[コール] TRAPPED
2003年12月20日(土)より、丸の内プラゼール他全国松竹・東急系にて《正月》ロードショー

監督:ルイス・マンドーキ/原作/脚本:グレッグ・アイルズ「24時間」講談社文庫刊/出演:ケヴィン・ベーコン、シャーリーズ・セロン、ダコタ・ファニング、スチュアート・タウンゼント、コートニー・ラヴ他
(2002年/アメリカ/106分/ギャガ・ヒューマックス共同配給)

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【STORY】
オレゴン州ポートランド。過去に4回の営利誘拐を成功させた男ジョーが次に狙ったのは、将来を有望視される麻酔医のウィルと妻カレンの一人娘アビーだった。ウィルが出張に出かけたある日事件が起こる。ジョーはカレンを見張り、従兄弟のマーヴィンはトイレに入ったアビーを連れ出し、ジョーの妻シェリルはウィルを監視することで、5回目の誘拐を完全犯罪化させようとしていた。一時は刃向かうカレンだったが、ジョーたちが30分ごとに携帯で連絡を取り合えなければアビーは殺されると脅し、仕方なく従う。しかし、アビーには喘息の持病があって、発作が起こると死に至ることを告げるとジョーは動揺し、予想外の展開に彼等の計画は揺らぎ始めるのだった。

【REVIEW】
アメリカの犯罪件数は年々減少の傾向にあり、現在は年間約1150万件で、10年前と比べると20%ほど減少しているのだとか。犯罪のトップは窃盗・侵入盗・車両盗の盗み系で全体の約80%、次いで傷害、強盗、強姦、殺人と続く。計算すると殺人は34分毎、強姦は6分毎、強盗は1分毎、傷害は34秒毎、侵入盗は15秒毎、窃盗は4.5秒毎に起きていると言うからちと恐ろしい。さすが犯罪大国!なんて言ってしまいそうだけど、人口10万人に対する犯罪率を比べるとイギリス、フランス、ドイツのほうが高かったりするから、世の中のイメージはあてにならない。

話が遠回りになったけど、本作でネタになっている誘拐事件をみると、年間に約10万件近く発生しているらしい。らしいと言ったのは、あくまでも推定の数字であって、実際には届けられないものもあったり、離婚の多いアメリカでは親のどちらかが無理矢理自分の元へ連れ去ってしまい所在が判らなくなるケースもあるようで、はっきりとしない。多くは変質者による誘拐と売買目的の誘拐らしいが、どうやら営利目的の誘拐犯罪は少ないようだ。一般的にも営利目的の誘拐は最もリスクが高く、割に合わないらしいと言われているみたいだし。

そんな誘拐を完全犯罪として過去に4度も成功させてきたのが、本作に登場するジョー・ヒッキーと妻シェリル、従兄弟のマーヴィンの3人だ。ターゲットは幼い子供を持った3人家族。ジョー達は誘拐を開始してから30分おきに携帯で連絡を取り合い、もし連絡しなかった場合は子供を殺すと脅して両親の抵抗する気力を失わせ、24時間以内に誘拐を終了させる手口で大金を手にしてきた。誰かが言っていたけれど、営利目的の誘拐の場合、犯罪者は被害者やその家族と共にいることが一番確実で安全らしい。そういった点ではジョーたちの手口は非常に鮮やかで理に適っている。実際にその手口を使って誘拐犯が出ても、それはそれで困るけどね。とはいえ、作品を観ていると、何とも計画に穴だらけの気がするのは、主人公のカレンや誘拐されたアビーの予想外の活躍のせいなのだろう。

本作を手がけたのははルイス・マンドーキ監督。『ぼくの美しい人だから』でジェイムズ・スペイダーとスーザン・サランドンを、『男が女を愛するとき』ではアンディ・ガルシアとメグ・ライアンを、『メッセージ・イン・ア・ボトル』ではケビン・コスナーとロビン・ライト・ペンを、『エンジェル・アイズ』ではジム・カヴィーゼルとジェニファー・ロペスといった役者を起用してきた作品群からも判るようにラブストーリーをメインに撮ってきた監督である。本作ではケヴィン・ベーコン、スチュアート・タウンゼント、シャーリズ・セロンといった華のある役者をいつものように配しながらも、サスペンスという新たなジャンルに手を広げた。監督自身、この手の作品を前から探していたようである。人物の心理描写が重要となる本作では、繊細な心の動きを表現してきた監督の手腕が活かされている。

ざらっと荒れたプロローグに始まり、誘拐と反発するカレン達の駆け引きが繰り広げられる中盤、そして一気に大がかりなアクションにつながるラストというように、単純に誘拐劇を描いただけではないサスペンス・スリラーに仕上がっている。特に後半のアクションはそこだけ見れば立派なアクション映画が出来上がりそうだ。とにかく、ジョー達の手口で本当に完全犯罪が成り立つかどうかは別として、携帯でつながれた3つのシチュエーションが織りなすスリル感が十分に味わえる作品に仕上がっている。

Text:うたまる(キノキノ



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