[ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲]
JAY&SILENT BOB STRIKE BACK

2003年3月8日より、渋谷シネアミューズにて公開、以後全国順次公開予定

監督・脚本:ケヴィン・スミス/出演:ジェイソン・ミューズ、ケヴィン・スミス、ベン・アフレック、マット・デイモン、クリス・ロック、シャノン・エリザベス、エリザ・ドゥシュク、アリ・ラーター、ジェニファー・スミス、ウィル・フェレル、ジョージ・カーリン、ジェイソン・リー、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、ブライアン・オハローラン、ジェフ・アンダーソン、シャノン・ドハティ、ショーン・ウィリアム・スコット、ジョーイ・ローレン・アダムス、ジョン・スチュワート、ジェームス・ヴァン・ダー・ビーク、トレイシー・モーガン、スティーブ・クメトゥコ、ジュール・アスナー、ガス・ヴァン・サント、ウェス・クレイブン、ジェイミー・ケネディ−、マーク・ブルーカス、ジェイソン・ビッグス、ジャド・ネルソン、ディードリック・ベーダ−、モリス・デイ、アラニス・モリセット他
(2001年/アメリカ/1時間44分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ、東北新社)

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【STORY】
映画オタクなら誰でも知ってる我らがジェイ(ジェイソン・ミューズ)&サイレント・ボブ(ケヴィン・スミス)が、ついに「最後の聖戦」に旅立った! なんでも二人をモデルにしたコミック『ブラントマン&クロニック』(『チェイシング・エイミー』参照)が、勝手に映画化されることになったのだ。それを知って原作者ホールデン(ベン・アフレック)を訪ねたところ、映画化権は彼の相棒バンキー(ジェイソン・リー)が独占してて、それをハリウッドに売り払ったとか。しかも見せてもらったインターネットの映画ファン・サイトでは、公開前から匿名の酷評がズラズラ…‥。二人の敵は“ハリウッド帝国”であり“ネット匿名帝国”だ!っとばかり、ニュージャージー州を飛び出て撮影を阻止し(?)にハリウッドへ向かう二人。もちろんヒッチハイクなので珍道中になるのは当然。途中でジェイが一目惚れした動物愛護活動家の女の子ジャスティス(シャノン・エリザベス)が、実はUSA版キャッツアイ(犯罪者版『チャーリーズ・エンジェル』)のメンバーだったり、彼女達に囮にされて、過激派として警察に追われたり…‥。何故か『猿の惑星』(オリジナル版)などを経由して、何とかハリウッドに辿り着いた二人。潜入したミラマックスのスタジオで、撮影中の『グッド・ウィル・ハンティング2』に乱入、またしても追われるハメになる。『アメリカン・パイ』シリーズのジェイソン・ビッグスらが自分の役をやると知って楽屋を襲撃した彼らは、入れ替わって撮影現場へ。そして、ついに彼らの「バイブル」である『スター・ウォーズ』のルークことマーク・ハミルと対決することになる(あ、最初の方でレイア姫=キャリー・フィッシャーも尼僧役で出てたっけ)…‥。はてさて、ジェイ&サイレント・ボブの運命は?

【REVIEW】
話はユルいし万人にオススメはしないけど、ケヴィン・スミス監督ファン(僕も含む)には見逃せない映画である。『クラークス』『モール・ラッツ』ほど甘酸っぱいグータラ青春ものの“熱さ”はないし、『チェイシング・エイミー』ほど真摯な“恋愛論”映画でも無いし、前作『ドグマ』ほど(やっぱり真摯な)“問題作”でもないけど、それら(&『スクリーム3』)で「名脇役」をつとめたジェイ&サイレント・ボブが、ついに主役を張ったのが本作。なので、彼らの活躍を見届けるのは「(サブカル)オタク」ないし「オタク研究者」の義務にして必須課目であることは理のトーゼン、よって該当者は劇場に殺到するように!

ま、メインのお話は『ピーウィーの大冒険』(ティム・バートン監督)を下敷きにした「おバカ・ロード・ムーヴィー」で、中身は要するにレスリー・ニールセンの『裸の銃(Naked Gun)』シリーズや『絶叫計画(Scary Movie)』シリーズ(なんと3作目の脚本をケヴィン・スミスが書くとか)なんて「映画オタクなら笑えるぞ」ってノリの、映画パロディ&お下劣ギャグ映画なのであった。もはや内輪受け宴会芸と化したカメオ出演者の乱舞ってのが見どころなんだけど、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』に感動した僕なんかは、その脚本&主役のマッド・デイモンとベン・アフレックに監督のガス・ヴァン・サントらが、明らかに自作を皮肉られている『2』を嬉々として演じてるって事態には泣き笑いじみた苦笑をするしか無いワケで…‥(いかん『KKK(北の国から)』口調になってしまった)。『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカー&レイア姫の老いた姿なんてのも、見たいような見たく無いような複雑な気分にさせるって意味で同罪なんだけど、もちろんケヴィン・スミスなりのリスペクトなので、執行猶予つきの保護観察中ってくらいで許してあげるしかないだろうなぁ(笑)。とにかくアメコミと「SNL(サタデー・ナイト・ライブ)」とハリウッド映画が好きな30代男子(監督は70年生まれだ)なら必ず「心震える(いろんな意味で)」作品にはなっているのだった。

『モール・ラッツ』『チェイシング・エイミー』『ドグマ』のベン・アフレックが、ホールデン役(名前はもちろん村上春樹新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』由来)と本人役で出演、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『ファントム』『デア・デビル』ネタでオチョクラレてたりするのがイタくておかしい。相棒のマッド・デイモンも『チェイシング・エイミー』『ドグマ』に出てたけど、その時の役(立ってるだけのエージェント助手&地上に墜ちた天使)は無かったことになって本人役で出演、やっぱり他の出演作をケナされてたりする。なので駄作だろうがなんだろうが(笑)ベン&マット出演作は全部観ておくべき、かな。映画の最初の方では過去のスミス作品のキャラが総登場。例えば『クラークス』のダンテ・ヒックス役以来、「ヒックス」一族の同じ顔のキャラ役でスミス作品全部に出てるブライアン・オハローランやランダル役のジェフ・アンダーソンが顔を見せ、『モール・ラッツ』のブロディにして『チェイシング・エイミー』のバンキーを演じたジェイソン・リー(他に『エネミー・オブ・アメリカ』『ドグマ』『あの頃ペニー・レインと』『バニラ・スカイ』『ドリーム・キャッチャー』など)もニ役で、そして『チェイシング・エイミー』のヒロイン、アリッサ役のジョーイ・ローレン・アダムス(他に『モール・ラッツ』『バッド・チューニング』『S.F.W』『ビッグ・ダディ』『ビューティフル』など)もチラリと出演、って具合。ここらへんはスミス監督作を観てないと辛いかも。

他のキャストもちょい紹介。本作のヒロイン、ジャスティス役のシャノン・エリザベス(『アメリカン・パイ』『最終絶叫計画』『アメリカン・サマー・ストーリー』など)はジェイのオタク心揺さぶる「眼鏡ッ娘」萌え要素もあるお色気担当で、立派に使命を果たしていた(?)。んで彼女の女泥棒チーム、クリッシー役のアリ・ラーター(『バーシティ・ブルース』『TATARI/タタリ』『ファイナル・デスティネーション』『キューティ・ブロンド』『ファイナル・デスティネーション2』など)、シシー役のエリザ・ドゥシュク(TV『バフィー/恋する十字架』、『ボーイズ・ライフ』『トゥルーライズ』『チアーズ!』『エントランス』『容疑者』など)、ミッシー役のジェニファー・シュバルバック(ケヴィン・スミスの奥さんで元新聞記者)って計4人での“金庫破りアクション・シーン”は意味なく豪華だったりする(笑)。あ、ジェニファーとスミス監督の娘ハーレクインは、幼児期のボブ役でカメオ出演してたりするのだった。『アメリカン・パイ』シリーズのジェイソン・リー(『恋は負けない』など)は本人役、ショーン・ウィリアム・スコット(『ファイナル・デスティネーション』『エボリューション』)は間抜けなフリント役で出てるし、TV『ビバリーヒルズ高校白書』のスキャンダル降番などで知られる(笑)シャノン・ドハティ(他にTV『大草原の小さな家』、『モール・ラッツ』『ヘザース/ベロニカの熱い日』『ノーウェア』など)が『スクリーム』の新作に出演って設定でウェス・クレイブン監督本人と共に出てくるし、白人差別する監督役のクリス・ロック(『ニュー・ジャック・シティ』『ブーメラン』『リーサル・ウエポン4』『ドグマ』『ベティ・サイズモア』『A.I.』『9デイズ』など)、ヒッチハイカー役のジョージ・カーリン(『ビルとテッドの大冒険』『ビルとテッドの地獄旅行』など)なんてのも出演。トドメに『パープル・レイン』でプリンスの対バン役で出てたモリス・デイ&ザ・タイムが登場して『ジャングル・ラヴ』で盛り上がるってな寸法だ。個人的には、後半で敵役として妙に活躍する連邦野生動物監視官ウィレンホリー役、ウィル・フェレル(『オースティン・パワーズ』『ズーランダー』など)のベタベタなネタ(特に着ぐるみ撃っちゃって、フォローなしって場面)には、温厚な僕もさすがにブーイングしたいんだけどさ…‥。ああ、そういや全編にみなぎる「ゲイ恐怖」ギャグってのも、スミス監督の芸風なんだが、妙にイタい。僕はゲイじゃないんだけど、おすぎさんとか日本の映画評論家にもゲイが多いんで、敵を増やしてる気がするなぁ(『チェイシング・エイミー』より後退してる感じなのは勿体無い)。とかネットで悪口書くと、すぐさまジェイ&サイレント・ボブが飛んでくるかも…‥匿名批評にしなきゃ、いやそれでもマズいのか?――ってのは映画を最後までみたらわかるネタであった。

Text:梶浦秀麿


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