[フィアー・ドット・コム] Fear dot com
1月25日よりみゆき座他・全国東宝洋画系にて公開

監督:ウィリアム・マローン/音楽:ニコラス・パイク/主演:スティーヴン・ドーフ、ナターシャ・マケルホーン、スティーブン・レイ、ウド・キアほか
(2002年/アメリカ/1時間41分/ギャガ・ヒューマックス共同配給)

∵公式サイト

【STORY】
相次ぐ怪死事件、鍵を握るのはアクセスした人が皆その48時間後に死に至っている“フィアー・ドット・コム”と言うインターネットサイト。ログインした者は、目や鼻からの出血死、白いボールを持った“白い少女”の姿に付き纏われ不可解な死を遂げる…。

自らの殺しの現場をインターネットでライブ放送する猟奇殺人犯“ドクター”(スティーヴン・レイ)を追っていた刑事マイク(スティーブン・ドーフ)は、人が目や鼻から出血しながら死んで行く怪奇現象に遭遇する。謎のウィルスに寄る伝染病の疑いも有る為、保険省からテリー(ナターシャ・マケルホーン)が派遣され捜査に協力するが、二人の周りで次々に犠牲者が増えて行く。二人はやがて犠牲者達が皆、“フィアー・サイト”と言うインターネットサイトにアクセスしていた事を突き止める。マイクはテリーの忠告を無視して事件解決の為、一人で“フィアー・サイト”にアクセスし制限時間“48時間”の死のゲームを始めてしまう。やがて意識朦朧で発見されたマイクが“フィアー・サイト”にアクセスした事を知ったテリーも謎を解く為に同じ事をする。同時に新たなる犠牲者を拉致したドクターは虐待の模様をインターネットに流し始める。直ぐには殺さずにじわりじわりと犠牲者を死に追いやるドクター。やがてテリーはドクターの第一の犠牲者が“フィアー・サイト”と関係した事を付きとめ、白い少女の正体を知る事となる。二つの同時進行していた事件が壱つに繋がる時、“フィアー・サイト”の本当の恐怖の意味が明かされるのである…。

【REVIEW】
本作は近年ハリウッドでも注目されるジャパニーズ・ホラー映画へのハリウッドの挑戦状であるそうな。ハリウッドでリメイクされた『ザ・リング』は記憶に新しいところだが、『女優霊』('96/中田秀夫監督)『カオス』('98/中田秀夫監督)『回路』('00/黒澤清監督)『仄暗い水の底から』('01/中田秀夫監督)等は既にハリウッドがリメイク権を獲得しており、製作が進行している作品もあるそうだ。プレス資料では、清水崇監督『怨霊』『富江 re-birth』等や、鶴田法男監督『リング0』『案山子』等のコメントを掲載し、ことさら日本の怪談との共通点を強調している。確かに一昔に流行った『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』の様なスプラッター映画をアメリカ流ホラー映画とするのなら、本作は全く違ったアプローチを取っていると言えるであろう。しかし日本の怪談と言うよりは、より現代風な怖さを持つ“都市伝説”的な恐怖と言えるのでは無いだろうか。『リング』では七日間の命だったが、こちらは二日(48時間)で死に至ってしまうのでバタバタ犠牲者が増えてしまう。そして、同時進行するもう一つの事件の猟奇殺人鬼“ドクター”の存在が日本のホラーと違い、ストーリーにドラマ性を持たせて明確なテンションを与える要因になっている。『ザ・リング』では、日本人独特の怪談的恐怖がアメリカでも通用するかどうかが論争になり、エンディングを幾つか用意して検討したそうであるが、やはりそのあたりの湿感は問題であろう。(実際には『ザ・リング』はほぼ日本版と同様のエンディングで落ち着いたが…)湿感と言うのはまさに湿度の違いである。日本のホラーには押入に黴が生えるようなじっとりした湿度があるのだが、本作はやはり何処かカラッとしているように私は感じられた。…今後のジャパニーズ・ホラーのハリウッド・リメイクの行く末が気になるところである。

本作の主演男優は『ブレイド』の一作目で野望に燃えるヴァンパイアを演じたスティーブン・ドーフ。『バックビート』では5人目のビートルズを演じて話題になったが、本作では影のある役柄を好演している。『キリング・ミー・ソフトリー』で注目されたナターシャ・マケルホーン演じるテリーとの恋愛模様も見所の一つだろうか。狂気の猟奇殺人気“ドクター”ことアリスターを演じるスティーヴン・レイ、数々のホラー映画で壷を押さえた演技で観客を怖がらせるウド・キアーもアル中の作家として顔を見せている。マイクの相棒の刑事役でジェフリー・コムズも顔を出すが、彼も数々のホラー作品に顔を出す俳優である。この辺も過去のホラー映画に捧げるウィリアム・マローン監督のオマージュであろう。音楽のニコラス・パイクもホラー作品を多数手がけており、まさにホラー映画の専門スタッフが集結したと言うところか?!

ハリウッドからのジャパニーズ・ホラーへの挑戦状である本作、存分に怖がってもらいたい。ただ単に怖いだけで中身の無い作品ではなく、人間ドラマとしての余韻も有るので、あんまり細かい事は気にしないで観るのもお勧めです。

Text:harry

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