[クレーヴの奥方]

監督・脚本・脚色:マノエル・ド・オリヴェイラ/撮影:エマニュエル・マシュエル/編集:ヴァレリー・ロワズルー/美術:アナ・ヴァシュ・ダ・シルヴァ/衣装:ジュディ・シュルーズバリ/製作:パウロ・ブランコ/キャスト:キアラ・マストロヤンニ、ペドロ・アブルニョーザ、アントワーヌ・シャペー、レオノール・シルヴェイラ、フランソワーズ・ファビアン、アニー・ロマン、ルイシュ・ミゲル・シントラ、スタニスラス・メラール、マリア・ジョアン・ピルシェ/配給・宣伝:アルシネテラン/1999年/ポルトガル=フランス=スペイン合作/107分
6/9より銀座テアトルシネマにて公開
:『クレーヴの奥方』オフィシャルサイト

ある演奏会のよる、カトリーヌ(キアラ・マストロヤンニ)は母親の友人から医者のクレーヴ伯(アントワーヌ・シャペー)を紹介される。フランソワ(スタニスラス・メラール)の求愛に応えられずにいたカトリーヌは、伯の強い求婚を受け入れやがて結婚する。 しかし、カトリーヌは夫に尊敬以上の愛情を持てずにいた。そんな時、彼女はロック歌手のペドロ・アブルニョーザ(本人)と知り合い、二人は惹かれあうのだが…。
カトリーヌ役のキアラ・マストロヤンニは、故マルチェッロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーヴの娘。96年に公開された「そして僕は恋をする」とは全く違った魅力で見事に主演をおさめ、大絶賛を浴びている。  監督は「アブラハム渓谷」「メフィストの誘い」で知られる、今年92歳(!)のマノエル・ド・オリヴェイラ。この作品で1999年カンヌ国際映画祭で審査員特別 賞を受賞した。リベラシオン紙で「オリヴェイラは、映画化に合う作品を魔法がかかったようにうまく選び、原作を吸収し、自分の世界にうまく溶け込ます驚くべき才能を持ち合わせている」と賞賛している。

 テーマは普遍的…という事だが、「夫以外の男性を愛してしまったら?」という悩みはもはや悩みでないといった現代の先進国に生きていると、いささか大袈裟に感じてしまうかも知れない。妻に愛する人がいると知って、夫は悲しみのあまり病死してしまうのだが、そのあたりもベースの物語りを知らないと(源氏物語でもあるまいに…)と違和感を覚える可能性も。ただし、この映画はストーリーを重視している映画ではないので、そのへんは個人の見解に任せたい。解説でも「…カンヌをはじめとする国際映画祭の常連となっているその驚異的な創作エネルギーは衰えることを知らず、1作ごとに創造性とみずみずしさを増していく感さえある…」とある通 り、感受性の若々しさと技術力の円熟がどんどん高まっていくような映像を堪能して欲しい。
物語を現代に置き換えたことによるリミックス感はちょっと気恥ずかしいが、この気品を味わうため、ぜひ御覧になることをお薦めする。

Text : ogura karuvi

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