[スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃]
Star Wars: Episode II - Attack of the Clones

2002年7月13日より日劇1、日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開

監督・ストーリー・共同脚本・製作総指揮:ジョージ・ルーカス/脚本:ジョナサン・ヘイルズ/製作:リック・マッカラム/出演:ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ヘイデン・クリステンセン、クリストファー・リー、サミュエル・L.ジャクソン、フランク・オズ、イアン・マクダーミドほか
(2002年/アメリカ/2時間22分/配給:20世紀フォックス)

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【STORY】
ナブー星のロイヤル・クルーザーが、銀河共和国の首都惑星コルサントに降下する。ナブー女王を2期8年つとめて退位し、元老院議員となったパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)の乗機だ。だが空港着陸後すぐ、パドメは爆殺されてしまうのだった。おしまい。……ウソ、爆破テロで死んだのは実は替え玉で、前作同様、相変わらずパドメは何者かに命を狙われている状況。分離派のドゥークー伯爵(クリストファー・リー)が雇った刺客の仕業らしいが証拠がない。共和国は今や忠誠派と分離派にわかれ、分裂の危機にあった。通商業界連合や大企業同盟、銀行グループや商工ギルド、科学技術ユニオンなどの資本を後ろ盾とし、独立した地方自治を主張する分離派は、2年前、元ジェダイ騎士のドゥークー伯爵の主導によって台頭、既に数千の星系の賛同を得るまでに勢力を拡大していた。対して現状維持を画策する忠誠派は手詰まりになりつつあり、専守防衛と紛争調停を役目とするジェダイ騎士団よりも、より一層強力な共和国軍の設立が叫ばれていた。それは武力による覇権主義であり、(アメリカに対するイスラーム諸国のように)反発から分裂を決定的にする恐れもあった。忠誠派の有力議員であるパドメは反戦平和の立場でロビー活動を行っていたのだが、政情はもはや予断を許さなかった。ちょうどアンシオンの国境紛争調停から戻ったオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)とその弟子アナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)は、元老院最高議長パルパティーン(イアン・マクダーミド)やジェダイ評議会からパドメの護衛を命じられる。アナキンにとっては10年ぶりの再会だ。アナキン19歳、パドメ23歳----その再会はだが、ぎこちなかった。その夜、さっそく敵の暗殺メカ、アサシン・ドロイドがパドメを狙う。R2-D2もその侵入に何故か気づかない、メカから放たれた白いデブムカデ、コウハン(映画秘宝だと「カウハン」表記)の毒牙が眠るパドメに迫る! 間一髪でアナキンが食い止め、逃げる暗殺メカに飛びついたオビ=ワンは、高層の建物群をすり抜けて犯人の元へ。危うく転落するところをアナキンが駐車場からパクってきたスピーダーに空中でキャッチされ、逃げる女暗殺者を追う。師弟なのにほぼ対等に漫才風口論を繰り広げつつ、危うく撒かれそうになりながらも空中カーチェイスに空中ダイブで追いつめ、最下層にあるクラブに逃げ込んだ相手をなんとか確保。だが誰の依頼かを吐かせようとして「賞金稼ぎの……」まで言わせたところで、その暗殺者はヘルメット武装の何者かに毒矢で殺されてしまうのだった。事態を重く見た評議会は、いったんパドメをナブーへと帰すことに。アナキンに護衛させ、難民のふりをして貨物船で帰郷したパドメは、湖沼地帯の別宅でロマンチックな日々を過ごすことになる。だがジェダイに恋が禁じられていることを知るパドメは、アナキンの執拗なアプローチを拒み続けるのだった。一方、オビ=ワンは単独で探偵任務につく。街の情報屋から毒矢の製造地を聞き出すが、その星カミーノのある星系はジェダイ公文書館(アーカイヴ)の記録にない。ヨーダ(フランク・オズ)の生徒達に示唆され、何もないはずの星系に向かったオビ=ワンは、そこに記録から抹消されたカミーノを発見。同星のラマ・スー首相から、10年前にジェダイ騎士サイフォ・ディアスに依頼され、共和国のためのクローン軍団を製造していると聞かされたオビ=ワンは、そのクローンのモデルとなった賞金稼ぎジャンゴ・フェット(テムエラ・モリソン)とその息子ボバ・フェット(ダニエル・ローガン)に遭遇、一戦を交えるものの取り逃がし(ワザと?)、彼らを追ってジオノーシスへ。実はそこが分離派のアジトだった。地下工場ではバトルドロイドが量産され、忠誠派との戦争の準備が着々と進められていたのだ。その頃、母シミ(ベルニラ・アウグスト)が危険な目に遭っている悪夢を見続けていたアナキンは、パドメを伴って故郷タトゥイーンへ。母を身請けしたラーズ家で、母がタスケン・レーダーにさらわれたと聞いたアナキンは、単身救出にむかうのだが……。ジオノーシスの状況を報告していたオビ=ワンは分離派に捕まり、元老院とジェダイ評議会はついに決断を余儀なくされる。ナブー代表パドメの代理としてジャー・ジャー・ビンクスが、戒厳令的に最高議長パルパティーンに全権委任を呼びかける演説を行い、満場一致で議決された。そしてヨーダはカミーノへ、メイス・ウィンドゥ(サミュエル・L.ジャクソン)らジェダイ騎士団はジオノーシスへ。タトゥイーンで待機を命じられたアナキンも、パドメにそそのかされてオビ=ワン救出にジオノーシスへ向かう。こうして、後に「クローン戦争」と呼ばれることになる一大決戦の戦端が、惑星ジオノーシス上で開かれようとしていた……。

【REVIEW】
えーと、映画としてはダメダメ。演出なんてないに等しい、ただ詰め込まれた各種イベントが次々に繋げられてる紙芝居映画なので、呆気にとられた----ってのが第一印象。まコレは「映画」じゃなくって「スター・ウォーズ」という膨大なファンとそのアーカイヴを擁した一大ジャンルだからなぁ……。もともとSWサーガってのはそういう面が多々あるんだけど、伏線や葛藤、感情表現などの提示テクニックという点では、「エピソード1」よりひどいんではないか? そのかわり各種の派手なVFX映像の数々は、堂に入ったきらびやかさを見せてくれるので、もうどうにも気持ちのこもらないこの粗筋めいた展開については後で空想で肉付けして補うことにして(↑例は上記粗筋、でも後半1/4は内緒)、ひたすら金と情熱がかかった視覚・音響的なケレンとシャレに、爆笑したり「格好いい」と思ったりすることにしよう。あ、いい演出シーンもあるにはあるのだ。例えばパドメの護衛隊長が、彼女の相変わらずのじゃじゃ馬姫ぶりを嘆くトコ(伏線)とか、ジャンゴ・フェットとメイス・ウィンドゥの渋い一騎打ち、そしてボバがヘルメットを拾うシルエットとかとか……でもなんだかバランスが悪いのである。だから大事な部分、例えばパドメが死ぬかもしれないという直前に告白するシーン演出なんか、「筋肉番付」のサスケめいたドロイド工場でのアクションに続くと、ちっとも悲愴感がないのでエモーショナルに盛り上がれない。あるいは些細なシーンだけど、女暗殺者が実は変装(変身)で……みたいな小さなオチを、何も予備知識無しで観てもわかるように演出してないとか、大仕掛けになるはずのカミーノ隠蔽工作(公文書館から一切のデータを削除する、場末の情報屋が知っている星のことを司書や専門家など共和国主要人物に忘れさせる)ってどうやったの?とかは省略され過ぎてて、なんだかチャチな陰謀に思えてしまう。『MIB』の「ピカッ」でも使ったのか? こういうことは気にしちゃいけないのかもなぁ……。ま、ある種のライド系娯楽映像の魅力に限りなく近づいているってのが、本作の特徴だろう。観客個人の「楽しみたい度」に関わって面白さが増減する映画だと思うので、ここはDLP映像(都内では日比谷スカラ座かTジョイ大泉、あとはAMCイクスピアリ16くらいでしか観られないけど)の情報量にドップリ浸かって、映画の可能性のひとつとしての新たな試みをじっくり検討してみるのが正しい観方か? 何度も観ないと、例えばクライマックスの各ジェダイ騎士それぞれの活躍を追っかけられないので、プログラムやら特集記事など熟読して、サイドストーリーを空想する準備を整えるべきかもしれない。

僕が個人的に好きなトコを挙げると……冒頭のコルサントに降下していくクルーザー=宇宙船の飛行音が、双発のプロペラ機そっくりってシャレにまずクスクスニヤリ。あとジオノーシスの衛星軌道上でのチェイス・シーンで、2度使用される爆弾「サイズミック・チャージ」の無音→重低音で平面状に小惑星群を破砕する描写、これがカッチョイー! オビ=ワン乗機のジェダイ・スターファイターの切り離し式ハイパー・ドライヴ・リングってオプション(使い捨てじゃないってことは、近距離活動中はただひたすら御主人のお帰りを健気に待ってるんだろうなぁ……)も、一瞬だけ登場の光子帆船も、ナブー製の銀メッキ宇宙船数種も(科学考証としてはもはや意味無しになりそうな気配を感じつつ)メカ・フェチ心を刺激する。……などなどかな。ただ、どうしても観たかったのは、ジャドランド荒野で(インディアンもといネイティヴ・アメリカンかアラビア遊牧民のように)小さな集落を作っていた部族タスケン・レイダーを、アナキンが怒りにまかせて女子供含めて南京大虐殺(笑)するシーンだったんだけど……バッサリ省略されてるのでガックシ。ここはアメリカさんの歴史からしても、微に入り細に入り、昨今のハリウッド製戦争映画以上に残虐な描写をすべきではないのか? レイティングが心配ならフラッシュバックのように後半のアナキンの心象にパパッと浮かび続けるようにするとかさ。ま、クライマックスのちょい後はベトナム戦争の航空騎兵隊=空挺ヘリ戦のパロディ、しかもヨーダが『ワンス&フォーエバー』のメルギブか『地獄の黙示録』のキルゴア中佐かってな調子で指揮までしてて大爆笑、オマケに『千と千尋』の湯婆婆同様にカメハメ波を出し、さらには蠅のように飛び跳ねてのライトサーベル戦までやってくれるので、もはや苦笑混じりの喝采を叫ぶしかない。既公開の5作中の個人的順位なら、VFXアクション面では1位、本筋のワクワク度だと『帝国の逆襲』『ファントム・メナス』に継ぐ3位くらいか。

余談。何が問題なのか? 今回めんどうくさいのは、政治的な二重性をうまく描き切れてないことかもしれない。敢えて表面的な描き方にせざるを得なかったのだろうけど、マッチポンプな「インサイダー取り引き」めいた政治劇は、告発者視点にするか、深謀遠慮なカリスマの心中描写がないと、ピリリと心に滲みないのだ。各階層=陰謀主体のカリスマ人形使いとその配下、そして操られていることを知らない二つないしそれ以上の陣営ってレヴェルの違う立場が映画には存在するんだけど、それがそれぞれの立場で出来る限りのことをやっている風にキチンと見えないので、チャチな陰謀にマンマと騙されてるみたいな想いを持ってしまうのだ。これは例えば、フランスが市民革命後も、せっかくの共和制を維持できず、帝制や王制を何度か復活させてしまったという史実(それはナチス・ドイツ下でヴィシー政権が独帝国傘下に下る事態まで続く)を、今現代の視点から単純に見て「バカじゃん」って思う気持ちに似て、どうにも幼稚くさく感じちゃうってナンギさだ。ヘタをすると、アレキサンダーやキリストやナポレオンやヒトラーやスターリンやレーニンや毛沢東(英国のカリスマ女王達や明治・昭和天皇でもいいけど……現今の右派ポピュリスト台頭も含めるべきか)が登場したって現実の歴史についての、幼稚じゃない理屈を劇的に表現できるかどうかが問われてしまうので、それらへの抵抗や悲劇は(旧サヨク的に)格好良く描けても、カリスマ成立という事態をリアルに描く方は困難に見舞われるしかないのかもしれない。「何故、銀河“帝国”が成立してしまうのか?」を描く難しさに直面して、映画はどうにも皮相な部分でしか応えられないでいる。だから調子よくクーロン軍団に命令したり、クローン戦争の始まりを宣告したりするヨーダが、ひどい間抜けに見えたりするワケで……。別の部分で言えば、分離派ドゥークーがオビ=ワンに語る、アンチ共和国サイドを正当化する理屈に、せっかく「ん?」と思わせといて、そのドゥークーさえも誰かの配下でしかなく、結局、彼のアンチ共和国アジテーションが真っ赤な嘘だっていうオチにまとめて、政治をガキ向けゲーム化してしまうってのも、ちょっと酷いと思うのだ。共和国の腐敗を本気で嘆いているキャラが、本来は必要だったのではないか? あるいはその腐敗を嘆くからこその権力奪取計画なのだと、観客にはアンヴィバレンツな読みとりが可能な描写をする手もあったはずだ。ま、そういう深みを描くには、器がガキ向け過ぎたってことなのかなぁ……。突き詰めて「未完の」F・ハーバート『デューン』シリーズになっちゃうのも厄介だってことかもしれないし(ビデオで3巻にもなる『デューン』TV版は凄く良くできてるので必見、続編がどうなるかワクワク)。……と、「エピソード3」への不安と期待を込めて、アレコレ考えてしまうのだった(そういや前作のミディ・クロリアン血統問題もごまかしてるしなぁ)。

Text:梶浦秀麿

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