[名もなきアフリカの地で] Nowhere in Africa
2003年8月9日(土)よりシネスイッチ銀座他にて公開

監督・脚本:カロリーヌ・リンク/出演:ユリアーネ・ケーラー、メラープ・ニニッゼ、レア・クルカ、カロリーネ・エケルツ他
(2001年/ドイツ/141分/配給:ギャガコミュニケーションズ)

【STORY】
レギーナには、ドイツでの記憶が断片でしかない。ホテル経営者の祖父、弁護士の父、やさしく美しい母…。家族に囲まれて過ごした暖かで幸福な生活。だがそんな幸せな生活もナチスの台頭によってもろくも崩れ去ってしまう。幼いレギーナが理由を尋ねると、母はいつもこう答えた――「私たちがユダヤ人だから」。遂にレギーナたちはドイツをはなれ、未知の国、アフリカへ渡る――。

【REVIEW】
サバンナの乾燥した大地とそこに生える草や木々。それらを食む野生の動物たち。遠くそびえる山々。厳しい自然環境の中で、そこに住む人々は掟(おきて)を守り続ける。

世界の西と東で、同じように伝統を守り、文化を受け継いでいく人々がいる。一方の文化では、絶えず進化し続けなければならない。そこでは、生活スピードは序々に上がり、その速さに追いつけない者は落ちこぼれとなる。もう一方の文化では、そのままの生活を続けていく。生活のスピードは変わらない。いったいどちらの人々がより幸せに暮らしているのだろうか。どちらの人々が生きる上でより深い哲学を持っているのだろうか。

この映画を見終わった頃には、この映画はいったいいくつの問いを投げかけているのか数えきれなかった。その問いの中からいくつか例に挙げるとすれば、結婚とは?仕事とは?家族とは?人種とは?人種差別とは?といった類の非常に身近なものであった。それらは問いはまた、単一の問いに収まらず、男にとっての仕事とは?女にとっての結婚とは?といった複合的な問いとしても投げかけられて来るのだった。


『名もなきアフリカの地で』は、1930年代ドイツ。ナチによるユダヤ人の迫害を背景にした事実を元にした映画である。ただし、この映画はそんな歴史背景の枠を飛び越えて、現代の我々にいくつもの問いを投げかけて来る。

同じ時期に上映される、『神に選ばれし無敵の男』(ヘルツォーク監督)もまた、設定は同じ1930年代ドイツ。ナチによるユダヤ人の迫害を背景にした事実を元にした映画である。2作品を見比べてみるのも一考と思われる。

Text:minako kurosawa

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