[コラテラル・ダメージ] COLLATERAL DAMAGE
2002年4月20日より丸の内ルーブル系他全国松竹・東急系にて公開

監督:アンドリュー・デイビス/出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、クリフ・カーティス、ジョン・レグイザモ、イライアス・コーティアス、フランチェスカ・ネリー、ジョン・タトゥーロ他(2001年/アメリカ/1時間48分/配給:ワーナー・ブラザース映画)
→アーノルド・シュワルツェネッガー来日記者会見レポート
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(c)2001 Warner Bros.All Rights Reserved.
ロサンゼルス消防庁の消防隊長ゴーディー・ブルーアー(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、コロンビア解放軍の謎のテロリスト“ウルフ”による爆破テロによって、目の前で最愛の妻と幼い息子を一瞬にして亡くす。しかもウルフ本人と思われる実行犯クラウディオ(クリフ・カーティス)は警官に変装していて、爆破実行直前にゴーディーと話していたのだ。だがFBIもCIAも、その男をとり逃がしてしまう。「コロンビアのために……米国の戦争犯罪者は介入をやめて出ていけ」という犯行声明が届き、賛否両論のTVニュースでは、なんと南米連帯委員会というゲリラ支援者のインタヴューも流れ、ゴードンは思わずその男の事務所に殴り込んでしまう。秘かにその事務所を監視していたCIAは彼を取り押さえ、自分達に任せるように説得する。だが政府は外交を優先して、「コラテラル・ダメージ(政治的にやむを得ない犠牲)」として処理しようとしていた。アメリカが支援してきたコロンビア政府はゲリラと和平工作を画策していたのだ。ゴーディーは秘かに、かつてコロンビアで軍事アドバイザーをしていたという男と接触し、単身コロンビアに乗り込んで、反政府ゲリラのアジトを目指すのだった。ジャングルを越え、ゲリラの検問を突破した彼は、小さな町で耳の聞こえないマロウという少年がバイクに轢かれそうになるところを助け、その保護者らしきセリーナ(フランチェスカ・ネリー)と出会う。そこでCIAとゲリラ双方に襲われたゴーディーは、何とか撃退するのだが、現地の警察に捕まり牢獄に送られる。そこもゲリラの襲撃を受け、どさくさに紛れて脱出したゴーディーは、牢で知り合った修理工のアームストロング(ジョン・タトゥーロ)からゲリラ支配地への通行証をもらい、サンパブロ郊外のヘロイン精製所へ潜り込む。こうしてゲリラの拠点をひとつづつ潰してゆくことになるゴーディー。上層部の意向が気に入らないCIA高官ブラント(イライアス・コーティアス)は、彼を利用して本拠地のゲリラ村を壊滅させようとするのだった。だが、テロリスト“ウルフ”の計画はもっと周到だった。アメリカの大都市を狙った次なるテロが始まろうとしていたのだ……。

「公開延期から半年」、ついに日本公開されるシュワちゃん主演のアンチ無差別テロ・アクション娯楽映画だ。都市型無差別テロとその個人的「報復」を描いたものだけど、思ったより「アメリカ=正義、テロ組織=悪」って明確な勧善懲悪ではなかったので、ちょい拍子抜けした。意外とスマートな知性のあるアクション娯楽映画になってるのだ(ま、麻薬作ってるヤツとかには情け容赦ないけどさ)。ある意味ひねくれたテロものだった『ソードフィッシュ』なんかと比べると健全な相対主義の立場であり、「政治的に正しい」フィクションの節度を守ってるのには正直、好感を持ったのだった。特に後半の『ダイハード』第一作での高層ビル戦へのオマージュのような対テロ戦がいい。トリッキーなサスペンスが効いていて、僕も思わず騙された「ドンデン仕掛け」があったりして好感触って感じ。ゲリラ村掃討シーンではアメリカ側の残酷さもチラッときちんと描いてたいり、アメリカの間接的被害にあってきたゲリラ側の心情描写もあったり、またラストの微かな苦味まで含めて、よくできた娯楽映画だと思ったのだ。ちょっと地味なのはシュワちゃんの年齢と「9.11以後」であることを思うと、いたしかたないのかなぁ。

昨年9月11日のNYテロ事件後、「アメリカ側かイスラム過激派側か二者択一せよ!」みたいな議論があって、その設問自体が単純バカだと思うんだけど、この映画はそうした単純バカ的心情も、テロの長短所(語弊もあるが敢えて)もわかった上で、大衆の正義への欲望とか英雄願望をも踏まえて、巧みにフィクショナルな娯楽大作として消化しているように思えたのだった。個人的には『ソードフィッシュ』の皮肉な立場の方が好きなんだけど、わかりやすくテロ事件を考えるテクストとしては、本作は及第点なのではないだろうか? あとシュワちゃんの気絶回数は過去最高ではないかと思うんだけど、誰か(ホリイ某とか希望)数えて比較してみてくれないかなあ……。あ、冒頭の消防士シュワちゃん活躍シーンが夢オチってのだけは頂けないかも。

『野獣捜査線』『刑事ニコ』『沈黙の戦艦』『逃亡者』などのアンドリュー・デイビスが監督。ご存じシュワちゃんはおいといてキャストでは、男臭い映画で中盤からヒロインとして出てくるセリーナ役を『ライブ・フレッシュ』『ハンニバル』(イタリア編でのパッツィ刑事の色っぽい妻役!)のフランチェスカ・ネリーが好演。またチョイ役でジョン・タトゥーロ(『オー・ブラザー』『耳に残るは君の歌声』など)やジョン・レグイザモ(『エグエクティブ・デシジョン』『サマー・オブ・サム』『ムーラン・ルージュ』など)が出てくるのもちょっと嬉しい。

Text:梶浦秀麿

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