[ルーヴルの怪人] Belphegor, Phantom of the Louvre
2002年6月15日より渋谷東急3ほか全国松竹・東急系にてロードショー公開

監督:ジャン=ポール・サロメ/出演:ソフイー・マルソー、ミシェル・セロー、フレデリック・テンフェンタール、ジュリー・クリスティ他
(2001年/フランス/1時間37分/配給:日活株式会社)

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(C)2000 Les films Alain Sarde
フランス・パリの誇る世界有数の美術館、ルーヴル。その美術館で起こる怪事件を描く恋と呪いのサスペンス・ラヴストーリーである。ミッテラン大統領の肝煎りで、ガラスのピラミッドのエントランスを含む大改修工事「グラン・ルーヴル計画」が行われたのは1981〜89年。その工事中に発見されたのが、1935年にエジプトから持ち込まれたミイラ「ベルフェゴール」だった。時を同じくして電気系統の事故が頻発し、警備員や学芸員が発狂したり幻覚を見て死亡する事件が続くようになる。ちょうど美術館に面したアパートのペントハウスに、老いた祖母と住んでいたリザ(ソフィー・マルソー)は、工事のせいで起こった停電事故の後から、徐々に精神に変調をきたすのだった。電気工事人のマルタン(フレデリック・デイフェンタール)は彼女に一目惚れするのだが、やがてリザと共に「ミイラの呪い」事件に巻き込まれてゆく。そして引退した老刑事ヴェルラック(ミシェル・セロー)もまた……彼も60年代にルーヴルで起こった同様の事件を捜査しつつも、迷宮入りして閑職に追いやられるという、「ミイラの呪い」の犠牲者だったのだ。彼は同世代の女性研究者グレンダ・スペンサー(ジュリー・クリスティ)の助力を得ながら、ルーヴルの怪人の正体へと迫ってゆくのだが……。

ソフィー・マルソー主演の「ミイラの呪い」ホラーである。でもホラーと言ってみたものの、ちっとも怖くないのが難点か。登場人物がどいつもこいつもやたら呑気に愛を語り合うってのは、まあフランス映画なので許すにしても、とにかく肝心のルーヴルの怪人、ベルフェゴールが初っぱなから活躍しまくる=観客に見える姿でウロウロしまくるのに唖然としてしまったのだ。結局、物語はコイツにとりつかれたソフィー演じるリザの狂態の迫力に力点が置かれ、呪いを解く=ミイラさんの文句を理解してあげて、いかにしてリザを解放するか?ってな方向へと進むんだけど……。まあ予定調和を責めるのも可哀想かなあって感じ。ハリウッド娯楽映画の悪いところをコピーした感じのフレンチ新世代映画って位置に落ち着きそうな、娯楽ラヴコメ・ホラーってな仕上がりであった。もともと「ベルフェゴール」ってのはパリの都市伝説みたいな怪談で、1926年にまずサイレント映画化、1965年に当時の人気シャンソン歌手ジュリエット・グレコ主演でTVドラマ化されたもの(彼女も本作にカメオ出演してる)。パリジャンなら知る人ゾ知る伝説を現代風にアレンジして映画化した本作は、フランス国内では公開第一週で『15ミニッツ』『トラフィック』などのハリウッド大作を押し退けて興行成績No.1を記録、ロングラン上映となったとか。でも89年あたりの話なのにケータイ普及しまくりって設定とか、どうも細部がいい加減な気がして仕方なかった。あ、でも「モナリザ」や「サモトラケのニケ」など、劇中で写るルーヴルの美術品はすべて本物らしいので、アートに興味ある人はそこを見るって観方もアリかもね。キャストでは『TAXi』シリーズのフレデリック・ディフェンタールが、ヒロインを助ける青年マルタン役を好演。セザール賞3度受賞の名優ミシェル・セロー(『クリクリのいた夏』)、『ドクトル・ジバゴ』などのオスカー女優ジュリー・クリスティなどフランス映画の重鎮も活躍する。VFX担当は『エイリアン4』『ジャンヌ・ダルク』『アメリ』の特撮を手掛け、ピトフ(『ヴィドック』)のコラボレーターとしても知られるアラン・カルスだ。

Text:梶浦秀麿

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