『ビューティフル・マインド』
ラッセル・クロウ、アカデミー賞直前来日記者会見


『ビューティフル・マインド』(A BEAUTIFUL MIND)
2002年3月30日より日比谷スカラ座1他、全国東宝洋画系にて公開
監督:ロン・ハワード/原作:シルビア・ネイサー(新潮社)/脚本:アキバ・ゴールズマン


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2002年3月20日12時20分より、西新宿にあるパークハイアット東京39Fボールルームにて、『ビューティフル・マインド』主演俳優、ラッセル・クロウの来日記者会見が行われた。日本公開(3/30)直前、というより主要8部門にノミネートされた米国アカデミー賞の発表(3/24=日本時間3/25)直前っていう微妙にタイムリーな時期での来日である。で、会見の1時間半も前に設定された受付時間にアタフタと現場に駆けつけた。時間が早いのは受付後に別途ローマ字併記で各記者それぞれにサインさせるためらしい(カメラマンも同様)。ちょっとものものしい感じにビビリつつ待ってたら、御本人は15分ばかし遅刻(笑)、記者会見前の撮影タイムは大幅に短縮されたようだ(唖然とした編集部カメラマン談)。でも全く悪びれずに機嫌良く本会場に登場したラッセル・クロウ。ジーンズに赤いシャツという普段着風ファッションがなんとも不敵な感じ。ワイルドな無精髭に伸び気味の髪(次回作の役作りらしい)を無造作に掻き上げたりなんかして、女性記者ならイチコロなフェロモンをふりまいていた(気がする)。昨年『グラディエーター』でアカデミー主演男優賞を授賞した大物俳優なんだけど、雰囲気はご機嫌なロック・ミュージシャン風。席についてすぐ煙草に火をつけたので、隣にいた常連(らしき)記者がちょっと驚いていた。記者会見で煙草を吸う外国人俳優は昨今は珍しいようだ(特にアメリカは嫌煙ヒステリーだし)。でもでも、質問にフランクに答えるついでに記者席最前列の取材陣に気さくにサッカーの話などを振ったりと通訳泣かせのアドリブもあって、なかなかに愉しい会見ではあった。数日後のアカデミー賞発表では、惜しくも2年連続の主演男優賞自体は逃したものの、すでにゴールデン・グローブ賞で主演男優はじめ主要4部門を授賞、オスカーでも作品賞・監督賞など4部門を受賞した作品の主役である。オスカーを逸した感想なども聞いてみたかったけれど、それは欲張りかもね。というわけで例によってなるべく忠実に会見風景を再現してみた。じっくり読んでみて欲しい。



司会:それではみなさん、お待たせしました。東京は初めて、アカデミー賞直前の来日です、ミスタ・ラッセル・クロウ!(ラッセル・クロウ登場、拍手)では、挨拶をお願いします。

■ラッセル・クロウ:「おはようございます、皆さん。調子はどうだい(Good morning everybody, how do you do?)」

司会:(そのフランクな感じに調子を合わせて) Fine! (笑)

■ラッセル・クロウ:「実は初めてじゃなくて東京は3度目です。でもこのホテルはたいへん高いビルで、こんな高みから東京を眺めたのは初めて。本当に美しい街で、とても気に入っています」

Q:アカデミー賞発表直前の忙しい中、日本に来ていただいてありがとうございます。今回の役柄がアカデミー賞を受賞した『グラディエーター』とは全く180度違って驚きました。今までの役柄が一つ一つイメージが違いますが、いつも敢えて意識的に違う役柄を選ばれているのでしょうか?

■ラッセル・クロウ:「シナリオの選び方は、自分では“鳥肌現象”と名付けています。私の所には多くのシナリオが届きます、そのたくさんの脚本を読むわけですが、その中で何を選ぶかというと、肉体的な=フィジカルな反応の出るものを選ぶ。つまり、いいシナリオを読んでいると本当に実際、鳥肌が立つんです。そういうような自分のエモーション=感情に訴えてくる映画を選ぶようにしています。私の方から『こういう役をやりたい』とか自分の方からチョイスしたことは一切ありません。いつも受け身で、そういうものと出会えるのを待っている。だから自分にとっても毎回サプライズ=驚きがあるんです。私の仕事というのは、そうやって選んだ役の中に、完全に溶け込んで演技をすることだと思っています。それが天職です。ですから有名人だとかスターだとか騒がれることは全くの副産物であって、私は自分の役に溶け込んで、全身全霊を打ち込んで、そして世の中のボーイズ&ガールズを泣かせること、これが私の仕事だと思っています(会場笑)……記者会見でちゃんと笑ってもらえるのはとてもいいこと(通訳)だよ(さらに笑)」

Q:あなたはジョン・ナッシュ本人と会いましたか? そして「天才」というものををどう定義しますか?

■ラッセル・クロウ:「はい。彼は撮影3日目に、誰も招待してないのに突然現れました。実はリハーサルの段階でお会いしたかったんですけれども、スケジュールが詰まっていて会えなかったんです。撮影3日目に撮影現場、ちょうどプリンストン大で撮っていまして、彼は今もそこにいるので、突然おいでになりました。そこで大変面白い会話をしまして、そこで彼が話したことを随分映画の中にそのまま取り込んでいます。映画の最後近くで、お茶を呑むシーンがありますが、そこで本当に彼とのやり取りであったことが、そのまま映画に出てきます。ジョン・ナッシュさんに「コーヒーですか、紅茶ですか」と聞いたんですが、なんと彼はそのどちらにするか分析するのに15分間もかけるんです(会場笑)、私は待ちきれずに紅茶を先に飲んでしまいました。まあそういう方でした。それから“天才”の定義ですね。私は知的なレヴェルというよりも、ハート、エモーショナルな観点から定義したいと思います。どういう人かというと、自分のアート=芸術/技巧、それが何であれ自分のアートに完全に埋没させて、科学的なことに限らず、“人を旅に出させる人”----例えば歌がうまい人、芝居の天才、ダンスの天才、バレエの天才、あるいは映画の天才ですとか、自分の仕事をやることを通して、人々を、椅子に座っていることを忘れさせて、ひとつの旅に出させる、そういう力を持った人を私は“天才”と呼びます。……お、モリヤマサン(と知り合いがいたみたいで手を振る)何度かお会いしたんだ云々……」

司会:(苦笑しつつ)記憶力がいいですねぇ。

Q:今まで演じた中で、もう一度演じてみたい役柄はありますか?

■ラッセル・クロウ:「たくさんあります。私は本当にひとつの役をやると入れ込んでしまうタイプなので、どの役もとても懐かしい。『L.A.コンフィデンシャル2』もやりたいし、『グラディエーター2』もやりたいけどアレは死んじゃったから無理だな(笑)。(続編という意味では)これから先どうなるかはわからないんでちょっと考えないといけないんですが、まあ自分が全身全霊を込めてやった役だから、どれも愛着があります。一般的にお芝居の人達は、特にイギリス系の役者でこういうことを言う人が多いんですが、キャラクターが好きじゃなきゃできないということがあります。でも私は決してそうじゃない。もちろん演技をすることは自分のエモーションを外に見せることですが、そういう時にその人物が個人的に好きか嫌いかではなくて、“役作り”が好きなんです。だからその人物がネガティブな人物であれ、ポジティブな英雄的人物であれ、それは関係ないんです。自分が役を作る、その人物を作り上げていく過程が好きな俳優なんです」

Q:精神分裂病という難しいキャラクターを演じていますが、役作りの上でしたこと、また役にのめり込み過ぎて辛くなるという事はなかったでしょうか?

■ラッセル・クロウ:「この役で非常に怖かったのは、精神分裂症という病気が誤解されることです。世間的に誤解されていると思うんですが、人格が完全に分裂しているとか……例えばジム・キャリー主演の『二人の男と一人の女』では、人格が分裂した役を彼がとてもうまく演じていたけど、現実にはああいうものではないんです。実際には様々な段階の症状があって、今までそうした病気はわけがわからないものと思われてきたんですが、決してそうじゃない、彼らにはちゃんと彼らなりの理屈があるのです。その中で病気の症状がある、ということを今回リサーチして学んだんです。そうすると、自分がいつも当たり前だと考えていることが実は違うんじゃないかと恐怖を抱き始めて、私の人生にもいろんなことがあったけれど、僕の今の人生は本当にあった事かな、という疑いが巻き起こってきたわけです(笑)。ですから時々、自分の頬をつねってみるとか、夜もよく眠れなくなるというような経験をしました。皆さん、ちゃんと目が醒めていますか?(笑)」

Q:今回のアカデミー賞では、スタッフも多数ノミネートされていますが、ロン・ハワード監督をはじめ、スタッフ・チームの印象についてお聞かせください?

■ラッセル・クロウ:「ロンとの仕事は大変面白い経験でした。ロン・ハワードは子役出身で、子役時代にアメリカ中の人々が観ていた2大・人気TV番組に出演していたんです。そのせいか、アメリカの大衆はみんな彼の事を知ってると思ってる。(番組での彼をそのままだと思って)とてもシンプル・マン=単純素朴な人だって想像しているようだけど、これは全く違う。彼はとても複雑な人物だし、とても知的で、それから大変素晴らしい作家、フィルムメーカーなんです。それで、私は役にのめり込むタイプだし、対するロンはシンプルマンだと思われているので『うまくいかない(ソリが合わない)んじゃないか?』と言う人もいたんですが、それは全くの誤解で、もうデイ・ワン=初日から非常に息のあった仕事をすることができました。彼は子供の頃、6歳の頃から映画に出演していたから、映画作りの全てを知りつくしてる。自分が何を望んでいるかちゃんとわかっているし、私はそれを与えることができた。だから非常にうまくギブ&テイクが生じて、素晴らしい仕事ができたと思っています。私は労働者階級のバックグラウンドを持っているので、いわゆる時間の無駄、お金の無駄が本当に勿体ないと思うわけです。その点でロン・ハワードとは本当に無駄のない仕事ができて、そういう意味でも非常に満足できる仕事ができたのです。……(と、記者席に)ところでワールドカップ・サッカーはどこが勝つと思う?」(会場笑)

司会:ラッセル・クロウさんはどの国を応援しますか?

■ラッセル・クロウ:「(自分の出身の)オーストラリアは……無理か、予選で落ちましたから。優勝はイタリア・チームかな……おっと。日本、日本」(会場爆笑)

司会:共演されたジェニファー・コネリーはどうでした?

■ラッセル・クロウ:「ジェニファー・コネリーはミステリアスな大変素晴らしい女優で、彼女と仕事ができてとても楽しかったです。特に彼女はこの役で花が開いたのを目にしたような気がします。彼女も子役としてデビューして、11歳から21、22歳まで子役としてキャリアのあった人ですが、彼女は本気で芝居をやろうといったんキャリアを中断して、今回初めて女優として本当に深みのある役を演じたのです。ですから今度の日曜日(アカデミー賞の授賞式の3月24日)、彼女の幸運を願っているんですが、二人で一緒に受賞したいと思っています。ノックノック……(と机を叩いて賞獲りのアピール)」(会場笑)

Q:今作や『インサイダー』のような実在の人物を演じる時と、『グラディエーター』などの架空の人物を演じるのでは、演技プランなどに違いはありますか?  それから個人的には、あなたは「孤高のヒーロー」、周囲に認められなくとも一人闘い続ける孤高のヒーローを演じる事が多いように思うのですが、それは意識されていますか?

■ラッセル・クロウ:「実在の人かフィクションかというより、全ての役に対して全部違うそれぞれのアプローチがあるので、その区別はあまりないです。やはり肉体的なアプローチがあったり、あるいはフィクションであれリアルな人物であれ、その役を学ばなければいけないのは同じなんです。ただ一つ、強いて違いを挙げろと言われれば、実在した人、しかも私がやった2人のキャラクターは今も生きている人ですからら、その人に対して責任があります。ですからその人物に敬意を表し、そしてまた彼のスピリット=精神をちゃんと活かせるような、そんな演技をちゃんと心がけなければならないと思います。でも実在の人物を演じて一番嬉しいのは、その映画を観た観客の中に、その人物の又従兄弟ですとか、親戚・知り合いの人がいて、あの場面は本人にそっくりだったとか言ってくれることですね。

二つ目の質問ですが、コンフリクト=心の中に葛藤がない人間にはドラマはない。それじゃあ映画は作れないんですね。イージーな人間の中にはドラマはない、私はそんな映画を見たいとは思わない。ただ普通に暮らしている人間はみんな毎日毎日、何か障害と闘っている、否が応でもそれを克服して前へ進んでゆく、人間誰もがやっていることです。映画っていうのは、そういう葛藤を拡大して見せているものですから、そういう意味で私のやる役は当然ながらそういうものになるのです。……ところでラグビーはどこが好き?(とかスポーツ話を最前列の記者席に振るラッセル。雑談風に続けるので聞き取れない〜ううう)……」


Q:のめり込み型の俳優だとおっしゃってましたが、ラッセル・クロウさんは音楽活動、バンド活動をしてらっしゃいますが、それはラッセル・クロウ個人に戻るためなんでしょうか、それともロックスターを目指していますか? また『ムーラン・ルージュ』のニコール・キッドマンのように、映画の中で歌の才能を披露する予定などありますか?

■ラッセル・クロウ:「可能性はあります。すべてがポシブルです。ちなみにバンド名は“30 Odd Foot of Grunts”、略称ターフォっていうんだ(直訳すると「30の不規則なうなり声が30フィートある」?よくわからん、と四苦八苦する通訳の戸田奈津子さんに会場爆笑)。英語でもバンド名に特に意味はないよ。でもいわゆるカッコつけの“ロックスターになる気は毛頭なくて、ただ自分の楽しみで歌詩を書き、ギターをかき鳴らし、歌を歌っているんです。私達の世代って言うのはそういう育ち方をした世代なんですね。3分間の歌でコミュニケートできるってことは素晴らしいことです。そういうことを知っているので、音楽というものに非常に惹かれています。私は音楽で報酬を得ようなんて思ってなくて、本当に自分が純粋に楽しむため=エンジョイするためにやってるんです。男ばかり6人のバンドで、もう18年間も続いていて、活動しています。私たちにとってとてもシンプルなことです。時々シングルも出すし、ツアーもする。 去年はアメリカでツアーをしました。20日間で9都市を回って16ステージ演奏しました。大変ハードでしたが、そういう活動も時々してます。でも決して有名になろうとかじゃなくて、我々のエンジョイメントのためなんです。そういう活動はしてても、いわゆる音楽業界とは全く関係ないところで活動しています。インターネットでCDを売ったりしていますが、業界の販売網には一切乗っかっていませんし、マスコミとかアイドル化とかそういうものとは一切関係なく、あくまでもインディペンドな活動です。そこがコンフォタブルな=居心地のいい場所ですので、まったく業界に入るとかは考えてません」

司会:そのCDでは、さぞかし渋いいい声で歌ってらっしゃるんでしょうね?
ラッセル・クロウ:「バーボンとタバコでこの声になりました(笑)。皆さんにはお勧めはしません(笑)」

Q:映画の中でノーベル賞を受賞するシーンがありましたが、それとご自身のアカデミー賞受賞シ−ンがオーバーラップすることはなかったでしょうか?

■ラッセル・クロウ:「素晴らしくいい質問です、ありがとう(笑)。あのシーンには1,000人くらいのエキストラを使ってるんです。彼らはあそこに座ったまま、一日中ドレスアップして座ってるんです。それで僕の同じスピーチを何度も聞かされるわけで、それをずっと聞いてなきゃならない。とても退屈なんですが、でも彼らの新鮮なリアクションが必要なのです。ですから彼らが退屈しないようにいつもいつも彼らの気分を盛り立てる役をしていました。最初のテイクで『今日は皆さん大変ですよ、同じ事をずうっとやるんですよ』とまず警告しまして、3テイク目で『監督からのメッセージです、今日はみなさん集中してやってくれてありがとうございます、これで100回のテイクのうちの3回目がやっと終わりました』とか言って(笑)、そういう風にして撮影したんです。そして最後にリアクションショットで観客を撮った時、私がノーベル賞でなく、アカデミー賞でもらったオスカー像を持って見せたんだ。ですから観客はとてもいい反応をしてくれたんです。そういう裏話があります。もうハワード監督にとって私は、ちゃんとしたリアクションを撮影するためなら何でもやるという、まるで傭兵のようなものですから、利害に関係なくそういうことをやったわけです」(会場笑)

Q:映画の中で、ブロンド美人を狙う数人の男の姿から、ナッシュが自分のゲーム理論を思いつくシーンがあります。もし御自身がその場にいるとしたらどうしますか?(会場笑)

■ラッセル・クロウ:「あのカフェテリアで女の子を奪い合う学生を見てナッシュ均衡という理論を発見する場面ですが、そういうシーンが実際にあったわけではありません。あれはナッシュさんの人柄を表すための作られたエピソードなんです。彼は女性はとても好きだったんですが、本当に記録的にモテなかったようで(笑)、そこから脚本家が考えた映画的につくられたシーンなんです。(自分ならどうするかについて)チャーミングでなら1人だけ選ばなくてもいいんじゃない(笑)。僕は今までに女性に話しかけて、最後まで行き着くのに全然苦労したことがないから、それは私にとっては問題じゃないです」(会場笑)

Q:イギリスのアカデミー賞を放送したBBCの番組の中で……。
司会:あ、ダメです。その話は日本には関係ないのでNGです。
■ラッセル・クロウ:「(通訳してもらって)ソーリー」

Q:役作りでさまざまなアプローチをされるということですが、具体的にはどんな風にされるのでしょうか? また撮影後にも役を引きずる事はありますか?

■ラッセル・クロウ:「演技に関して言えば、私は監督からの“アクション!”から“カット!”の掛け声の間でだけしか芝居はしないんです。カメラが回っている間だけきっちり仕事をする。役者の中には、役名で呼ばないと返事もしない、なんて人もいるけど、私は“カット!”の後に役を引き摺るようなことは全くないですね。リサーチは念入りにやります。この作品の場合、まず原作を読み、精神分裂症について調べました。それから戦後のアイビー・リーガー、アメリカのアイビー・リーグ大学の学生の風俗や、あの時代の世相を勉強しました。私は元はその役のキャラクターを、内側から作るものだと思ってたんですが、最近は外側をしっかり作って、その上で内面を詰めていくというアプローチになっています。僕は6歳からテレビに出演しているので、「アクション」と言われたらすぐに100%役に入れるし、「カット」がかかったらすぐクルーと雑談しています。役を引き摺る役者は、貴重なエネルギーを浪費しているだけです。こう言ってカメラマンをけなすつもりはありませんが、カメラはただの機械で、非常にバカなものです。何かを与えなければ、何も受け取ることができません。僕は馬鹿なカメラを相手に必要なだけ演技をして、カメラにエネルギーを与えてやるんです。それが僕の仕事です」

Q:この作品で一番お気に入りのシーンは何ですか? あと日本のファンにメッセージをお願いします。

■ラッセル・クロウ:「私が一番気に入っているのは、図書館のシーンですね。ナッシュが年寄りになってから、コミュニケートできなくなっている彼のところに、若い学生が来てついに会話をする場面です。そのシーンが、まさに例の鳥肌現象が起こった場面なんです。あの学生がきて、とてもいい質問、頭を使った質問をする、そしてしゃべりはじめると、ダムが一滴の水で決壊するような感じでなかなか止まりません。そうやってみんなと話している場面がとても好きです。僕にとってこの映画が素晴らしいのは、数学が関わっているからでもなければ天才の話であるからでもありません。素晴らしいラブ・ストーリーだからなんです。男と女があらゆる障害に立ち向かい、克服し、一生最後まで添い遂げていったことこそが真髄なんです。エキセントリックな人と言われてきたナッシュは、精神病を抱えていたと分からなかった時期がありましたが、それをアリシアとナッシュの2人で乗り越え、成長していくという夫婦の物語なんです。実際は彼らは50年代に結婚して60年代に離婚し、そして去年再び結婚したそうです。

(最後にメッセージを)ああ、昨日空港に着いたら、すごいたくさんのファンが出迎えてくれて、ガードマンまでもみくちゃになって、僕が警備員を助けなきゃならなかったほどでした。メッセージは……皆でワールドカップを楽しみましょう! 日本チームの活躍とゲームの運営が成功する事を祈っています。僕の友人もみんな日本に来たいと言ってました。本当に幸運を祈ってます。グッドラック!」


Text:梶浦秀麿


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