弥/集英社・2013『共喰い』製作委員会

『共喰い』

9月7日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー!

出演 菅田将暉、木下美咲、篠原友希子、光石 研/田中裕子

監督 青山真治
原作 田中慎弥「共喰い」(集英社文庫刊)
脚本 荒井晴彦
プロデューサー:甲斐真樹
制作プロダクション スタイルジャム
制作 『共喰い』製作委員会
配給 ビターズ・エンド

2013/102分/カラー/日本/5.1ch/16:9

オフィシャル・サイト

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