[DISTANCE]

監督・脚本・編集:是枝裕和/撮影:山崎裕/出演:ARATA、伊勢谷友介、寺島進、夏川結衣、浅野忠信、りょう、遠藤憲一、中村梅雀、津田寛治/上映時間:132分/制作・配給:「ディスタンス」制作委員会/2001年日本

カルト集団「真理の箱舟」の信者が東京都の水道に新種のウイルスを混入させ、多数の被害者をだすという無差別殺人事件が起きた。その後5人の実行犯たちは教団の手で殺害され、教祖も自殺した。
それから3年目の夏---。山あいにある小さな駅に、加害者遺族である4人の仲間が集まった。毎年一度、灰がまかれた湖に集まり、供養をするのだ。桟橋に並び手を合わせる4人。そこには元信者の坂田がいた。林道に戻ると4人が乗ってきた車と坂田のバイクが盗まれていた。しかたなく実行犯たちが最後の時間を過ごしたロッジで一夜を過ごすことになるが…。


とにかく話題作であることは間違いない。試写会も長蛇の列で、舞台挨拶をみることのできない席までギッシリという状況だったのだ。
『幻の光』(95)、『ワンダフルライフ』(98)でも高い評価を受けていた是枝監督の最新作である本編は、ドキュメンタリーを演出してきた監督にとって本領発揮といっていいだろう。台詞が書き込まれていないシーンも多く、ほぼ全編手持ちカメラで撮影されており、人工照明も効果音楽も一切なしという徹底ぶりだ(ただし、『ブレアウィッチ・プロジェクト』『ジュリアン』などで酔った人は、確実に気持ちが悪くなるので注意)。
オウム真理教がおこしたサリン事件がモチーフであることは解説を読むまでもなくわかることだが、監督が「映画ディスタンスによせて」で述べている”私達(現代に生きる日本人)こそ加害者遺族である”という主張は、この映画をみる限りでは、感じ取ることができなかった(個人的にこの意見に賛成しかねるのは、オウムもサリン事件も”完全に理解できる不可解さ”であるからだ)。ただ、意図した「こちら側」と「あちら側」のディスタンス(距離)は、「知っていること、知っていたこと」と錯覚させられるほどのリアル感があった。
いずれにせよ、引き込まれていく事は間違いないので「最近はやりの手法…」などという評論家のような視点は捨てておいた方が得策であろう。

Text : ogura karuvi

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