[ル・ブレ]Le Boulet
2002年8月31日よりみゆき座ほか全国東宝洋画系にてロードショー公開

監督:アラン・ベルベリアン、フレデリック・フォレスティア/カースタント:シネ・カスケイド/出演:クリストフ・グイロン、ブノワ・ポールブールド、ジョセ・ガルシア、ロッシ・デ・パルマ、ジャイモン・ハンスゥ他
(2002年/フランス/1時間48分/配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給/宣伝:ムービーアイ・エンタテインメント、ギャガ宣伝第2グループ)


∵公式サイト


(C)2002 Jean-Marie LEROY pour La Petite Reine
【STORY】
1995年、パリのギャング団の会合に警官隊が突入、「サツ側のイヌ」と疑われたモルテス(クリストフ・グイロン)はトルコ(ジョセ・ガルシア)の弟(実は警察への内通者はコイツだった)を撃ってしまうのだった……。サンテ刑務所に大人しく服役して7年後、出所間際のモルテスは、お調子者の看守レジオ(ブノワ・ポールブールド)に買わせた宝くじが1500万ユーロ(17億円くらい)の大当たりを獲ったことを知る。だがレジオは、奥さんのポーリーヌ(ロッシ・デ・パルマ)がその宝くじを持ったまま、家出同然の支度をして、ラリーの救護班を手伝いにアフリカへと旅立ったことを知って大焦り。モルテスの怒りを畏れて出勤しなかったため、「弟の仇」とトルコが狙っていることを報せに面会に来た相棒の手引きで脱獄。派手なカーチェイスを繰り広げて当たりくじを奪い返しにレジオの家へ。事情を知ったモルテスは、レジオと共にアフリカへ飛ぶ。珍道中の始まりだ。パリ市街でのカーチェイスで大観覧車クラッシュの洗礼を受けてモルテスを取り逃がした黒人警官ユッスール(ジャイモン・ハンスゥ)、トルコが雇った不良アフリカ人達、トルコ自身も鉄の歯を持つ手下を連れてモルテスを執拗に追う。一方モルテスとレジオの方も、アフリカ人に化けたり、ダカール・ラリーに出ちゃったり、遭難したり、盗賊に襲われたりと散々な目に遭いながら、ポーリーヌを追っかけるのだが……。

【REVIEW】
タランティーノ風のパルプ・ノワール映画チックな冒頭に、アシッド・ジャズをバックにしたオシャレなタイトル・シークエンスときて、お話はドタバタ活劇調のB級犯罪アクション珍道中コメディへと雪崩れ込んでいく……ってな、まぁおバカなエンターティンメント大作である。たわいのないギャグにトホホ笑いを連発させられながら、まあスッキリと面白がってしまった。細部にはヤないい加減さがあるにはある(モルテスの老いた相棒が残虐な殺され方をしたのに何のフォローもないとか、黒人ポリス分身ギャグの唐突さとか)。けど、まあマンガだと思って許そう。見物は大観覧車を使ったアクションシーンで、これだけ見るために劇場に行く手もアリかも。「ギャングもの」→「看守と囚人もの」→「脱獄もの」→「宝くじ大当たりトラブルもの」(いや、一ジャンルを成すくらいこの発端の映画って多いのだ)→「バディもの」→「ロードムービー」→「格闘系」→「パルプ・フィクション(同時進行ガン・アクション)」→再び「看守と囚人もの」→「忍者部隊もの」(!)→「ぎゃふんオチ」と、まあよくも欲張っていろんな娯楽映画の要素を詰め込んだモンだ。と、呆れに行くのもアリかもしんない。後半ゆるいけど、もう映画批評的な文句なんてどうでもよくなってしまうことは請け合うゾ。

監督は『カンヌ映画祭殺人事件』『パパラッチ』『シックスパック』のアラン・ベルベリアンと『ピースキーパー』のフレデリック・フォレスティアのふたり。『お気に入りの息子』『ムッシュ・カステラの恋』のセザール賞スター、ジェラール・ランヴァンと、『ありふれた事件』の知性派コメディ俳優、ブノワ・ポールブールドというデコボコ・コンビの絶妙な掛け合いを愉しむことができる。脇役もみな個性的でおかしい。ま、ヒロインが異貌の個性派スペイン女優、ロッシ・デ・パルマ(『神経衰弱ぎりぎりの女たち』『サム・サフィ』『キカ』『アタメ』など)ってのだけは、何というか……。きれいどころは一切無しって潔さには賛否のあるところかな。迫力のカーチェイスを三菱ランサーエボVIIのCMや映画『RONIN』で活躍したという最強スタントチーム、シネ・カスケイドが担当している。フランスでは昨秋2週連続1位を記録したヒット作らしい。2002年の第10回フランス映画祭横浜で上映されている。

Text:梶浦秀麿


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