[ギフト]

監督:サム・ライミ/共同脚本:ビリー・ボブ・ソーントン/出演:ケイト・ブランシェット、キアヌ・リーヴス、ヒラリー・スワンク、ジョヴァンニ・リビシー、グレッグ・キニア、ケイティ・ホームズ、キム・ディケンズ、ゲイリー・コール 他 (2000年/アメリカ/1時間52分/配給:アミューズピクチャーズ) 6月16日より渋谷東急、銀座東劇ほかロードショー公開
:『ギフト』オフィシャルサイト

舞台はアメリカ南部、ジョージア州の小さな町。
2年前に夫を亡くしたアニー(ケイト・ブランシェット)は、3人の子供を育ててゆくために、近隣の住民相手に占い師をやって暮らしていた。用いるのは古ぼけたESPカード。タロットのようにテーブルに並べるのだが、これが彼女の“霊感”の触媒となっているらしい。相談に来る近所の人間も、夫ドニー(キアヌ・リーヴス)の暴力に苦しむヴァレリー(ヒラリー・スワンク)や、幼児期のトラウマからか精神が不安定なガススタンドの従業員バディ(ジョヴァンニ・リビシー)などなど。占いと言うより愚痴聞きかカウンセリングのような仕事である。アニーの祖母は「その力は神に与えられた贈り物=ギフトなのだから、大切にしなさい」と言っていたものだった。だが夫の事故の時も不吉な予感がしながらも止められなかったし、息子は父を亡くしてから学校で荒れているらしい。担任のウェイン先生(グレッグ・キニア)にはカウンセリングを勧められる始末だ。そんな時、ウェインの婚約者で地元の名士キング氏の娘、ジェシカ(ケイティ・ホームズ)が行方不明になる。捜査に行き詰まった警察は、霊能力をバカにしながらも、アニーに協力を請う。やがてアニーの霊視が手がかりとなって、無惨な姿のジェシカが発見され、アニーを魔女呼ばわりして嫌がらせを続けていたドニーが逮捕される。参考人として出廷した裁判ではブードゥー教呼ばわりされ、屈辱を味わったアニーだったが、再び霊感が何かを告げる------真犯人は別 にいる? それとも……。

『エリザベス』のケイト・ブランシェットに『ボーズ・ドント・クライ』のヒラリー・スワンク、『マトリックス』のキアヌ・リーヴスなどなど、アカデミー賞クラスの大スターをズラリと揃えつつ、実に渋い筆致で描き出した超常ミステリーである。オープニングのイメージ------南部特有の、水面 から根を露出させた木々が独特の生態系を成す湖沼地帯が、映画の基調イメージになっているのだが、ブードゥ教など古い因習も微かに残る南部の町の雰囲気の描写 は、もう少し欲しかったかもしれない。さて、そこで起こる大富豪の娘の失踪事件→実は殺人事件ってな古色蒼然とした筋立てを律儀に追いながらも、抑制の効いたホラーな描写 が要所要所に配されているのは、『死霊のはらわた』『ダークマン』などホラー娯楽作を数多く手がけ、『シンプル・プラン』で心理描写 の巧みさを実証して見せた鬼才サム・ライミ監督ならではの味わい。誰もが怪しく思える登場人物配置によって意外な犯人に辿り着くまでのサスペンスは、コンパクトな推理劇としてもなかなかの手練れと言えるだろう。脚本は名優ビリー・ボブ・ソーントン(『シンプル・プラン』『Uターン』『狂っちゃいないぜ』などに出演、『スリング・ブレイド』でアカデミー脚本賞を受賞、監督作『すべての美しい馬』も近日公開)。本作は彼が無名時代に書いたものが元になっているとか。母子家庭の悩みや暴力夫、幼児の性的虐待などの社会問題を背景に折り込んであるのが実に今風なんだけど、結論として保守的な「二夫にまみえず」的貞女観が残る感じがするのは、観た人によっては異論が湧くかもね。

Text : 梶浦秀麿


ヒロインのアニーは、他人には見えないものが見え、聞こえないものが聞こえるという、特別な能力の持ち主。私は彼女が持つような、超常的な力に憧れる。けれど自分には霊感なんてないし、友人にもその手のヒトはいない。だからこの手の映画には期待してしまうのだ。

ストーリー自体は典型的なサスペンス・スリラー。バイオレンスと流血も相応に出てきて、お約束を守っている。中でも印象的なのは、アニーの葛藤を細かく描写するくだり。超常的な力を持つ、といっても、それは本人が望んだわけではない。勝手に発現してしまう力はアニーを苦しめ、孤独へと追い込んでいくのだ。

「なにかを得ることは、なにかを失うこと」
痛みを知るアニーの心に、私も共感してしまうのであった。

Text : Tomoyo Yoshida

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