全世界で5億5千万人を巻き込み、各国で興行成績の記録をうち立て、アカデミー賞をはじめとする数多くの章を受賞してきた『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの完結編がいよいよ公開となる。すでに公開されているアメリカでは『マトリックス レボリューションズ』や『ハリー・ポッターと秘密の部屋』の興行成績を塗り替え歴代一位の成績を樹立したことが記憶に新しい。その『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』のプロモーションのためピーター・ジャクソン監督、フロド役のイライジャ・ウッド、アラゴルン役のヴィゴ・モーテンセン、ピピン役のビリー・ボイド、メリー役のドミニク・モナハン、そしてゴラムとスメアゴル役のアンディ・サーキスが来日し、都内のホテルにて記者会見が行われた。
Peter Jackson
皆さん今日はお越し頂きありがとうございます。日本の観客は本当にこの映画を温かく迎えてくれるのでとても感謝しております。空港での大きな歓迎ぶりもありがたく思います。明日のプレミア上映も楽しみにしております。なにか特別なイベントになるような気がします。

Elijha Wood
今回二度目の来日ですが、皆さんが心から温かく迎えてくれるので日本が大好きです。今回は最後の完結編をひっさげてきましたので、どうぞ楽しんで下さい。

Viggo Mortensen
これが最後のプレミアとなりますので、素晴らしい場所でエンディングを迎えることはとても良いアイデアだと思います。また明日には、増上寺でのイベントも自分では思いつきもしない、良いアイデアだと思います。
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』
2004年2月14日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にて超拡大ロードショー
監督:ピーター・ジャクソン
出演:イライジャ・ウッド、ショーン・アスティンほか
(2003年/ニュージーランド・アメリカ合作/配給:日本ヘラルド映画・松竹)
Billy Boyd
こんなに大勢の人が集まってくれて本当にありがとうございます。みなさんが作品をこれだけ応援してくれていることを嬉しく思います。日本は初めてですが、すでにファンタスティックな素晴らしい時間を過ごさせてもらっています。

Dominic Monaghan
二回目の来日ですが、まず皆さんにお礼を申しあげたいと思います。皆さんが心から歓迎してくださっていますし、プレミアで各国に行きますが、日本ほどの歓迎ぶりに合うことはありません。日本の方々は本当に優しいですね。この壇上のメンバーはまた日本に戻ってきたいと思っているでしょう。最後に、寿司のご加護を!

Andy Serkis
(ゴラムの声で)皆さんこんにちは。え〜自分の声に戻しますが(笑)、日本に来られて嬉しく思います。初めての来日ですが短すぎて、やりたい事、したい事、見たいものが色々あるけれど今回は無理なのが残念です。お呼びいただき本当にありがとうございます。
Q. 完結編に於いて、待ち望んでいたファンが一番感動すると思われるところや監督が一番の見所と思うのは何処でしょうか?

Peter Jackson
見所は沢山ありますけど、とにかくようやく完結出来ました。物語や各キャラクターの話も完結すたわけです。今まで上映した2作品は3部作の中の一部だったので、それぞれに終わりがない作りになっていました。今回の『王の帰還』は1本の作品としても楽しめるし、3部作として観ると、ひとつの大きな物語になっていますので、この『王の帰還』のために前2作があったと言っても過言ではないと思います。監督としてはこの壮大な物語を終わらせる事が出来た事を嬉しく思います。そして『王の帰還』は感情的な面が一番強く出ていると思うんです。キャラクターもそうですしストーリーも感動出来る内容を持っていると思います。
Q. ゴールデン・グローブ賞をはじめとした多くの賞にノミネートされている事をどう思われますか?

Peter Jackson
ノミネートされたことだけでも大変な名誉だと思います。この映画がそれだけ受け入れられたと言うことの表れだと思いますし。でも、フィルムメーカーとしては映画を観客に楽しんでもらうことが一番の目的なので、賞はそれに値したという評価ですから名誉だとは思いますが、賞を取るために作品を作っているわけでもないですし、ノミネートされたことだけでも十分に凄いことなのでとくに勝者を決めることはないんじゃないかと私は思うんです。スポーツやレースのような勝者は、メディアやアウォードの関係者が決めることであって、フィルムメーカーとしては娯楽作品を提供するのが使命ですから、あとは見守るだけです。

Elijha Wood
僕が今の監督の言葉に付け加えることはないんですけど、僕も同感です。僕たちは賞のために映画を作っているわけではありません。ただ強いて言えば、作品が出来上がったときに、僕たちの努力が評価されるのは素晴らしいことだと思います。僕たちは長い時間をこの映画のために費やしたし、心血を注いで作っていきました。だからスタッフへの愛情や作品への愛情が評価されることは嬉しく思うし、何千人という方々がこの作品のために努力してきましたから、その努力が報われればいいなと思っています。
Q. 長い時間携わってきた本作が完成したことをどう思いますか?また撮影前と後ではなにか変わりましたか?

Viggo Mortensen
他の人たちも同じだと思いますが、これだけ人気を博した作品に出られたと言うことで 注目が集まったし、今までにないチャンスや仕事が増えたので、そういう意味では大きな影響があったと思います。自分では判っていないような変わっている部分もあるようで、身近にいる人に変わったねと言われることもありました。作品自体が友情や絆というものを扱っていることもあって、共通点の無いような人たちとも 一緒に協力してやって行けばなんでもこなせるという大きな教訓を得ました。ニュージーランドでの撮影の期間もそうですし、こうしたプレスツアーの時でも みんなと一緒に旅をしてきたんだという団結した気持ちがありますから、しばらく仕事で会えなくても、再開すれば友情がすぐに復活するような関係が出来ています。自分のエゴを捨てて大変な作業を一緒にしてきたことで、一生涯の絆がみんなと出来たと思います。

Elijha Wood
このコメントにも付け加えることは難しいんですけど、彼は素晴らしい言葉で表現してくれて、僕もまったく同感に思います。僕たちは命と時間をかけてこの映画を作りました。この映画から得た体験は一生ものの体験だと思うんです。特に映画を作っていると、その作品ごとそれぞれにユニークな体験ができ、学ぶことも多々ありますが、これほど特別な経験が出来る作品は無いと思います。そして、映画を作ってはいましたけれど、僕にとってみれば人生の重要な体験でした。その体験の課程で映画が出来てしまったと言った方が的確かもしれません。人生の4年間をこの映画と、携わっている人々に捧げました。そして本当にすばらしい絆が生まれたわけですし、こういった体験はなかなか出来ません。ニュージーに住んだ経験とか色々な想い出は、人生の中で忘れられないものとなるでしょう。映画を撮り終わったという実感はまだないんですけど、今後どんどん実感が沸くのでしょうね。とてもアメージングな体験でした。
Andy Serkis
ぼくもみんなに同感です。今まで俳優をやっていて孤独な作業というのが多かったのですが、監督の持つキャラクターもあってか、みんなで一緒に作っているという意識がとてもありました。監督は父親的な存在であり、リスクを負うことをおそれない雰囲気がセットにありました。演技は18年ほどやってきましたが、今回初めて色々な意味で、お互いの持っている技術やノウハウ、情熱などを共有することが出来ました。そういった環境作りをしてくれた監督に感謝するし、フィルムメイキングを学べたことや、絆を感じることが出来たことも感謝しています。

Dominic Monaghan
まだ撮影が終わったという実感はありません。決して、僕がこの仕事にしがみついているわけではありません。もちろんこの体験は僕の人生の中で大切なものでしたが、どうして終わったと思っていないかというと、こういった仕事の場合、財産として残るのは友人関係なんです。少なくとも、このテーブルの上にいる人たちは、僕の結婚式には出席して欲しいし、もし僕が腎臓を移植するときにはそばにいて欲しいし、最初の子供が生まれたときにもいて欲しいと思っています。映画が終わったからといって、この絆が終わることではないと思うんです。ヒューマン・コネクションは僕の財産となりました。ただ、隣にいるビリーとは縁を切りたいと思っていますけど(笑)。

Billy Boyd
今までのコメントは全て僕が言ったことにしておいてください。全て僕の意見です。ただひとつ付け足したいと思います。それはニュージーランドです。みなさんが映画をご覧になってご存じの通り、本当に素晴らしい国だったし、素晴らしい人々でした。ですから、ニュージーランドの素晴らしさを付け加えたいと思います。
Q. ホビットの良さを教えてください。

Dominic Monaghan
ホビットの悪い点を探してみると無いんですよね。つまりホビットは良いところばかりで、人間の嫌なところを取り去った生き物がホビットなんです。すごくリラックスして、友達と楽しい時間を過ごして、食べて飲んで、嫌なことをすぐに忘れてしまう、そういった人たちだと思います。監督からの指示だったのですが、ホビットは感情をそのまま表現するし、そのまま感じるんです。人間はなかなかそうはいかなくて、思っていることと表に出す感情が違うことがあります。でもホビットは嬉しかったら笑うし、悲しかったら泣くという風に、感情を正直に表現するピュアな生き物なんですね。だからこそ、この映画を観ている観客はホビットに共感出来るのだと思うし、彼等に悪いことが起きなければいいなあと心から応援してくれるのだと思います。

Elijha Wood
またもや同感としか言いようがないんですけど、ホビットはピュアで人間の良さを象徴している生き物だと思います。少なくとも、フロドの場合はホビットの良さを中盤から失いかけているので、良いホビットを3作品通して演じることはなかったですけど、ホビットらしい演技が出来た日々を懐かしく思います。僕たちがホビットを演じていた時は、彼等の良いところを学ばなければいけないと思ったし、自分たちもそういう風になろうと心がけました。撮影初日は4人のホビットがホビット庄で遊んでいるシーンだったのですが、この映画を始めるにはとても良いシーンだったと思います。僕たちが仲間として楽しく映画のスタートを切れたわけですから。
Billy Boyd
僕もホビットは親切で良い人たちだと思います。役者としてこういった役を演じることが出来たのはとても嬉しく思います。なぜなら感情表現を素直に出せたわけですから。それは我々が受ける演技の訓練とは相反するものがあって、感情を見せないような演技や裏をかくようなことをしなければならない場合が多い中で、楽しければ笑えばいいと言う演技が出来たのは新鮮な経験でした。作品ではとても良い生き物たちがとてつもない状況に置かれるわけですが、そういった状況でどうするのか、それをどう変えていくのか?ということもこの映画の面白い点だと思います。言い換えれば、戦争にかり出された青年が、その中でどのように変わっていくのかということと同じだと思います。スクリーンの上で数少ないホビットの一人をぼくが演じられたことを嬉しく思います。

Andy Serkis
スメアゴルを演じてみて、リングが象徴するような悪が人間にどのように及ぼすかということを考えさせられました。ですから、一緒に釣りをしていたディアブルがもし指輪を持ってしまったら、もしかしたらスメアゴルの人生は全く違っていて、幸せに暮らしていたかもしれません。スメアゴルはホビットの性質をあまり見せていませんが、本来持っている純粋さや素朴さはちょっと垣間見えていると思います。本来の良さは指輪の魔力によって押しつぶされてしまっているんですけど、このキャラクターを通して、もし我々人間が魔力に支配されたときに立ち向かうことが出来るのか、我々はどれだけ強いのか弱いのか、指輪の誘惑に打ち勝てるのかなど、色々と考えさせられました。
Q. 『王の帰還』ということで、最後にアラゴルンが王の座に戻るわけですが、その役を演じた気持ちはいかがでしたでしょうか。

Viggo Mortensen
玉座に就くというシークエンスはこの物語のハイライトではないし、私が王に就くことで完結する物語ではないと思うんです。最後の式典では全てのキャラクターが集まって、みんなリラックスして祝い事に参加しているけれど、最後にホビット達をフィーチャーしてみんなが彼等を敬うシーンをつけたことは、とても良かったと思います。確かにアラゴルンは王に帰還しましたが、そこで物語が終わるわけではないし、指輪を壊したからそこで物語が終わるわけではありません。そこで私が学んだのは、次のステップに行かなくてはいけないということで、そのための選択肢は全ての人間にあり、みんなと行くか一人で行くかなど選べると思うんです。例えばヴァイオリニストが素晴らしい演奏をしたからといって、次の日から練習をしなければそれ以上は伸びません。我々も仕事が終わったら、次のステップに向け、もっと努力をして色々なことをやっていかなければならないと思います。かなり勇気のある行動をするキャラクターにも欠点はありますし、そういう意味では指輪を捨てることですべてが完結するとは思いません。
出演者揃っての撮影
最後に、締めの言葉を監督にお願いいたします。

Peter Jackson
日本が最後のプレミアということで、我々の人生の中のこのショーが終わってしまうという感慨深い気持ちになっています。私にとっては重要な作品であって、私のこれからのキャリアの中で『ロード・オブ・ザ・リング』の以前、以後という感じで全て語られると思います。この映画が指標になると思うし、誇りに思っています。この映画を観客の皆さんに楽しんでもらうことが一番なんですが、我々の体験を一言でまとめるとすれば、今まで一度も仕事をしたことのない俳優が集まって、友情が芽生え、深まり、絆が出来あがって、良い映画が出来たということ、いわゆる友達として作った映画を楽しんでいただけることが我々の一番の喜びです。
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