[CLUB ファンダンゴ]

7月28日よりシネマスクエアとうきゅうにてロードショー

監督・脚本:マシアス・グラスナー/音楽:フェティシュ&マイスター/出演:ニコレット・クラビッツ、モーリッツ・ブライプトロイ、リッチー・ミューラー、III-ヤング・キム、ラース・ルドルフ、フォルカー・シュペングラー、コリーナ・ハルフォッヒ他(2000年/ドイツ/1時間31分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ/宣伝:リベロ+トライエム・ピクチャーズ)


「巨大な洗濯機の中で回転してる気分……」------美貌のシャーリー・マウス(N・クラビッツ)はベルリンのクラブでトんでいる。ヤクはやめたはずなんだけど、躁鬱の差が激しく、ハタから見てると狂ってるよう。だが業界ではこれはこれで当たり前。バージンは大昔に、身長159cmの癖にNBA目指してた高校のクラスメイトに捧げ、自分も背の低さを気にせずスーパーモデルを夢見て、はやン十年……一度雑誌の表紙に載ったくらいじゃ諦めきれない。恋人はドアマンからクラブのオーナーに成り上がったルポ(R・ミューラー)。結婚して子供を産んでくれっていつも迫るんだけど、シャーリーはまだ夢の途上なのだ。イカサマなモデル・エージェントに頼ってでもオーディションを受け続けるが、自分の夢がついに叶わないかもしれないと思うと苛立ち、ついルポにあたってしまう。彼女にベタ惚れなルポはルポで、厄介なトラブルを抱えていた。片腕のブルーノ(R・ルドルフ)が謎めいたドラッグ・ディ−ラー、デューク(コリーナ・ハルフォッヒ)とのヤクのヤバい取引で失敗したらしい。アキラ(III-ヤング・キム)というヤク中が絡んでいるようだが、ブツを取り返さないと殺される……。そのアキラの親友である盲目のDJサニー・サンシャイン(M・ブライプトロイ)は、ドラッグでハイになる連中にはもうウンザリしていたのだが、ひょんなことでそのトラブルにずっぽり巻き込まれてしまう。それもキレた女=シャーリーのせいだ。彼女がルポに買わせた赤のシトロエン------そのトランクにはヤクと大金が入っている。彼女は何も知らずにその車でルポを轢き、DJを乗っけて逃走する! 彼らの行き着く先は? 終盤でルポは言う------「親父曰く、ファンダンゴ(原意は「愚行、愚行じみたダンス」)ってのは------人生そのものだ」……。

最近のドイツ映画ってばキてるのが多い。『バンディッツ』に『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』、『ラン・ローラ・ラン』などなど、ポスト・タランティーノ系のアメリカン・ノワール映画の影響モロな秀作がポロポロあって、なかなか眼が離せないのだ。本家のスタイリッシュでスピーディな展開と比べてちょっと大陸的にもたつく感じも微笑ましいネオネオ・ジャーマン・シネマなんだけど、本作もそんな流れにあるノワールでコミックな(漫画っぽい)作品である。クラブ・カルチャーやファッション業界&ドラッグ・ビジネスを背景に、エキセントリックな女とワケあり男2人の渋い三角関係を描いてゆく。青いクラブ・フロア、ハレーションを起こすほどの真っ白なトイレ・スペース、メタリックなホーム・パーティの場面や真っ赤なシトロエンと、毒々しい原色を散りばめて展開するのだけど、若い闇雲なパワーを感じさせる反面、若干モタっとした重さがあるのには評価が割れそうな感じか。愛と野望をめぐる考察が行き着くのは、お決まりの結末なんだけど、はてさて、ここにジーンと来るかっていうと……。ま、定型のノワール物語の枠内での、映画技法の斬新なスタイルへのこだわりぶりを愉しむべきなのかもね。妙な日本風ホテルも出てくるので、その手のネタ好きも必見かな。あ、強烈なスキンヘッド女のキャラにも要注目。

ヒロインのシャーリーを演じるのは『バンディッツ』で生意気なベース、エンジェル役をやってたニコレット・クラビッツ。『バンディッツ』ではサントラも手がけていた。彼女のぶっ飛び演技がこの映画の基本トーンだ。でDJサンシャインを『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』『ラン・ローラ・ラン』『ルナ・パパ』のモーリッツ・ブライプトロイ。ルポを『ディストラクション地球滅亡』のリッチー・ミュラー、その相棒ブルーノ役を『フラート』のラース・ルドルフが演じている。フェティシュ&マイスターの“テラノヴァ”クラブ・サウンドも必聴だ。

Text : 梶浦秀麿




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