400万部を超えるベストセラー・ノンフィクションで話題となった『シービスケット』はアメリカ競馬史に輝く名馬シービスケットと、その活躍を支えた3人のホースマンの物語である。アカデミー賞の有力候補として挙げられてもいる本作で、草競馬のジョッキー、レッドを演じたのは『カラー・オブ・ハート』『サイダーハウス・ルール』のトビー・マグワイア。『スパイダーマン』の会見から約2年ぶりに再び来日を果たし、多くの取材陣が集まる中『シービスケット』の記者会見が行われた。
2004年1月24日(土)全国一斉ロードショー
監督: ゲイリー・ロス
原作: ローラ・ヒレンブランド
出演: トビー・マグワイア
ジェフ・ブリッジス
クリス・クーパー
エリザベス・バンクス
ゲイリー・スティーブンス
ウィリアム・H・メイシー
   
   
   
 
質問 質問 トビー・マグワイア トビー・マグワイア
 
 
質問 競走馬に乗るためのトレーニングで一番大変だったことは?
トビー・マグワイア 騎手はウエイトコントロールをしなければならないので大変でした。とにかく痩せるために、厳しい食事制限と毎日3,4時間のトレーニングをしました。またその間に殿堂入りを果たした名ジョッキーに乗馬の指導を受け、自分の家に機械で動く馬を持ち込んで、フォームや筋肉をつけるための練習もしたんです。でも、そういうことを2ヶ月半したけれど、実際に本物のサラブレットに乗ることは大変な経験で、全速力でコースを駆け抜けたら自分の足が茹ですぎたスパゲッティの様にぐにゃぐにゃになるほど疲れました。
質問 今までの人生の中で生きる希望をもらったことや、生活の支えになっているものはありますか?
トビー・マグワイア 家族や友達が僕の支えになっていると思います。僕が主人公レッドに共感出来たのは、子供の頃に親に捨てられたという悲しい経験から、少年時代は自分で生き抜いていかなければならないという境遇に置かれ、自分を守らなくてはならない守備本能が育っていくのだけれど、成長するにつれて自分のまわりの壁を壊して柔軟な人間関係を持っていかなければいけないということを学んでいきます。僕も彼と同じように学んでいて、そういうところをサポートしてくれるのが家族や友人なんです。
質問 競馬をやって儲けたことはありますか?
トビー・マグワイア 僕はロサンゼルスで少年時代を過ごしていたけれど、親が競馬が好きだったので、家族のイベントとしてみんなで近くの競馬場に行き、楽しんでいる感じでした。もちろん子供なのでお金を掛けることが出来なかったから、親が賭けてくれていました。もちろん大金を賭けていた訳じゃないから大儲けすることも無かったけど、楽しかった想い出があります。
質問 最近はプロデューサーとして作品に関わることも多いようですが?
トビー・マグワイア 僕は映画が好きですけど、映画を作ることも好きなんです。幸い僕のポジションは現場で見聞き出来るポジションにいるので、俳優としてだけではなく様々なことを学ぶ場にもなっているわけです。映画作りの一部分に関われるということは僕にとってメリットでもあり、恵まれた立場にあると思います。映画作りとは沢山のことがコラボレーションされて出来上がっていくものなので、その中に自分が入って関われることはとても嬉しいです。いちおう今までの経験から、映画作りはどういうものかという知識はだいたいつかめて来ていると思っています。
 
質問 馬との共演で難しかったことや気をつけたことはありますか?
トビー・マグワイア 馬との共演は楽しかったですね。以前、馬に乗る映画にも出演していますが、人間の俳優に比べて精神的なつながりで心を安らげてくれる相手役なので、良い共演者だと思います。
質問 シービスケット役の馬とは現場ですぐに通じ合えたんでしょうか?
トビー・マグワイア 実は10頭ぐらいシービスケット役の馬がいるんですよ。シーンによって馬を使い分けているんです。寝てる場面ではよく寝る馬を持ってくるし、食事をするシーンではよく食べる馬を映すし、小ささを表現するときには小さな馬を使うんです。また、詳しい事は判らないんですけど馬にも労働基準があるようで、1日とか1週間に走れる距離とかが決まっているので、数頭を使い分けたりしていたんです。
質問 ゴールデングローブやアカデミーなどの賞レースについて
トビー・マグワイア 賞を取るか取らないかについては、仲間内で面白がって騒ぐことがあるけれど、おおっぴらに言うようなことではないと思うし、僕はこの映画が多くの人に気に入ってもらえればそれで充分です。僕にとって賞を取るかどうかはあまり興味のないことですね。
質問 監督の魅力と監督が撮る作品の魅力はどこにあると思いますか?
トビー・マグワイア 『カラー・オブ・ハート』で監督と一緒に仕事をしましたが、彼の処女作でもあり、僕もまだ未熟で二人とも緊張していたので、今回と比べると緊張感のある現場だったと思います。今回の作品はハードワークではあったけれど、気分的には楽なハードワークでしたね。でも、もちろんスタッフ・キャストはみんな目標と情熱を持ってこの撮影にあたりました。今まで多くの監督と仕事をしてきましたが、どの監督にも言えることは彼等は疲れを知らない人たちなんです。映画を作ることに燃え、映画のためなら何事も厭わないという姿勢を持っているのが監督達です。僕も似たような姿勢を持っているのでそういう監督とは仕事がしやすいですし、 ゲイリー・ロスはそういう監督でした。
質問 実際に存在した人物を演じることにプレッシャーを感じましたか?また、役作りでリサーチしたことなどはありますか?
トビー・マグワイア レッドを知っている人にお会いしたり、レッド家に残っていたVTRを観たりしましたが、それらはあまり参考にしていません。実話ではありますけど、映画というフィクションの世界に映っているわけですから、役作りはゲイリー・ロスが書いたシナリオが元になっています。リアリティーよりもシナリオ重視で、とにかく映画なんだから…と思っていたし、本人を歪めたものだったり敬意を払わないわけではなく、彼をきちんと描こうという志があったわけですから、プレッシャーを感じることはそれほどなかったです。
質問 共演者の印象や撮影現場の雰囲気を教えてください
トビー・マグワイア ジェフとクリスと共演出来たことはとても貴重な経験でした。演技に対するアプローチも似ていたので楽しかったです。ジェフ・ブリッジズはリラックスした人で、現場にいることを楽しんでいます。アーティスティックな方で、まわりを気遣う愛情豊かな人です。クリス・クーパーは演技に対して献身的な情熱を注ぐ人です。ブルーカラー的なイメージでしょうか。そういった素晴らしい俳優達と同じ場にいるだけで学ぶことは多いです。そういう巧い人たちと演技をすると、自分まで巧く見えるので得なんですよね。たまに現場に緊張感が漂ってぴりぴりすることや、疲れていることもあったけれど、全体的には楽しい雰囲気で撮影が進みました。
質問 この映画を通じて伝えたいことは何でしょうか?
トビー・マグワイア この映画はある見方をすれば、敗者が勝者になるスポーツストーリーという取り方も出来るだろうし、悲劇を背負った人間がある日目覚めて他の人たちと関わっていくことで良い点を見出していく人間関係のドラマにもなるだろうし、父と子の関係を描いたドラマにも見えるかもしれないし、レースの場面は非常に興奮も出来るし、僕自身泣いたシーンがいくつかあります。だから観る人に感じ方は色々だと思いますが、様々な見方のできる映画だと思います。

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Text& Photograph:UTAMARU // Design:WATARU Haraguchi
 
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