[ブラッディ・マロリー] Bloody Mallory
2003年3月1日(土)より、シブヤ・シネマ・ソサエティほかにて公開!

監督・脚本:ジュリアン・マニア/製作:オリヴィエ・デルボスク、エリック・ジュエルマン、マーク・ミッソニエ/音楽:川井憲次/出演:オリヴィア・ボナミー、ジェフ・リビエ、アドリア・コラド、ヴァレンティナ・ヴァルガス、ローラン・スピルヴォーゲル、ジュリアン・ボワスリエ他
(2002年/1時間34分/フランス/配給:ギャガ・コミュニケーションズ Kシネマグループ)

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【STORY】
結婚式の晩、愛する夫が吸血鬼である事が判明。マロリー(オリヴィア・ボナミー)は斧で一撃、夫(ジュリアン・ボワスリエ)を殺してしまう。血まみれのウェディングドレス姿で悪魔の力を身に付けた運命の女、マロリーは一生悪と戦う決心をする。

そして数年後、真っ赤な髪をトレードマークに、悪の教団と魔物を相手にカンフーと拳銃(ガン)で決死のファイトを挑む無敵の戦士に大変身を遂げたマロリーは世界を悪霊・魔物から守る〈超常現象特殊部隊〉のリーダーになっていた。メンバーにはブルーのヘア・ウィッグにボンデージルックで決めた爆発物専門家のドラッグ・クイーン“ヴェナ・カヴァ”(ジェフ・リビエ)、生物への憑依が自由自在の口のきけない超能力少女“トーキング・ティナ”。密かにマロリーの魅力に惹かれていく刑事のお目付け役を引きつれて、悪の教団“アバドン”一味の集団尼僧誘拐事件のアジトへと乗り込む。しかし、それは教団が仕掛けた罠だった! 女吸血鬼“レディー・ヴァレンタイン”(ヴァレンティナ・ヴァルガス)、何者にも変身可能な口の無い夢魔“モルフィ−ヌ”の仕掛ける罠を掻い潜り、敵の真の目的を阻止する為に結界を張り巡らせた魔界に有る地下迷宮へと潜入するマロリー達は果たして無事に生還する事ができるのか? 教団のボス、アバドンの正体とは? そして、恐るべき教団の真の目的とは…?

【REVIEW】
なんともとうとうハリウッドばかりでなくフランス映画にも日本のジャパニメーション・マンガの影響が行き渡っているのである。本作はジュリアン・マニア監督自らが明かす通り、日本へのオマージュの固まりで、なんともこそば痒い作品である。超常現象特殊部隊と言う設定から始まり、マンガばりのキャプションを付けて紹介される個性豊かな登場人物達。悪の組織の様式美はベルサイユのバラやキャプテンハーロックときた日には、フランス映画もニュー・エイジへの世代交代が始まったと言うべきか。リュック・ベッソン一派を筆頭に、“ドーベルマン”や“ジェヴォーダンの獣”等、ここ数年のフランス映画はハリウッド張りのストーリーとアクションで、一昔前の難解な人生哲学や恋愛物と言うのはすっかり影を潜めてしまった感もある。

本作はローバジェット(低予算)ながら、ゾンビにグ−ルに地下迷宮では巨大なケロベルスが走りまわったりとなかなか力の入った所を見せてくれる。しかし、なんか監督の自己満足というかちょっと空回りの部分もあってテンポが悪いのである。特に中盤辺りまでがまるでアニメの第1話で登場人物の紹介と舞台設定の説明をしている様で何ともまどろっこしい。しかし、後半、敵のアバドン教団の地下迷宮に潜入しマロリーが拿捕されて、敵の真の目的が徐々に明かされるにつれて段々とテンポが良くなって“映画”らしくなって行く。後半が良かっただけに前半の演出はいかがなものだろうかと思ってしまった。もっとストレートに撮っていれば良いのに…。

吸血鬼の夫は、血を吸った相手に殺される事により殺した相手の僕になってしまう。(つまり、自分を殺した妻マロリーの僕になってしまった) この為に要所要所でマロリーを助ける手助けをさせられるのだが、そこはかつて愛し合ったもの同士のせいか、小言を言いながらも助けてしまうのがほのぼのさせられる。地下迷宮には扉に行き先を書くだけで世界中の好きな所へと行ける“どこでもドア”があったりして、これってひょっとして“ドラエもん”?! 最後はヴェナ・カヴァの爆弾で爆死したはずのレディー・バレンタインが日本の伊豆で“サダコ”としてTVに写ってしまう辺りはもう笑うしかない…って感じですわ。まあ、殺しても死なないキャラと言うのも「パート2ってあり?」って言っているようで次回作に期待(!?)と言うところでしょうか。

特筆すべきは音楽を『甲殻機動隊』『リング』等を手がけた川井憲次が担当している事であろう。熱烈なジャパニメーション・マニアな監督自らがHPで依頼したと言う事である。インターネットを駆使したコラボレートと言うのも現代のニューエイジ世代の特徴か! 日本人の奏でるテクノ・サウンドがフランス映画を盛り上げるのだ。なにはともあれ、元ネタを知っていればそれなりに楽しめる(笑える?!)事であろう。しかし、劇場販売のパンフレットにはそこまで書いていないのかな? ちょっと古めのアニメへのオマージュは一見の価値あり…かな?

Text:harry


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