|
||
アメリカを震撼させた10代の殺人事件を『キッズ』のラリー・クラーク監督が映画化した問題作 【REVIEW】 1993年7月14日。南フロリダでボビー・ケント殺人事件が起こった。殺人者は彼の仲間だった7人のティーン・エイジャーたち。その中には5歳からボビーの親友だったマーティも含まれていた。彼らはいじめっ子だったボビーを嫌うあまり、彼をナイフで刺殺し、川に投げ込んでワニの餌にしようとしたのだ。このニュースは全米に衝撃を与えた。その事件を、セックスやドラッグに溺れるティーンの姿を描いた『キッズ』で鮮烈な印象を与えたラリー・クラークが映画化した問題作が『BULLY』だ。 マーティとボビーは子供の頃から一緒に遊んでいた。切れ者のボビーは父親から過剰なまでに期待され、家ではいい子を振舞っている。落ちこぼれのマーティはボビーの言いなり。“親友”とは言うものの、まるで支配者と奴隷の様な歪んだ関係だった。虐待に耐え続けるマーティに訪れた転機。きっかけはガールフレンドのリサの一言だった----「ママの銃でボビーを殺しましょう」。仲間を巻き込み、どんどん現実味を帯びて行く殺人計画。マーティに芽生えた小さな殺意が、自分以外の力で実体を持ってどんどん膨らんで行く。…殺るしかなかった。 この作品には救いがないし、答えは用意されていない。観客を突き放すようなラストシーンは、強烈で受け止めるのが痛い。監督がいったい何を言いたかったのか、苛立つかもしれない。でも目を背けてはいけないと思う。これが現実なのだから。 Text:nakamura [UNZIP] Copyright © 2003 UNZIP |