FULL FRONTAL
今ハリウッドは、わたしたちに何を問いかけようとしているのか? メジャーへと躍進したソダーバーグが原点に立ち戻った挑発的新作。

REVIEW:
ハリウッドの大物プロデューサー、ガス(デヴィット・ドゥカヴニー)のバースデーパーティー当日、彼を取り巻く人々の24時間が華やかなビバリーヒルズを舞台に華やかにアップテンポに描かれる。『セックスと嘘とビデオテープ』で輝かしい監督人生をスタートさせ、今やスター監督となったスティーブン・ソダーバーグの最新作。

劇中劇の中の劇中劇、彼の妻の愛人は彼の同僚の恋人…物語は入れ子式に重なり合い、登場人物の人間関係は巧みにリンクする。まるでパズルか謎解きかといった風の複雑な構造が、35ミリとデジタルビデオそれぞれの映像タッチの切り返しで展開し、一瞬戸惑ってしまう。その感覚は、かつて『セックスと嘘とビデオテープ』で体験した新鮮さをどこか彷彿とさせる。

ただでさえ巧妙で目まぐるしいテクニックに面食らってしまうというのに、この目に見える複雑さはあくまでまやかしで、そのまた奥に入れ子となったさらなる深層が見え隠れしているようだ。

このところハリウッドでは、裏ネタもの、アンチハリウッドもの、そんなアイロニーな切り口の作品が影響力を持ち始めた。そしてソダーバーグもまたインディーズの原点に立返るというスタンスを大声で唱え、こんな風な映画を撮った。今彼が言いたいことは何なのか? そしてハリウッドが語ろうとしていることは? その答えのヒントをこの『フル・フロンタル』=【丸裸】という挑発的な映画の中に見つけてください。

Text:Yukiko Kodama

Other Reviewer's Comment:
ジュリア・ロバーツにオスカーを取らせた『エリン・ブロコビッチ』、そして『トラフィック』で不動の地位を築いたスティーヴン・ソダーバーグ。ジョージ・クルーニーと組んで制作会社を立ち上げ、オールスター集合のエンタテインメント性の高い『オーシャンズ11』を監督したり、と『セックスと嘘とビデオテープ』でインディペンデント映画ブームの先駆者的存在として脚光を浴びていたことなんて、忘れそうになっていた。ところが本作はまるで“いまのソダーバーグが撮った”『セックスと嘘とビデオテープ』。家庭用のビデオを自ら回して撮影したという映像の格好よさは流石である。ただ、とても頭のよい人がわざと難しくしたような物語の展開が難解過ぎて、心底楽しめなかったことが残念。

Text:nakamura [UNZIP]


Copyright © 2003 UNZIP.
『フル・フロンタル』
2003年12月20日より日比谷シャンテシネ他にて公開
(2002年/アメリカ/1時間41分/配給:東芝エンタテインメント)

CAST&CREW:
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:コールマン・ハフ
出演:デヴィット・ドゥカヴニー、ジュリア・ロバーツ、ブレア・アンダーウッド、キャサリン・キーナー、デヴィッド・ハイド・ピアース、メアリー・マコーマック、ニッキー・カット、ブラッド・ピットほか

REVIEWER:
Yukiko Kodama
nakamura [UNZIP]

EXTERNAL LINK:
『フル・フロンタル』公式サイト

DVD:
cover セックスと嘘とビデオテープ
監督:スティーヴン・ソダーバーグ

cover フル・フロンタル
監督:スティーヴン・ソダーバーグ