[座頭市]
2003年9月6日より、丸の内プラゼール他全国松竹・東急系にて公開

監督・脚本・編集:北野武/音楽:鈴木慶一/タップダンス指導:THE STRIPES/衣裳監修:山本耀司/出演:ビートたけし、浅野忠信、大楠道代、夏川結衣、ガダルカナル・タカ、橘大五郎、ほか
(2003年/日本/1時間55分/配給:松竹・オフィス北野)

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【STORY】
その日、三組の旅人が同じ宿場町に入った。金髪頭に朱塗りの杖を持った盲目の居合いの達人・座頭市(ビートたけし)。腕利きの浪人、服部源之助(浅野忠信)と妻おしの(夏川結衣)。親の仇を探し続ける旅芸者のおきぬ(大家由祐子)、おせい(橘大五郎)姉妹。…同じ日にこの町にやってきた訳ありの三者の運命の糸が、やがて絡み合う───。

【REVIEW】
原稿を書くのをさぼっている間に、北野武監督は本作でベネチア国際映画祭の監督賞をとってしまった。つけっぱなしのテレビから聞こえて来たワイドショーのアナウンスに、眠りながらも思ったのは「とっちゃったか…困った」ということだった。『座頭市』は、面白いのか?…この答えがずうっと出せなくて、「普通に面白いですよ」とか「エンターテインメントをやろうとしたのはわかるね(←偉そうに!)」とか「いや、ちょっと微妙な気持ち悪さがあるんだけど、うまく説明できなくて…」とか、ごまかしごまかし過ごしていたのだ。

超早のアクションシーンはなかなか格好いいし、たけしのライバル役の浅野忠信はスクリーンで映える俳優だ。もともと時代劇は大好きだし、それなりに楽しめたし、基本的にOKな筈なんだけど、どうしても「好き」とは言えない。そこで困ってしまったのだ。まして、北野監督の『BROTHER』は結構好きなタイプの映画だった(邦画は苦手なのに)。監督がイヤという訳でもない。

『座頭市』のハイ・テンションさは、『千と千尋の神隠し』を見たときに感じた“奇妙なグルーヴ感”とわたしが呼んでいる感覚にも似ている(『千と千尋の神隠し』はわりと好きだった)。テンポはいい。タップダンスを取り入れているのも多分、面白いのだろう(個人的には違和感があった)。結局、好きになれなかった、というのが正直なところだ。

だけど、ここまで“エンターテインメント”に徹した映画を作った点は評価するべきだと思うし、まだ見ていない人には自分の目で確かめて欲しいと思う。“面白い”かどうかが人それぞれである以上に、“好き嫌い”は見る人によって分かれるところだから。


Text:nakamura [UNZIP]

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