[カンパニー・マン] CYPHER
2003年1月18日、ニュー東宝シネマ他全国東宝洋画系にてロードショー

監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ/脚本:ブライアン・キング/出演:ジェレミー・ノーサム、ルーシー・リュー、イジェル・ベネット、ティモシー・ウェッバー、デビッド・ヒューレットほか
(2001年/アメリカ/1時間35分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ)

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平凡なサラリーマンが刺激を求め産業スパイに転身。だが知らぬ間に、彼は出口の見えない巨大な陰謀に巻き込まれていた。その迷路を抜け出す鍵は、彼の記憶の中…。

【STORY】
平凡な日々を送る会社員モーガン・サリバン(ジェレミー・ノーサム)は、刺激を求め産業スパイになる決意をする。巨大ハイテク企業・デジコープ社に合格した彼はジャック・サーズビーという偽名を与えられる。初任務は競合会社のコンベンションに潜入し、盗聴すること。任務を成功させた彼は、まるでジェームズ・ボンドに変身したかのような自分に無邪気に興奮する。一方で、強烈な頭痛と奇妙な幻影が彼を襲い始める。記憶の混濁、神経症的混乱。そんなときエキゾティックで謎めいた女性リタ(ルーシー・リュー)と出会い、彼女に強烈に惹かれる。その場では冷たくあしらわれたものの、リタはその後、たびたびモーガンの前に姿を現す。…まるで彼の行動をすべて把握しているかのように。そしてリタはモーガンに驚愕の事実を告げる。「盗聴任務はカモフラージュ。デジコープ社はあなたを洗脳し利用しようとしている」―――やがてモーガンは更なる真実に気が付きはじめる。複雑に入り組んだ巨大な陰謀の迷路。果たして出口はあるのだろうか…?

【REVIEW】
『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督5年ぶりの待望の新作。クリーンで視覚的な映像美で魅せる、SFスパイ映画だ。主人公のモーガンは妻の尻に敷かれる平凡な男。ところが、ちょっとした好奇心から産業スパイに転身する。彼が造り上げたもうひとりの自分、ジャック・サーズビーは、スコッチのシングルモルトを愛し、タバコとゴルフを嗜み、危険な任務をこなすスパイ。スリルに興奮し、なりたい自分に変身して自信を取り戻すモーガン。そして挑発的な謎の美女との出会い。…こういうのって男の人のファンタジーなんじゃないだろうか。だが、映画はただの現実逃避のファンタジーには終わらない。リタは物語の鍵を握る重要なキャラクター。モーガンのファンタジーでありながら、ファム・ファタルでもある。この映画は、アイデンティティの危機に見舞われた男が、自分自身になろうともがく物語でもあるのだ。

サスペンス映画としても単純に面白い。次から次へと、2重3重にかけられた山盛りの罠に、何が真実なんだ? と主人公と一緒になって、登場する全員を疑ってしまう。かと言って難し過ぎることもない。お決まりの展開ではないけれども、程よく頭を使えば楽しめるわかりやすさだ。

最後に、ルーシー・リューの初登場シーンではスタイルの良さにびっくり。TVシリーズの『アリー・myラブ』やキャメロン・ディアス&ドリュー・バリモアと共演した『チャーリーズ・エンジェル』でのお色気たっぷりの彼女とはまた違った、聡明でイノセントな雰囲気の彼女は、とても可愛く見えた。

Text:nakamura [UNZIP]

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