[渦 うず]

監督:デニ・ビルヌーブ/出演:マリ・ジョゼ・クローズ、ジャン・ニコラス・ベロー/後援:カナダ大使館、ケベック州政府在日事務所/配給・宣伝:ギャガ・コミュニケーションGグループ/2000年/カナダ/86分
:『渦 うず』公式サイト

希無気味な場所で、男が刃物を研ぎ澄ます。そしてこの映画の語り部となるグロテスクな魚が横たわり、近付く死を前に語りかける。一転して無機質な病室。そこには若い女性が横たわり中絶手術をうけている。無事に終わったのちにまた魚の声が…。その美しい女性の名はビビアン(マリ・ジョゼ・クローズ)。大女優の娘として何不自由なく暮らし、25歳の若さで、ブティック“スマトラチェーン”のオーナーだ。しかし経営が思わしくなく、投資をしている兄からも店をたたむよう宣告されている。混乱や絶望の渦に巻き込まれ、クラブで酒をあおり気を紛らわす。しかしその帰り道に人を轢いてしまうのだ。動揺のあまりその場から逃げるビビアン。中絶、事故と罪の意識に苛まれ苦悩する日々。男と一夜限りの関係を刹那的な行為を繰り返しながらも混乱から抜け出そうとする。しかし孤独は募るばかり。全てを清算するために水中に車ごと身を投げた。また魚の声…。「助かれば、生きる権利があるということだ…。」奇跡的に水の中から這い上がってきた彼女は、ある場所で、謎の男と出会うのだった。彼は一体何者?そしてビビアンの心はいつか癒されるのか…。

「デビット・クローネンバーグ」「アトム・エゴイアン」を生み出したカナダ映画界から、彼らに続くと期待される「デニ・ビルヌーブ」の監督作です。
始まり方の斬新さ。そして一匹の(とにかくすごい気持ち悪い)魚を語り部に用いた寓話的な展開。けっこう度胆をぬ かれました。
現代社会に住む人々(特に女性)の苦悩や孤独感。そして死と再生の輪廻を“水”というモチーフを効果 的に使いながら見つめ直しているのです。
“水”によって癒されることって本当に多いですよね。海、川、温泉、プールetc…。近頃ではウォーターバーなどがあったり…。人間にとって無くてはならないもの。だって人間の体の大部分は水分だし、産まれる前は母親の体内を満たす羊水の中にいるのだから…。
映画を観ている最中、苦しくなってきた。ある意味、自分にもビビアンと重なる部分がすごくあって自分をみているようで辛かった。私以外にもきっとそう感じる人がいると思う。自分をみつめそれを認めるって辛いこと。(苦悩や孤独感。そして死。その渦の中にいるときには再生っていう概念は私にはなかった。)でもそれを乗り越えてしまうと、きっと楽しくなるはず。そんな悩める女性におすすめしたい作品。
“水”とリンクしている(させているのか?)、ビビアンの瞳の色が印象的でした。

Text : kyoko

Copyright (c) 2001 UNZIP