[蝶の舌] LA LENGUA DE LAS MARIPOSAS

監督:ホセ・ルイス・クエルダ/原作:マヌエル・リバス/キャスト:フェルナンド・フェルナン・ゴメス、マヌエル・ロサノ、ウシア・ブランコ、ゴンサロ・ウリアルテ/配給:アスミック・エース/1999年/スペイン/95分
2001年8月4日(土)より、シネスイッチ銀座・関内アカデミーにて公開
:『蝶の舌』オフィシャルサイト

1936年の冬の終わり、ガルシア地方の小さな村。8歳の少年モンチョ(マヌエル・ロサノ)は喘息もちで、皆と一緒に一年生になれなかった。初登校前日、少年は学校へ行くのが怖くてなかなか寝つけなかったが、グレゴリオ先生(フェルナンド・フェルナン・ゴメス)は少年をそよ風のように優しく包み込む。
春が訪れ、先生はクラスのみんなを森へと連れ出す。自然は不思議や発見で満ちている。“ティロノリンコ”という鳥は繁殖期になるとメスに蘭の花を贈ること。蝶には細くてゼンマイのように巻かれている舌があること。先生はこれまで見たこともなかった大自然の驚異の世界へと少年を導いてゆく。
 ファシズムの陰が忍びよるスペイン内戦前夜。激しく揺れ動く時代の中で、楽しいはずの夏休みが一転する。そして、「さよなら」の仕方もわからない少年はある決断を迫られる……。

泣いてしまいました。私だけでなく、試写室のあちこちからもすすり泣く声が…。いま最後のシーンを思い出しただけで、また涙がうるんでしまう…。
前半は、スペインの田舎の素朴で美しい風景。優しい両親に、すばらしい先生との出会い。私自身、幼稚園で太陽のような先生に受け持たれ、それまで引っ込み思案だったのがみるみるうちに活発な腕白少女になったという経験があり、本当に子供の時の出会いは人生を変えるくらい影響があることだったんだと、改めて思いました。だから、グレゴリオ先生の優しさと自然との触れ合いで、子供がどんどん元気に自然に馴染んでいく姿は他人事ではなく、観ているうちに幸せな気持ちになりました。
“ティロノリンコ”のオスがメスに蘭の花を渡すということを知っていても、全ての先生が教えてくれるわけではないのよ、粋な先生に会えて良かったねモンチョ。彼が幼なじみの女の子に花を贈るシーンは、ちょっと「小さな恋のメロディ」のようじゃない、と嬉しくなっちゃいました。だから、前半と比べて後半はあまりにも悲しくて仕方がありませんでした。どうして平和でこの映画を終わらせてくれなかったの?ただの美しい田園映画でも充分だったのに!
純粋な少年の心を曇らせるような政治は、絶対にいけない。今まで小猿のように可愛らしく無邪気だった少年が、世間を気にするようになった頃から目つきも変わりはじめ、最後はなんてガキ!と一瞬悪意さえ覚えました。が、ラストシーンでの彼の最後の言葉は、家族を守ろうとする切羽詰まった気持ちと先生への思いがこもり、胸が張り裂けそうでした。そして、それを聞く先生の気持ちを思うと、またやりきれない思いに駆られました。映画によって、私たちは強烈な善悪を見せつけられる時がありますが、この作品はまさにそれでした。争いはむなしい。たとえ今の世の中が荒れてもこのことを忘れてはいけないと、この映画を観て心に誓ったのでした。

Text :Sun Willow



1936年の冬わり、ガルシニア地方の小さな村。8歳の少年モンチョは、グレゴリオ先生と出会い、新しい友人や家族らを通して、愛とは何か、友情とは、貧富とは、自由とは、そして卑怯、自尊心、裏切りといったいろんなものを学んでいく。 この映画は、人間という生物の要素が、良い所も悪い所もあからさまに見える。特に、小さな村だからこそ。
モンチョ(2500人の中から選ばれたマヌエル・ロサノ)の演技も奇跡的なものだが、私は特に、グレゴリオ先生(フェルデナンド・フェルナン・ゴメス)の演技が心に深く残っている。
ラストシーンでは、モンチョが、大好きな先生にあの言葉で別れを告げるとは予想がつかなかった。だが、とっさにもかかわらず、子供ながらにいろいろ考え出た言葉としては、利口な子供だなと、感心し、感動した。
果たして私は、モンチョのような勇気ある行動がとれるであろうか・・・。この映画は、今の時代に必要で教訓となる映画である。

Text:Natsuko Matsuda



8歳の少年モンチョは、学校でグレゴリオ先生に出会い、いろいろな事を教わった。しかし、モンチョをやさしく包み込んでくれたグレゴリオ先生との別れは突然訪れる。
とても切ないクライマックスは、ハンカチなくしては観れないといったカンジ。大好きだったグレゴリオ先生との別れがあんな言葉で終わるなんて誰もが予想できなかっただろう。モンチョのとっさにとった言動に胸が締め付けられる思いだったが、またその言葉に感動した。
これから先、モンチョはきっと立派に成長していくだろうと思うと、決して悲しいという感情を残すだけではないような気がする。

Text::kaori kusumi

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