[プレイボール] PLAY BALL
2002年8月3日より新宿トーアにて公開

監督:マッコイ斉藤/出演:ゴリ(ガレッジ・セール)、松岡俊介、謙吾、川田広樹(ガレッジ・セール)、手塚とおる、奥野敦士ほか
(2002年/日本/1時間45分/配給:アースライズ/宣伝:スキップ)

【STORY】
フィリピンのマニラ。サイドカーつきチャリンコで登場する男、リキ(ゴリ)。4年ほど前、東京のとある埠頭で、ヤクザの手引きで国外脱出する回想がインサートされる。どうやら日本でセックスフレンドをうっかり殺してしまい、ボロ船に密航して逃げてきたマニラで「沈没」中らしい。帰宅すると同居してるコウジ(松岡俊介)はフィリピーナのシンシアと激しい(でも「キス・ノー」)セックス中。コウジと組んで万引きや当たり屋をやって暮らしてきたリキだが、壁とキャッチボールしている少年カルロスと出会ったことで、高校球児だった過去を思い出す。部員同士で喧嘩して(たぶんビデオ撮らせたりラップしたりしたリキが悪い)出場停止となり、不完全燃焼のまま郵便局員に。何故か看護婦ルックの女とラブホにしけこんでバッグをねだられ、妹のめぐみに無心して「ウゼエ」とボコられ、腹いせにピンポン・ダッシュしてみたらヤクザにイチャモンつけられて、そこの組員になんと野球部時代の後輩(謙吾)がいて……ってな情けないのかツいてるのかよくわからない過去。で、ラブホの風呂でバイブ・プレイしてたら、うっかり看護婦女を殺しちゃったみたいで、そのヤクザの後輩を頼ってマニラに逃がしてもらったって顛末らしいと、だんだんわかってくる。シンシアの勤めるナイトクラブ「イリュージョン」でひっつかまえた偽「シャッチョ(社長)サン」の橋爪(手塚とおる)も仲間に入れて、クラブの日本人オーナーで陰で怪しいショーバイもしてるみたいなアツシさん(奥野敦士)にお金を借りて一念発起、マニラ初の痴漢電車イメクラを始めたものの大失敗。シンシアの同僚マリリンに片思いしているリキは、なんとか成功したいし、クラブで自分達を見下してるエリート日本人達を見返してやりたいし、カルロス少年に野球をやらせてやりたいし、マリリンとも一発やりたい。ってなワケでジープバスを盗んでバッファローズ・カラーに塗り替えて商売にしたりとかしてみるのだが、そんな時、ヤクザの後輩がマニラにやってきて……。

【REVIEW】
燃えて迫ってくるクレジットで始まり、ちょい渋めの回想シーンが続くので、『少林サッカー』か『デッド・オア・アライブ』のノリを思わず期待……したのだが、ぬる〜いバカ映画であった。ま、バカ映画好きにはたまらんかもしれん。今はテレ朝系で深夜に「ガレッジ・ヴァンガード」とかやってるガレッジ・セールの二人が、その昔TBS系でやってた深夜番組「すれすれガレッジセール」(「極-」「激-」と併せて「すれ」三部作とかいうらしい)のディレクターだったマッコイ斉藤と組んで、ちょい不良ノリのギャング映画、というか「いい話」のふりしたマニラの貧乏日本人コメディ映画を作ってみたよ〜んって感じ。

TVじゃできないこと=ベッド・シーン……てな安易さが頭悪そうでいい。ポルノ映画(Vシネ?)風のHシーンが3つもあるのは男性向けサービスとしても、プレスに名前も載せないフィリピーナの片方(シンシア)はガチンコ出演なのに「ブス」呼ばわり、もう一人(マリリン)はアイドル扱いでホワホワ〜ンってな感覚が業界ズレしててヤな感じ。TV「ガキの使い」に出てくる「今夜が山田」クンみたいなムリから言わせてる繰り返し片言ギャグ台詞にゲンナリし始め、「マニラ沈没もの」の味わいを求めようと気を取り直したら、どんどんチャチになってって、古過ぎなピンクレディー衣裳ギャグには怒りまで覚えてしまい、オマケに……な結末には、思わず宣伝のスキップの山田さんに八つ当たりのような「ダメ出し」までしてしまった。すまんです。ま、オイラは関西人なんで沖縄+東京系のギャグ・センスが肌に合わんかっただけかもしれへんけどなぁ(ってココだけ関西弁)。「日比混血児」役のカルロス君への、もっとこう、なんつーの、物語上の思いやり?ってのは無いのか!----とだけは怒っておこう。ピロー(枕)ショットもどきの、マニラの地元ババアの意味無しカットなんかはちょっと面白かったけどね。野球やれよな、まったく。

一応、TV『ちゅらさん』でゴーヤーマン・ブームを生んだ(?)ガレッジ・セールのゴリ主演映画だが、相方の川田広樹もチラチラとシュールな役で出演。『漂流街』『DOG STAR』『ラヴァーズ・キス』出演のアーティスト、奥野敦士が演じるクラブ・オーナーとの掛け合いが笑えるゾ。あと『突入せよ!「あさま山荘」事件』『UN LOVED』の松岡俊介がゴリのマニラ舎弟で、変な宗教にハマってるフィリピーナと最後には結婚するってな役で、パンクラスの謙吾がゴリの後輩のイカツいヤクザ役で、はたまた小劇場界の名優で『ウォーター・ボーイズ』『殺し屋1』などにも出てる手塚とおるが偽社長さん役で、とそれぞれ面白い役をこなしてる。でも脚本に一貫性がないのは「第2のテリー伊藤」(らしい)マッコイ斉藤のTVの余技みたいな取り組み方のせいなのか、どうにも勿体ないのだった(観客裏切りギャグのつもりなんだろうけどさ)。製作舞台裏の苦労話などは「反抗してる雑誌っスねぇ!」とゴリ賞賛の映画秘宝9月号P74-75を参照のこと。なんとフィリピン側の撮影スタッフはコッポラの『地獄の黙示録』にも参加してたとか、んでも「使えねー」とか最初に言っちゃって困ったとか、実はそういうメイキング・ネタの方が面白いのかも。そこらへんを本屋さんでチェックしてから観に行こう!

Text:梶浦秀麿


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