『オー・ブラザー!』コーエン兄弟 来日記者会見レポート!

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2001年7月16日(月)東京・虎ノ門 ホテルオークラにて『オー・ブラザー!』脚本・監督のジョエル・コーエン(兄)、脚本・制作のイーサン・コーエン(弟)の来日記者会見が行われました。

『ファーゴ』『ビックリボウスキ』のコーエン兄弟最新作『オー・ブラザー!』。1930年代の南部を舞台にした脱獄囚3人のファニーでエキサイティングな冒険物語。コーエン兄弟の作品中、アメリカで最大のヒットとなり、日本では10月20日(土)より公開です。コーエン兄弟の来日は4度目で7年ぶり。和やかな雰囲気で会場入りしたコーエン兄弟の来日記者会見は、お二人の挨拶から始まりました。

【Q:質問/J:ジョエル・コーエン/E:イーサン・コーエン】

J:再び日本に来ることが出来てとてもうれしいです。今回の来日で4度目だと思います。次回作の舞台は日本なので、とても関心があります。

E:私も日本に戻って来ることが出来てうれしいです。今回はもうしばらく日本に滞在する予定です。

Q:主演のジョージ・クルーニーは脚本を書く段階で考えていたのですか? また、ジョン・タトゥーロとジョン・グッドマンについてはどうですか?

J:ジョン・グッドマンは脚本を書く段階から考えていました。ジョン・タトゥーロは脚本を書いている時は思い浮かびませんでした。なぜなら彼はイタリア系ブルックリン出身なので、南部出身の役は少し無理があると思ったからです。しかし何度も仕事をして彼の俳優としての才能がわかっていましたので起用に至りましました。また、ジョージ・クルーニーは、脚本が出来上がった後に決めました。彼はカリスマ性あふれる人ですので。

Q:この映画の舞台はアメリカ南部で、監督のお二人もミネソタ出身ですが、南部の習慣は他とどう違いますか?

E:確かに他の世界と異なっていて、ある特定の地域、時代を背景にしています。この映画は大不況の時代で、そのような時代背景にも私達はひきつけられた。また、自分達で語らせていくことができる世界なので、異国情緒に富んでいてエキゾチックに見えるところもあると思います。アメリカ人にとって、南部はエキゾチックな場所であって、それほど馴染みやすい所ではないと思います。

Q:アメリカ人は南部をノスタルジックに感じるものなのですか?

J:アメリカ人にとって、南部は直接ではなくても民話の形で馴染んでいる場所です。この作品ではあまり現実的ではないので民話というより神話という形で扱っています。また、音楽も重要な要素です。だからといってアメリカ人がその音楽に馴れ親しんでいるというわけではないのですが。

Q:ウォシャウスキー兄弟(『マトリックス』)のデビュー作は、お二人の作品に近いように感じますが、彼らをどう思いますか? また、『未来は今』のようなビックプロジェクトを手がけたいと思いますか?

J:ウォシャウスキー兄弟に関しては、よくわかりません。彼らの映画も観ていないと思います。
E:『バウンド』は観てるじゃないか。
J:そうだった。でも、私達の作品と似ていないのじゃないかな。ちゃんと観たことがないからよくわかりませんが。それと、私達もメジャー作品に興味はあるし、意図的にメジャーから離れているわけではないんです。『オー・ブラザー!』は、私達の作品の中ではアメリカで最も成功したものですし、いいストーリーの映画を作って皆さんに観ていただきたいと思っています。

Q:ユーモアのセンスについて。日本人にはユーモアが通じにくいと思われますが、翻訳者がいるにしろ、どの程度ジョークを説明するのか。また次回作の舞台は日本というお話ですが?(2001年7月現在)

E:この作品に関しては日本人の翻訳者は必要ないと思います。『ファーゴ』の場合は、アクセントなどに地域性がありましたし、通じにくい部分もあったと思います。地域性が通じるものもあれば、通じないものもあると思います。
『オー・ブラザー!』は英語圏でない国でも公開されていて、とくにサントラはフランスでとてもウケてますよ。
次回作に関してですが、タイトルは『トゥ・ザ・ホワイト・シー』。小説がもとになっていて、日本に不時着したアメリカ空軍のパイロット、彼の主観的な視点で日本を描いていくという物語です。

Q:小さいころ兄弟ゲンカはしたんですか?

J:ケンカはしたでしょうけど、3歳はなれているので今ほど一緒にいることがありませんでした。兄弟なので二人で長い間共同作業をしていることを特別に見られますが、他のスタッフとの共同作業と同じです。

Q:脚本について。この作品のベースとなっている『オデュッセイア』は、最初から念頭において書かれたのですか?


J:『オデュッセイア』のアイデアは脚本を書いている間にひらめいて、脚本を書き終わってからディテールを採用しました。

Q:お二人の作品では小悪党が主人公になる場合が多いが、なぜそのようなキャラクターにひかれるのですか?

E:メジャー作品のスーパーヒーローのようなキャラクターには私達はあまりひかれないし、英雄的な悪党は現実的でないと思っています。現実主義を出したいわけではないのですが、現実に犯罪を犯す人っていうのは頭の悪い人が多い。『ファーゴ』では犯罪をおもしろくしたかった。

Q:お二人の作品には、ひとくせあるおもしろいキャラクターが出てきますが、発想はどこから出てくるのですか?

E:ジョージ・クルーニーみたいなハンサムに、ヘアネットをつけさせるとおもしろいと思いました。いつも一人一人のキャラを独特なものにしたいと思っています。だからといって規則があるわけではなく、私達の好み、直感などを活かしています。

■ジョエルとイーサンは、お二人の映画のユニークな感覚をそのまま持ち合わせているといった人柄でした。そんなお二人のおかげで非常にアットホームな雰囲気で進行した記者会見でした。

TEXT:niimura [UNZIP]




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