[ガーゴイル] GARGOYLE
2002年11月2日(土)より、シネアミューズほかにて全国順次ロードショー

監督:クレール・ドゥニ/脚本:クレール・ドゥニ、ジャン=ポール・ファルジョー/出演:ヴィンセント・ギャロ、トリシア・ヴェッセイ、ベアトリス・ダル、アレックス・デスカス
(2001年/フランス、日本合作映画/上映時間100分/配給:キネティック)

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【STORY】
ハネムーンでパリを訪れたシェーン=ブラウン(ヴィンセント・ギャロ)とその新妻ジューン(トリシア・ヴェッセイ)。誰の目からも幸せそのものに見えるふたり。しかしシェーンにはハネムーンのかたわら、この街で自分の病の鍵を知る昔の同僚、レオ・セムノー医師(アレックス・デスカス)とコレ(ベアトリス・ダル)を探すという隠された目的があった。彼はもはや抑え難い衝動を肉体と精神に抱えていたのだ。それは、愛の行為のさなかに、相手を死に至らしめてしまうほどに異常に高まってしまう衝動。決して自分に触れようとしない夫が何を考えているのか分からないジューンだが、彼女は夫の過去と真実を知る由もない。一方、パリの郊外の屋敷で夫に監禁されながら暮すコレは、シェーンと同じ衝動に支配され、今や末期的な症状に苦しんでいた。ようやくセムノー家を探し当てたシェーンが見たものは、血まみれの彼女の姿だった。その鮮血は彼女の欲望の果てに噛み殺された隣家の美しい青年のものだった。シェーンは全てを理解し、この世界の苦悩から解放してやるため彼女に手をかける。もしコレが未来の自分の姿だとしたら、ジューンへの愛は恐ろしい結果を生むに違いない。何も真相を知らない美しいジューンを連れ、シェーンはパリを後にするが…。


【REVIEW】
欧米の建物で、屋根や雨どいにしばしば見かける鳥のような怪物、それが「ガーゴイル」である。豊穣の神であったガーゴイルは魔物に姿を変えられ、悲しく恐ろしい目で家々を見下ろしている。カンヌで大きな反響を呼んだクレール・ドゥニ監督の『ガーゴイル』が描くのは、性的欲望の高まりから相手を噛み、死に追いやってしまうという、魔物の心を抱えた2人の男女の姿であった。自分の異常さを自覚しているヴィンセント・ギャロと精神を病み獣のように相手を噛むベアトリス・ダルの演技が観るものの目を離させない。会話のすくない物静かなストーリーと時折、血で染まっていく悲劇的シーンを観ていると不気味な時間の流れを感じてしまう。そしてパリの街並みやセーヌ川でさえも薄気味悪くみえてしまうのである。結末も衝撃的であった。一息、息を飲んでいる間にラストになってしまい、いろんな意味で余韻を残す。逃れられない愛の悲しみを究極的に表現している作品ではないだろうか。

Text:imafuku [UNZIP]

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